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72話 チート野郎は戦争中も寝坊する

アキナ姫はもう少し幼かったころ、ロウセェネの大剣でエリンギをBBQしたせいで、父親に雷を落とされたそうです。それを見てリイは一番爆笑していました。

「もしもしヤマナミさん。もう起きてるかしら。そう。それで【マップ】を見てほしいのだけど……やっぱり。私たち取り囲まれているのね」


 ルナからの電話で慌ててベッドから飛び出したヤマナミは、表示された【マップ】に驚いた。

 なぜなら眼下に広がるタオユエンの街は静寂そのものだったからだ。

 なのにスマホの地図上には、コロアネデパートを取り囲む青い点。

 その数は反乱軍の大半を占める。


「ゲリラ戦ってやつデショ。無双向けを集めたのが逆に仇になったネ」


 ヤマナミがドタバタした音でウララも起きた。

 乱れたパジャマのままタオユエンの街を見下ろして状況を分析する。


「チョットスマホ貸して……ルナちゃん、ワタシ。先手打たれちゃったネ。街ごと燃やすのは、NG?果樹園も焼いちゃダメ?キャー、八方塞がり」


 その瞬間、氷の壁に衝撃。

 今日一発目のアキナの豪速球が氷にクレーターを穿つ。


「マー、大きい音。今日はヤマナミちゃんが活躍の日ってこと」

「どこまでできるのかはわかりませんが、やってみます」


 【マップ】を再び表示したヤマナミは青い点の群れを指でなぞって囲んでいく。


「【ロック】」

「敵の姿が見えないから確かめられないけど、充電は大丈夫?」

「このペースだと、もって15分」


 コロアネデパート周囲の建物や物陰に潜んでいた反乱軍は全てヤマナミのチートによって動きを封じられた。

 だが数万人を一斉に止めるのは魔力を大量に消費する。

 もしスマホの充電がゼロになってしまうと、ヤマナミは死ぬ。


「聞いた、ルナちゃん。制限時間は10分」


 その瞬間、二発目の豪速球がコロアネデパートの氷の壁に直撃。

 今度は別方向から投げられた。



「うぇーい!!ツーストライーク!!」


 満足そうにアキナがガッツポーズする。

 反乱軍側の作戦はシンプルだった。

 まず夜のうちに反乱軍を街中に潜伏させる。

 夜が明けると同時に、アキナの投球で襲撃。

 アキナの投球で氷を破壊した後、一気に数で押し通す。


「キャッホー!!どうよ!?」


 そう言ってアキナがハイタッチしたのは見上げる程大きな剣士だった。

 大きいの体格だけではない。背負っている大剣は剣と呼ぶにはあまりに大きく、先の尖った鉄板といった方が正しい。。

 そんな重量物を背負っておきながら、バンザイをするアキナに腰を曲げてハイタッチをしている。


「アキナ皇女!報告です!前線に配置していたメンバーが突如動けなくなりました!おそらくビートル人のチートによるものと思われます!!」

「なんですってぇ!?ってことは!?」

「ってことは!?……ってことは、といわれましても……」

「はぁ……次からは俺に報告しろ。何らかの拘束魔法ということだな?昨日確認したやつらにそんなチート持ちはいねえから、新顔か。下手に軍を動かすな、そのまま待機させろ」


