66話 内政③船を作ろう
ユキノたちはこれから内政として国を整備していくんですが、ニコの負担が凄くなりそうだな。ちゃんと感謝しないともう遅いされるな。
「らんらんらららん。らららんど」
「なんか、ユキノ、はあ……はあ……」
「病み上がりとは思えない体力だねえ」
久しぶりに自分の足で歩くので心がうきうきしてスキップしてたら、セーレたちをずいぶん引き離してしまっていた。
確かに上り坂だけど、そんな疲れる程か?
「ユキノも、前来たときは、疲れてたじゃない」
「フルーツ貿易もいいけど、その前に領土内に確認しておきたいものがあってな」
「え、このお墓までソングⅡなの?」
「おう、今決めた」
ドラゴンの里から少し離れた見晴らしのいい丘の上。
日本式のお墓が2つ。
ドラゴンの領土ではないとのことだったので、ここも俺の領土にしよ。
いや、ちゃんと、あとでレッドアイズさんに確認取るけど。
さて、と。
俺はツガミとマコのお墓を改めて調べに来た。
「カジマが言ってた。アシハラは生きている。ここに眠っているのはツガミとマコだ。みなさんご存知のな」
「知らないんだよねえ」
「いったいアシハラが自分の墓を作って何がしたかったのか。それはわからないし、ツガミとマコとの関係も今もって不明だ。だが1つ確かなことがある」
「確かなこと?」
「現代日本において、墓に死体は埋まってない」
そう言って俺は、ツガミとマコの墓石を両方とも開ける。
もちろん現代日本の墓にはちゃんと骨が埋まってる。
だが、こういう場合よ。こういう場合。
ジョンコナーの母ちゃんも棺桶に銃入れていたし。
この2人がビートル人に崇められていようが恨まれていようが、どっちにしろこんな辺鄙な所に安置するわけがない。
そんな確信を起きたときに思いついたので、俺はいまこうやって墓石を動かすなんて罰当たりなことをしている。
「まさかユキノさんなりの決意表明。ビートル人を倒すんだ俺はという意志の表れですか」
「なんか、ニコっぽくないセリフだな。っていうか、ちゃんと見てみろ」
「え!?空?」
予想通り。
アシハラのほうもマコのほうも。
骨壺なんか入ってやしなかった。
「やっぱり。こういうのがパターンなんだよ」
ハートランドの入り口に死者を安眠させる墓なんかわざわざ作らねえ。
かといって空っぽなわけでもなく、きっとこの墓を暴くやつに役立つような物が保管されているはずだ。
マコのほうには古い紙切れが入ってた。
「ふーむ、地図だな」
長方形の紙に線が引かれ大陸が示されている。
その大陸の下部には見覚えのある龍の紋章と薔薇の紋章。
つまりカクラ帝国とロンド王国の北に広がる未開の地。
「ハートランドの地図」
「おお、ありがたいねえ。しっかり地形も描かれてて攻めるのに役立ちそう」
「どんなですか。うーん、これ、未完成ですよ。ハートランドの入り口しか描けてないです」
ニコが熱心に横から覗き込んでくるから、俺はもうお前のサイドポニーしか見えない。
「えーっと。ここがドラゴンの里になりますので、ソングⅡはこの辺ですね。なるほどなるほど、そこから先は人も未踏破ですからねえ」
「んで、ツガミのほうは」
ツガミのほうに入ってたのは、方位磁針だった。
といっても中世ヨーロッパ風、というかジャックスパロウが持ってそうなヨーロッパ風のかっこいいものではなく。
百均で売ってるようなシンプルなデザイン。
「なにそれ?」
「コンパス」
「コンパスかあ」
「あんた絶対わかってないなあ」
「え、コンパス知らん?」
セーレはコンパスを知らなかったし、言ってる方のリイもよくわかってなさそうだった。
少し驚いてニコのほうも見る。
方位磁針
地図持って探検するときには必須の道具。
羅針盤ともいう。
「ああ、羅針盤ですか。ここまで小型だと分かりませんでした」
「へえ」
「コンパスが持ち運べればハートランドでも迷う心配がありませんねえ。これはこれは、非常に便利」
