63話 燃える街、燃える人
ビートル人の連絡係であるヤマナミさんは喪中の友達に年賀状を送りつけたことがあるそうです。
「?火の雨……」
諸先輩方が無双ゲームのごとく人間を吹き飛ばしている中、イタミは苦戦していた。
自分のチートも無双向きとはいえ、100万人は多すぎたからだ。
イタミのチート【ジャッキーチェン】は肉体操作。
ゴム人間みたいに腕を伸ばすことも、バネ人間みたいに脚の筋肉をばね状にして跳躍することもできる。
だがいかんせん、吹き飛ばしても吹き飛ばしても人が襲い掛かって来る。
拳を巨大化させてぶんぶん振り回していたとき、夕焼けかと思って見上げたら。
空から火の矢が降り注いでいた。
「なんだこりゃあああああああ!!!!!」
「火だ、火の雨が降ってきやがった!!」
「てめえ!ウララがいやがるのか!!!!!!」
襲い掛かっていたタオユエンの暴徒たちが一転、逃げ惑う。
その中の数人がイタミに暴言を吐く。
ウララのことをカクラの兵士たちは知っていた。
「ウララは有名なのか」
「有名なんてもんじゃねえよ!!あいつが、あいつが!」
「カクラを滅ぼしたんだ!!!」
降りかかる火が家々を燃やしていく。
この世界の建物は木とレンガなのでよく燃える。
もしくは、ウララの火が特別なのか。
タオユエンの街があっという間に火に包まれて、地獄と化した。
「すさまじいな、さすがNo.10」
そう呟いて、イタミは自分の手のひらに刻まれた43の数字を見る。
そのまま拳を握りしめて、火の雨も構わずに逃げ惑う暴徒たちを追いかけた。
「「「てめえウララ!!!出てきやがれえええええええ!!!!!」」」
「あ、はい。そうです。AWLさんが伝え忘れたそうで、ほんとです。はい、一緒にいます。ど、どこにいるか……ま、街からは離れてます。あ、あ、えっと……何をよろしくゆうとくんですか?」
ケンからの電話を切って、ヤマナミは現在タオユエンにいるビートル人たちにウララがいることを一斉送信する。
あっという間にタオユエンの街が燃え盛る。
大火の中から、気のせいかタオユエンのほうから罵詈雑言が聞こえる。
「グループ送信だ。私も『やっほー』って送っとこ。あ、氷の壁ができてるヨ。リッカちゃん仕事してる。果物畑を燃やしたらいけない」
「ウララさん。街のほうから憎悪を感じるんですけど、カクラに恨まれるようなことしたんですか?」
「きゃー。えーっと何したのかなー、私。うーんっと、将軍たちを誘惑して同士討ちさせちゃったぁ。きゃー」
「えぇ……」
ヤマナミの質問にウララはやたらとキャピキャピして答える。
テンションで取り繕っても内容がヘヴィなのでヤマナミは引いてしまった。
「もー、ほんとにあの時は汚れ仕事でした。だから私カクラの街を歩けないよ」
「美人も損することあるんだ」
No.10であるウララは、カクラ帝国に侵攻して滅ぼしたサーティーンズの1人だ。No.42のヤマナミとはくぐってきた修羅場の数が違う。
美人だからってはニートラップを押しつけられたら嫌になるだろうとヤマナミは思う。
タオユエンの火は勢いを増して、ここまで熱気が届いてきそうだ。
その明るさは夕焼けと相まって、まるで一つの大きな火の玉のように見えた。
―――ハートランド ソングⅡ―――
「うーん……うーん……」
「ユキノ!しっかりして!!」
「ああ、ごめん……私のせいだ……」
天井がウルトラQのオープニングみたいにくるくる回る。
胃の中を空にしても吐き気が止まらない。
それに体が熱い。
夕食を食った後、俺は倒れた。
食器を片付けようと立ち上がった瞬間、景色がぐにゃりと歪んでそのまま床にぶっ倒れた。
ニコにソファに運ばれながら、もうろうとする意識の中で考える。
毒キノコか?
いまさら毒キノコの毒が効いてきたってのか?
だったらヤバい。
死ぬのか?
嫌だ。
このままビートル人どもに仕返ししないまま死ぬなんて。
それになにより、セーレとリイとニコが悲しんでいる。こんな悲痛な顔、ファクトリーでも見せたことなかった。
「……ッ!回復魔法、全開!!」
「セーレさん、でも、回復魔法は病気には……」
「私ならできる。やるの!!」
直後、身体の中にセーレの魔力が流れ込んでくる。
電気ショック食らったみたいに身体がビクンと跳ねたとき、自分の胴体が見えた。
色白な肌に真っ赤な斑点が浮かび上がっていた。
まるであんとき食ったキノコじゃねえか。
「どうしよう……どうしよう……」
リイの瞳が七色に点滅していた。
そうなんだ、動揺するとそうなるんだ。
「リイ……喉乾いたから、水……」
なるべく平気そうな声と顔を作ったつもりだったが、失敗に終わった。
早あっとリイの顔から血の気が引いて、震える手でコップを持ってきた。
俺も斬られた手足の断面が燃えるように痛いから、口に運ぶことが上手く出来ず。
コップを落としてしま……。
「やっぱりお前、持ってるよ」
宇宙空間みたいに宙に浮かぶ水を、カジマがコップに戻す。
セーレをちょっとどかして、ソファに腰かけた。
「よぉ……元気そうだな……」
「結論をいうと、死ぬぞ。お前の食ったシロテンテンタケは死に至る猛毒だ。お前の【ヒーリングファクター】も頑張ったがここへきて限界が来た。そりゃあんだけ食えばな」
「それだけ言いに来たのか……おくりびとしてくれんのはありがたいが……」
「そうじゃねえよ。ほれ」
カジマが差し出してきた何かを、焦点の合わない目で捉える。
「香……水……?」
「なんだ?見たことないってことはFF派じゃないのか。エリクサーだよ。超回復薬」
「くれんのか?」
「ああ、そのつもりだ。新国王に献上しようと思ってな」
「金……ねえぞ……財政赤字なんだ……」
「そんなもん要らねえよ。なんせ、お前がユンクァンをビートルバムにぶっ放したおかげでアシハラがまた帰ってった。おかげで久しぶりに座って飯が食えたよ。だからこれはお礼だ。もっともロンド姫の力なら治せそうだな。計算外」
そう言ってカジマが俺の口にエリクサーを流し込んだ。
内臓が喜んでいるのがわかる。四肢の痛みが引いた。
「じゃ、そういうことで。走るわ。あ、それと、もし生きてたらお前の血をくれよな。そのエリクサー、ほんとはアンにやられた時用のやつなんだ」
そう言い残してカジマは消えた。
「あ!!……あれ、こぼれてない」
「ありがと」
不思議そうに見つめていたコップからありがたく水をもらう。
生きてるって感じが体中に広がった。
「だいぶ、楽になった」
「よかった……」
よろめいたセーレをニコがキャッチ。
いったん回復魔法がストップする。
その瞬間、全身の痛みが復活する。
「うぅっ……!」
「ユキノ!!」
エリクサーは効くんじゃなかったのかよ。
セーレを休ませることはできず、それどころかリイとニコも回復魔法を展開。
痛みが引いたことで俺は気が緩み、そのまま意識を手放した。
いかがでしたか。
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