表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/170

64話 Boyz to Men

フジオウが現在いるタブリーの街とタオユエンを比べると、タオユエンの方が倍くらい発展してます。

 意識を取り戻し、目を開ける。

 知ってる天井だ。

 ウルトラQみたいに回転もしていない。

体を起こそうとしたが、ソファに寝てたのを忘れて、バランスを崩した。


「と、ぅわっと」


 まだ若いのでとっさに手をついて床にキスするのを防いだ。


「ん?」


 手?

 床のひんやりとした温度が手のひらを通して伝わる。

 間違いない。

 俺の手だ。


「うぅん......。あ、ユキノ目が覚めたの。ずいぶん背が伸びたね」

「まだ一応成長期だからな。いや、みんなのおかげか」

「ユキノ、手足生えたの!」


 つられて起きたセーレとリイ。

 セーレは寝ぼけたこと言ってるが、リイは俺の変化に気づいた。


「セーレさんの回復魔法、すさまじいですね。チート並み」

「い、いやぁ……そんなことも、あるかもしれない」

「ほんとだ、ありがと!それに、エリクサーも」


 つま先に当たったなにかは、エリクサーの空瓶だった。

 あれはシロテンテンタケが見せた幻覚なんかじゃなかった。


「なにそれ?宝石?」

「いや、これ」


 俺はカジマがやってきたことを話した。

 それを聞いたリイはほっとして。


「よかった……よかった。カジマが来なかったら死んでたんだね」


 目に涙を浮かべているが、セーレは複雑な顔をしていた。


「カジマはいったい何の目的があってユキノのことを気にかけているのかしら」

「それがわかんねえんだよ。あいつ、肝心なこと言わねえからな。ニコってカジマにあったことある?」

「いえ、私がビートルバムに勧誘された時にはすでに脱退していたのであったことはないですが」

「ビートル人のNO.2よ」


 まじで!

 ユンクァンがビビってたから強いだろうと思ってはいたけど、そんな強かったんか。


「ま、なんにせよ。敵か味方はまだわかんねえけど、とにかく俺を死の淵から救って手足まで生やしてくれたんだ。今はそれに感謝感謝」


 それに。

 手足が生えたらやりたかったことがあったんだ。


「おっはよー!リイちゃーん!ご飯食べたあ?私と一緒に狩りいこー!」

「ユキノの心配はしなくていいのか?まあ、あいつなら死にはしないだろうが」

「おっす!ヒータン、ソコルル。じゃあ、豚狩ってきてくれないか。チャーハンにはチャーシューが要るんだ」

「うぉ、ユキノ!手足生えてる!」

「っていうか少し身長も伸びてるんじゃないか」


 驚く2人のそばを俺たちは風呂桶を抱えて通り過ぎる。

 まずは朝風呂しないと。

 それに。チャーシューの前に行かなきゃいけないところがあるんだ。



―――ビートルバム タオユエン―――

「なんか、暴動を鎮圧してる気がしないです」

「単に現地から離れてるせいだよ。私たちは私たちの仕事をしているだけヨ」

「はあ。そういうもんでしょうか」

「だってヤマナミちゃんは闘うチートじゃないで、ショ?」


 チートが後方支援タイプだからといって、ビーチチェアに寝そべりながらレモンティーを飲んでいいことにはならない気がする。

 でもパラソル越しの常夏の陽射しと森の風は、レモンティーにとても合う。

 流れで水着も着てしまった。


「ところで、ヤマナミさんのボーイフレンドはドンナ人?」

「ボ、ボボボ、ボーイフレンドじゃないです!!」


 レモンティーを片手にした女神がニヤニヤしている。

 ほんとに違うのに、この反応は真に受けてない。


「オッケー、オッケー。でもチートくらいは知ってるでショ?」

「いえ、それが。教えてくれないというか、自分でも把握してないというか」


 他のビートル人男子は自分のチートを発揮するのが楽しくて仕方ないって感じだったのに、アキヅキだけは冷静だった。

 まるで超常の力を手にするのが初めてじゃないかのような態度だった。

 そうかと思ったら塔の上から飛び降りたり、ヤマナミにとって彼は捉えどころがない

 そういえば、と、コロアネデパートにいたときに覚えた違和感が再起する。


「アラ……まだ転移したばかりだから。でもジブラルタは制圧したと聞いた。だから強いんでしょ」

「強いみたい、です。えっと今は……あれ、コロアネから動いてない」


 【マップ】に表示されたアキヅキの位置は、コロアネデパートの屋上から動いていなかった。

 その違和感とコロアネデパートでの違和感がヤマナミの中でリンクする。


(アキヅキはどうして、イタミのチートがわかったの?)



