67話 リヴァイアサンの姫
リヴァイアサンの生息地は海です。だとするとミリゥは河に上って来て死なないのかと思われるでしょうが、リヴァイアサンなのでノープロブレムです。
「大陸の河って感じだな」
ハートランドから海へとつながる河はソングⅡの近くを流れる川とつながっていた。
日本の川とはまた違う、大河。
流れはゆっくり、しかしとにかく巨大。
「対岸が見えねえ」
「このヴィロンザ川がハートランドのこちらとあちらを分けるんだ。つまりこの川を渡った先は、僕たちドラゴニュートでもわからん」
「うがあ、ひっさしぶりに来たけど、ガチで遠いやん」
「世界って広いねー。カクラも大概デカかったけど」
ヘビの調理をセーレとニコとヒータンに任せて、俺とソコルルとリイは河を見学しに来た。
ソングⅡから結構遠いので、ヒータンに乗せてもらったがかなり疲れたようだ。
この大河を下って海に出てそのまま海岸に沿って航海すれば、タオユエンに辿り着けると地図は言ってるけど。
確かにこれはコンパスが要るな。見渡す限り海と森、夜になったら迷いそうだ。
「さてと。地形を確認することも大切だが、何より大切なのは所有者に会うことだ」
そう言って、またヒータンに飛んでもらう。
【全言語理解】を手にしてわかった。
世界は人間のものじゃない。
ビートルバムが世界を制覇したとはいえ、それは人間世界での話だ。
ドラゴンがビートルバムの侵略を受けずに平和に暮らしてるのもその証拠。
「ドラゴンの里からも遠いかんね、魚も食べんし、あたしもあんま絡みないから」
ある程度沖に出たところで、俺はヒータンの背中から身を乗り出す。
話の通じそうなお魚さんは水上からじゃ見えない。
「しっかり足掴んでてくれよな」
「落ちないようにな。おそらく知性のある魚が食いついてくると予測される。肉食のやつもいるから気を付けるんだな」
ソコルルとリイに足首を持ってもらいながら、俺は水面に頭をつける。
潜った俺の視界に水面下の光景が広がる。
潜ってみても、お魚さんは見えない。
どれだけ俺が大声を発せられるかが勝負だ。
言語は、とりあえずドラゴン語でいいか。
「おはよー!!!ございます!!!!!ちょっと河を渡らせていただきたいのですがああああああああ!!!!!!」
いつぞやセーレを泳いで助けたときに強化された肺が、さらに破壊と再生を繰り返す。
エラ呼吸もそのうち出来るかもしれないなんて考えていたら、足首に力がかかって水上に引き上げられた。
「水面に血が!」
「いや、リイ、大丈夫だ。ちょっと叫びすぎただけ。もう治った」
「あ、そなの」
俺が大丈夫なことに安心したリイが腕の力を緩めたので、俺の顔は再び河に沈む。
だからって水に戻すなと言いかけたところで、辺りの空気が変わった。
深い底から巨大な黒い影が上昇してきていた。
「ヒータン、上がれ!」
「ユキノ、あんた何喋ったの!!」
ソコルルの絶叫に応えてヒータンが翼を大きく振り下ろすと、俺たちは一気に上昇する。
俺もヒータンの背中に戻ろうとするが、重心の関係でなかなかスムーズにできない。
「ユキノ、早く戻って!」
「自力じゃ無理だ!引っ張って!」
「ヒータンが飛び始めてバランスが悪い、下手に引っ張ると僕たちも落ちるぞ!」
だからと言ってヒータンがゆっくり飛ぶわけにもいかない。
逆にどんどん滑り落ちて、もはや足首でぶら下がっている状態となってしまった。
「ユキノ!」
「ちょっと待て、魔力を噴射して、なんとか……」
勢いをつけようとして身体を仰け反ったら、水面が見えた。
と同時に、水面から巨大な影が飛び出してくる。
いかつい顔して大口を開けたヘビと目が合った。
目が合った瞬間、「あ、しまった」みたいな表情したように見えたが勢いが消えなくて。
ばくんっ。
食われた。
さっきまで大自然が見えていたのに、いきなり視界が閉鎖空間に変わる。
ピンクのぬめぬめした閉鎖空間。
まるでクジラに食われたオキアミの気分だ。
しかも食われた時に足首から先をかみちぎられた。
だがこれはチャンスだ。
なぜなら目の前に喉ちんこがぶら下がっているから。
「おらぁ!」
これが大蛇を一撃で沈めたメリケンサック付き右フックじゃ!