 剣士の指示を伝えに伝令兵がまた走り去っていった。


「ねーねーロウセイネ。私は投げていいの?」

「ああいいぞ。奪三振してやれ。リイ皇女がたまげるくらいな」


 元カクラ帝国軍大将、ロウセイネ。カクラ帝国崩壊後にアキナを匿い、各地で反乱勢力を鼓舞してきた人物だ。

 これまでは姿をひそめていたが、リイ皇女がファクトリーに姿を現しそしてビートル人に連れ去られたという情報を知る。タオユエンの反乱を先導した人物の一人だ。


「三球目、振りかぶって……投げたああああああああ!!!!!!!!」


 アキナが投げた反動で大地が揺れる。ソニックブームを起こしながら氷の壁を破壊しようと突き進む石だったが、衝突音が聞こえない。


「あり?」

「止めやがった……何者だあいつ……!?」


「昨日の肉体操作ビートル人がアキナ皇女の攻撃を防いだ模様!」

「あの筋肉のガキか!」

「アキナ皇女!報告です!ビートル人が氷の壁をすり抜けてこちらを襲撃!!初めて見る顔です!!」

「なにぃ……!?」

「ロウセェネさん!もう一つ報告が!別働隊が果樹園外れの別荘に潜伏しているウララを発見。交戦になりましたが……全滅したとのことで……」



「……壁や床をすり抜けるのがお前のチートか?」

「まあそんな感じ。プライバシーだから全部は説明しないよ」


 アキヅキに連れられるがままイタミも氷の壁をすり抜けた。

 ビートルバムとファクトリーに果物を輸出するこの街で大規模攻撃は不味い。もし重要な施設を破壊して現代日本産のフルーツの生産に支障が出れば、ビートルバムに大打撃だ。

 だからアキヅキとイタミと。


「今回はメガホンを使うのだけれど、と言っても現地語だから聞いても問題ないのだけれど」


 ルナが前線に出た。

 その時、彼方からの空襲に気づいたイタミがジャンプ。

 風船みたいに膨らませさらに硬化させた右腕でアキナの石を受けとめた。

 衝撃波がアキヅキたちのところまで届く。


「かなり、痛いな」

「すごいっす先輩。僕たちはありがたく集中できる」


 反乱軍が一番潜伏しているビルに触れるアキヅキ。


「さあて、行きます。【風街ろまん】」

「「「「「「「「ぎゃあああああああああ!!!!!?????」」」」」」」」」


 アキヅキが能力を発動してビルの中から聞こえてきたのは、反乱軍の悲鳴と落下音。


「俺の能力で床を透過させた。低い階にいたやつは、なんていうか、ラッキーだよね」


 そう思って一階フロアを覗いてみたアキヅキだが、見えたのは人が山積みになっている光景だった。

 下にいる人たちは下層階にいたのだから落下した時のダメージは少なかったのだろうが、だが上から降ってきた人たちに押しつぶされて動かなくなっていた。


「これはひょっとして逆だったか。俺の読みも甘いな」

「すぅーーー……【出て来い】!!!!!!!!!!!」


 隣の高層ビルを前にルナがメガホン越しに叫ぶ。


「なんて言ったんすか?」

「出て来い。私のチートって単純で、聞いた相手は『出て来る』しかなくなる」


 つまり何を言いたいのかはアキヅキも見上げてわかった。

 目の前の高層ビル。

 窓という窓に人間が張り付いている。

 その顔には恐怖が浮かんでいるが、身体の方は外に出ようとガラスを押している。


「最短距離でってことすか。しかも洗脳でもない」

「ビルが壊れると後で手間だわ。透かしてくれるかしら」

「あいわかりました」


 たくさんの悲鳴を聞きながらアキヅキとルナは次のビルへと進む。

 ふっと視界が暗くなったので、アキヅキが氷の壁のほうに振り返ると。


「いい加減、キャッチャーも退屈だ」


 イタミが氷の塊を抱えて、アキナたちへと狙いを定めていた。



「ロウセェネ大将!我々の包囲網が崩壊していきます!ルナと新顔を、止められません!!」

「そうか……」


 部下の報告を聞いたロウセェネが頭を抱える。

 まさかここまで台無しにされるとは。


「チートの前には我々など無意味だと……?それがこの世界の……ルールだというのか……?」

「てりゃあああああああああああ!!!」


 アキナが投げる11球目。

 もう小細工無しのストレート。

 だがそれも、着弾することはなく。


「ちっくしょー。誰だよあいつぅ~!!スランプに追い込もうってのかあ!?あたしはなあ!成功するまでやるからスランプなんかないんだぜええええ??!!!」


 アキナが地団太を踏む。

 言葉は悔しそうだが、その顔には絶望なんかない。

 自分は絶対にこれから良くなる、自分は上に上がるべきだ。そう心から信じている目だった。


(そうだったな。あの根拠のない希望がカクラ家の光だった)

「って、どひゃああああああああああ!!!ロウセェネ!ロウセェネ!!頭抱えている場合じゃないよ!!」

「ああ俺も確認した。てめえら!力のねえ奴らは下がってろ!!!」


 隕石みたいデカい氷がロウセェネたちの頭上を覆っていた。


「俺はカクラ軍の大将。王家の敵をたたっ斬る者!!」

いかがでしたか。

おもしろかった・続きが気になるという方はページ下部の☆を押していただけるとありがたいです。1でも5でも嬉しいです。

私たまたま見に来ただけですねん、という方はまた気が向いた時に来てくださいな。

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