 時刻は少し遡る。

 AWLがヤマナミをウララのもとに転移させた直後。


 アキヅキは1人コロアネデパートに取り残された。


「うーん、やっぱり素人なのかな」


 アキヅキは不思議だった。

 このデパートがタオユエン統治の拠点だというのに、なぜ誰も残らなかったのだろう。


「確かにリッカの氷は分厚いけど、それにしたってタオユエンの統治者を軟禁した部屋くらい把握しとかないと」


 アキヅキはそう言いながら床を見つめる。

 

「15階か」


 そのままアキヅキは床をすり抜けて15階まで落下する。

 現代日本なら脚が全部粉砕骨折するくらいだが、なんてことないように着地。

 その場にいたタオユエンの統治者たちの度肝を抜いた。


「お、おまえ!ビートル人だな!どっから入ってきやがった!!」


 タオユエン統治者がいる部屋に降り立ったアキヅキは事態を理解した。

 正確にいうと、黒幕の存在を知った。


「なるほど。よく考えればそうだよな。100万人の暴徒が自然発生で集まるなんてレアケースすぎる。現場で暴動してる何人かのリーダーの他に、統治者側に協力者がいたっておかしくない」


 太ったいかにも肥えた政治家といったやつらが縄で縛られて転がされている。そいつらを屈強な男が監視していた。

 肥えたやつらはただ欲につられてビートルバムに協力しているいわば裏切り者だが、対するこいつらには信念を感じる。

 

 その証拠に、屈強な男はカクラの軍服を着ていた。

 もう既に存在しない国の軍服を着ている。しかも低くない位だ。ということは。


「小僧……俺たちの作戦を見抜いたことは誉めてやろう。だが俺たちは元カクラの将軍。果たしてお前ひとりで勝て……」


 将軍の言葉を最後まで聞かずに、アキヅキはそいつに手刀を突き刺した。


「んぐっ……!!おまえ……」

「俺、この世界に来てから、なんだか自分が夢を見ているような気がしてさ。夢の中で自分が夢を見てるって自覚してる時あるじゃん。そんな感じ」

「いったい……何の話だ」


 アキヅキは続ける。

 将軍は気付いた。

 自分の軍服が平民の服に変わっている。


 アキヅキの手刀が自分の体内でうごめいている。その銀色の何かに自分という存在が書き換えられている感覚があった。


「何の話だろうね。でも、すぐわかるんじゃないかな」

「あ……か……俺は……カクラの……カクラのために……」


 将軍は自分が書き換えられていく恐怖にとてつもなく怯えていたが、やがてその感情も薄れていった。

 アキヅキが手刀を抜いたころには、逆にカクラの将軍というアイデンティティが夢だったかのように感じるまでになっていた。

 今や黒幕の頭にはただ自分はタオユエンの一市民として暴動に参加すればいいのだという感覚しか残っていなかった。

 感覚ではない。まるで大きな存在が動かすシステムが私にそう仕向けているような、合理的な結論。


「出来た。自分でも驚きだな」

「ビートル人てのはロクでもない連中だ。それに協力する連中も。コロアネデパートを倒せ!」


 将軍はもはや月並みなことしか言わなくなった。

 ただのNPCだ。

 アキヅキは将軍を掴むと床を透過させて、そのまま地面まで落下させた。


「世界のプログラムが見える。俺はどうやら異邦人だ」



―――ビートルバム タブリー―――

 騒ぎとなったギルドをこっそり抜け出て、フジオウは考える。


「俺は、この世界のことを知らなすぎる」


 No.47フジオウ。この世界に転移してきて一年もたってないしその間ずっとビートルバムの宮殿に暮らしていた。

 異世界人といえば宮殿にいる召使くらいだが、彼らとは言語が通じなかった。

 今普通に喋れているのも初めて出会った商人のおっさんから言語力を奪ったからだ。


「だが、友達、仲間。いいや、そんな存在あり得ん」


 俺と対等に会話して時に反対したりお互いを称え合ったり。

 そんな存在今までいたことがなかった。

 そんなもんのほうが異世界ファンタジーだ。


 なんて闇の深いことを考えながらタブリーの街を歩いていると、ふととある看板が目に入った。


「奴隷……市場……」


 幸い、ゴーレムを倒したことで懐には余裕があった。


 フジオウは店の前を数十回往復した後、一旦隣のカフェ的な所でコーヒーを飲んで心を落ち着かせ、そして何回か入ったことあるみたいな顔して、店に足を踏み入れた。

いかがでしたか。

おもしろかった続きが気になるという方は、よろしければページ下部の☆ボタンを押していただけると嬉しいです。

たまたまふらっと来ただけって方は、また気が向いた時にふらっと来てくれたらなと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