殴りつけた瞬間、ヘビの口が蠕動して吐き出された。
その勢いで思いっきり水面にたたきつけられた。
叩きつけられた衝撃で脳震盪みたいになって天地もわからなくなったが、それも一瞬。
すぐに回復して水上に顔を出して、リイを探す。
「リイ!」
「はいよ!」
リイのほうも俺の意図を察して投げてくれた。
噛みちぎられた足。
二本ともキャッチして、くっつける。
ヘビはいなくなっていた。
潜ったか。
「ヘビどこ行った……!」
「ヘビじゃないぞ!……大河の主どころか、海の王がおでましだ」
「なに?」
瞬間水面が盛り上がって、さっき見たいかつい顔が姿を現す。
「うわわわわわ……ど、どうしましょう。やっぱり人違いでした……!またあのはた迷惑なビートル人かと怒ったのが間違いでしたわ」
「なんかお前、優雅だな」
顔の割にと言いかけたのを止める。
なんせ顔はドラゴン。とげとげしいトサカが生えて口からは尖った牙。
深海みたいな青い鱗はドラゴンのよりかは凹凸が少なく滑らか。でも魚よりは荒々しい。
いかにも強いモンスターみたいな見た目をしているのに、言葉は上品できれいだ。
「な、なんかとは失礼な!私はミリゥ、リヴァイアサン・ミリゥ!海を統べるリヴァイアサン族にして王位継承者ですわ!!!!!!」
ドラゴンの里まで響いてそうなボリュームでお姫様は自己紹介した。
少なくともリイにはガオーーーとしか聞こえない咆哮。
どうやら俺のご挨拶がリヴァイアサンの姫をおびき寄せてしまったということらしい。
「リヴァイアサン・ミリゥって知ってる?」
「知ってるも何も、海の姫君だ。リヴァイアサンに逆らうことは海に嫌われるのと同義だ」
「カクラも定期的に献上品を納めてたよ。じゃないと船を沈められるからって」
「へぇ、お前ってほんとに姫様なんだな」
「た、ため口……この私に向かってため口……しかし、うっかり食べたのは私ですから強く言えません」
「あー、いや……すみません、姫君」
姫君という言葉を聞いた瞬間、ミリゥの顔がぱあっと晴れやかになる。
「そう、私は姫君!海の覇者にして世界を裏から統べるリヴァイアサン族の王位継承者!リヴァイアサン・ミリゥ!!」
全身を躍動させて自己紹介をするから河が荒れる。
溢れ出た水が降りかかって、せっかく陸地に上がった俺たちは水浸しになった。
「ああ、すみませんわ!私としたことがうっかり!せっかく出会った陸の友人たちに水を!これではすぐ帰れと言ってるのと同じ!どうか誤解なさらぬよう……!」
「いや、うん、大丈夫。ちょうど今日は風呂入るのがめんどくさいと思ってた日なんだ。それで、俺たちは今度船旅をするからご挨拶をと思って。この大河の主に挨拶するつもりが、まさか姫君がおいでになるとは思わなかった」
ソコルルとヒータンが羽を乾かし、リイは服を絞っているなか、俺はミリゥに経緯を話す。
ミリゥの反応は、
「そういうことでしたらわたくしは問題ありませんことよ。カクラの姫君とは知らない間柄ではありません。ヴィロンザの主には私から話を通しておきます。ただ1つ……」
そう言って俺に顔を近づける。俺の頭ぐらいある瞳の色は黄金。その2つが俺の顔を見据えていた。
口調知らなかったら、死ぬほど怖えな。
「あなたビートル人でしょう。チュラとはどういう関係なのかしら?正直に答えてくださらなければ、我らリヴァイアサンはソングⅡを滅ぼしますわ」
いかがでしたか。
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