興味津々オーラが出てきたので、ニコに手渡す。
「しかしこの2つの道具、誰が作ったんでしょうか。ツガミかアシハラかマコが作ったって、そんな賢い人たちなんですか」
「十中八九ないな。どうせその辺の高校生だろうし。この世界の技術じゃダメなのか」
「かなり難しいと思いますよ」
「だったらチートだな。どういうチートかまではわからんけど、ハートランドを探検するために作ったんだろう」
結局。
ツガミとマコの墓にあった目ぼしいものは地図とコンパスだけだった。
「ねえ、2人でばっかみてないでさー、ちょっと貸して」
リイが俺の手にあった地図を取って、セーレと覗き込む。
「ふんふん、カクラがこっちでロンドがこっちか。お、タオユエンがギリ書いてある」
「はん?」
聞き覚えのある地名が出てきたので、リイが指さすところに注目すると。
「確かに。タオユエンだな」
「しかも世界語。ビートル文字じゃない」
セーレの言う通り、マコの地図は世界語、この世界の言葉で書かれていた。だからリイも気づいた。
「ほんとですね。へー、タオユエンへは海から行った方が近いんですね」
「海路か」
「え、じゃあ船があったら便利なんだね」
セーレの発見に乗せて、「ぴゅー」とかリイが言いながらソングⅡからタオユエンまでの海路を地図上でなぞる。
それは陸上をなぞった時よりも短かった。
予想外のところとつながって思わぬ収穫があった。
――――――――
「ということで、船を作ることになった」
「きみたちは何というか、急だな」
ハートランドの森に昼飯を取りに行く道すがら、朝の経緯を聞いたソコルルは呆れたように笑う。
この前ヒータンとリイがやった役目を、今度は俺とソコルルの2人でする。
「しょうがねえだろ。我が国の国民がフルーツを生産しろって言ってんだから」
「いつの間にか国民なのか、彼女たちは」
「我が国は難民の受け入れに積極的なんだ」
それにカクラとロンドの姫をかくまうという恩を積んでおけば、後々外交に有利だろうから。
「ふっ、きみは素直じゃないな」
なんかスかしたこと言ってきたのでケツに蹴りを入れた。
「ちょっと痛いぞ。っとそれ、食える」
ソコルルが指さす方に実っていた食べれるらしい草をちぎる。
なんか、水菜に似てんな。
その思考は背後から聞こえた唸り声によって中断させられる。
「お、昼飯だ」
「まだそうと決まったわけじゃないだろう」
振り返った先にいたのは、デカいヘビだった。
現代日本じゃ法律で飼うことが禁止されるレベルの巨大さ。
全長15mくらいか。
話しかけてもキシャーとしか返してくれないので、あんまり賢くない。
「よーし、ソコルル。お前はちょっと休憩してろ。生え変わった俺の手足を、存分に使わせてもらう」
「いや、調子に乗るんじゃない!このでかさは、2人で協力して……」
ソコルルが何か言ってる気がするけど、ニコのメリケンサックに魔力を付加。
より強力に、そしてより自分の身体の一部っぽく。
ここまで繊細な魔力の調節も出来るようになった。
襲い掛かって来るヘビを最小限の動きでかわして。
死角から頭部を殴りつける。
グシャアッとメリケンサックがヘビの眉間にめり込んで、ヘビの赤い目から光が消えた。
森は、とても静かだ。
「一撃!?それに、動きが僕と闘った時とは比べ物にならないぞ!」
「いやー……えぇ……!?」
ソコルルと同じくらい俺も実は驚いていた。
「貴様、さては僕と闘った時は手加減していたのか!?なんたる屈辱……!今ここでもう一度勝負しろ!」
「いや、ちょっと待て。あんときも全力だよ!」
帰り道はソコルルをひたすら説得する羽目になった。
【ヒーリングファクター】とエリクサー、そしてセーレたちの回復魔法で、どうやら俺は一気にパワーアップしたようだ。
いかがでしたか。
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