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61話 犬を飼う関西人と自殺する僧侶

犬かわいいよね。

―――ビートルバム タオユエン―――

「うっひゃー、すっげえ騒ぎ」


 タオユエン最大の商業施設、コロアネデパートの屋上展望台にビートル人がワープしてきた。

 その中の1人、ケンがワープするや否や欄干から身を乗り出して眼下の騒乱を楽しそうに見つめる。


「おいこれ、ほんまに100万人かあ?絶対1000万人はおるやろ」

「間違いない、ヤマナミの計測だ」

「1000万は盛りすぎよ。それに犬を下がらせなさい」


 ケンはタオユエンの光景にテンション上がっているが、AWLとルナはそうでもない。

 これからAWLがビートル人をどんどんワープさせてくるというのに、ケンとその飼い犬が邪魔で展望台が狭い。

 ケンとその飼い犬の隙間をぬってルナが展望台に立つ。

 

「犬ちゃうわ、アホ!フェンリルや!!」

「次私にアホっていってみろ、潰すぞオス犬」


 ケンがビートルバムの宮殿に召喚された時、犬と一緒だった。

 真っ白いまん丸の秋田犬だった。

ケンにはチート能力がなかった。

 一瞬みんなに失望されたが、その瞬間秋田犬のネルが光り輝き伝説の神獣フェンリルへと変貌。

 シュッとしたネルは圧倒的に強かったがケンの言うことしか聞かなかったのでケンは追放されなかった。


「あぁ~ネルゥ、ほらネル、よ~しよし。相変わらずモフモフだねえ」


 次に転移してきたリッカはネルを見るなり、抱き着いてモフモフを味わっている。

 ネルも邪険にすることなく触られるがままだった。


「おうリッカ、毎度。なんや自分が出てくるっちゅうたら大事やな」

「えぇ~ケンくん。話聞いてなかったの?今回のタオユエン大暴動はビートルバム史上最大規模なんだよぉ。だから今回は~無双向きのチートが集められたんだよ」


 ジブラルタの反乱軍の壊滅がタオユエンの反乱因子を焚きつけて、ここまでの勢力となった。

 ジブラルタとここタオユエン。ロンドの港湾都市とカクラの港湾都市であるこの2つは、陸地上では正反対に位置するものの、海を挟んだ対岸に位置する。


「ほんで俺とルナとリッカか。でも3人やとキツイやろ」

「お前はいつも人の話を聞かないな。そんなんで仕事ができるのか」


 ネルの背中にAWLがワープしてきた。

 引き連れていたのは4人。


「うぉい、人のペットに勝手に乗んな!ってなんや新人さん多いな」

「番号が上に行くほど、好き勝手するから見つけるのに苦労するよ」


 ヤマナミとイタミとアキヅキ。

 あと一人は新人ではなかった。


「すさまじい規模だな」

「すごいね、世界の端と端を一瞬で移動してる」


 イタミとアキヅキが思い思いの感想を述べているところに、ケンが叫ぶ。


「おい、ムドウ。なにしれぇっと社会科見学に混じっとんねん。どや儲かってるか」

「私の仕事は商売ではない。お金の形で気持ちをいただいているだけだ」


 ヤマナミはムドウに初めて会う。185はあろうかというユンクァンやAWLより背が高い。そして痩せていて、色白い。顔は日本人とは思えないほど彫が深くて、大きな目が印象的だった。

 身に着けているのはお坊さんが着ている、法衣?黄緑の法衣だった。

 だが何より目を引くのは、左手に持った赤い風船だった。


「ほな俺に儲けくれや。ってAWL、これで全員か?」

「ああ、8人だ。まずは指揮系統を破壊する。ヤマナミ、【マップ】を起動してくれ」


 ヤマナミが【マップ】を起動すると、今いるタオユエン周辺が表示された。

 赤く丸い点が7つ固まっている。

ネルは四角なんだ、なんてことを考えていると、AWLが覗き込んできた。


「ふむ……」


 AWLが画面を操作して広域にする。表示されたのはおびただしい数の青い点。

 コロアネデパートの周囲に100万人の暴徒がひしめいている。


「こんなもん、もはや人っちゅうか雨雲レーダーやんけ。ってか、こいつらここに近づいて来てへんか?」

「当たり前だ。このコロアネデパートの上階にタオユエンの幹部が暮らしてる。それに、俺もフマもワープしてくるときはここだ」


 気が付いたら、ムドウもヤマナミの後ろに立ってヤマナミのスマホを覗き込んでいた。

 スゴイ圧を感じる。

 両方とも背が高いし、ムドウさんからは何か霊的な圧を感じる。


「やはりカクラの残党が主導しているか。そうだな、誰がいいと思う?」

「……今日の私は北北東が吉だ」


 北北東に少し【マップ】をずらすと、濃くて大きい青が1つあった。

 つまり、強い敵ということだ。


「ならこいつにしよう。まずはこいつらの指揮系統を破壊する。一つ壊せば十分だ。行ってくる、データだけ送ってくれ」


 ヤマナミがAWLのスマホにデータを転送した時には、すでにAWLはワープしていた。


「よう働くなあ。ってことは後が怖いな……」


 ケンが言い終わる前に、AWLは帰ってきた。

 その手に握られていたのは、髪の毛?


「該当者は元カクラのS級冒険者ソウセツだ。最近鳴りを潜めているかと思ったら、地下で力を蓄えていたらしい」

「だが、不運だった」


 AWLからソウセツの髪の毛を渡されると、ムドウはそれを赤い風船に括りつけた。


「【9(ノインウント)9(ノインツィッヒ) Luftballons】」


 長身僧侶がチート名を呟くと、風船に顔が浮かんできた。

 ヤマナミもイタミも、もちろんアキヅキだって初めて見る。


 すると、ムドウが指を銃の形にして自分のこめかみに突き付けた。


「「えっ?」」


 新人たちが唖然とする中、ムドウの指先にはどんどん魔力が集積していく。


 バン!


 ちゃんとした発砲音が響いたのと、ムドウが倒れたのが同時。

 え、どういうこと、自殺?

 そんな戸惑いがヤマナミとイタミとアキヅキの間に流れる。


「うわぁ、いつ見ても慣れないなあ」

「リッカさん、あの人どういうことなんですか?」

「そんな心配しなくてもいいよお、ほら、【マップ】出して~」


 リッカさんに言われるがまま、【マップ】を確認すると、


「あれ!?コウセツが消えてる……?」

「【99 Luftballons】。即死ダメージを他人に肩代わりさせる」

「ひゃぁっ!」


 いつの間にか立ち上がったムドウが自分のそばに来て、自分の能力について解説をしてくれた。

超びっくりして思わず声を上げたヤマナミ。


 遠くのほうで、暴徒たちのどよめきが聞こえる。

 おそらく突然自分たちのリーダーが頭を撃ち抜かれて死んだので、パニックに陥ってるのだろう。


「ははははは、おい、ムドウ自分怖がられてんで。でもな、こいつが能力説明するってことはお前少なくとも嫌われてへんわ」

「ふむ、青い点が無軌道になってきたな。ならば後は任せた。俺とムドウの勤めは終わった」


 

 そう言ってAWLとムドウは消えた。

 次の瞬間、コロアネデパートの周囲に巨大な氷の壁がそびえたった。


「まあムドウの能力は一日一回やでな。しっかし、AWLはほんま決められた仕事しかせん……っておい、さむっ!!」

「はいよぉ、これで暴徒たちは近づけないよ。それに、飛び降りてネルちゃんが足怪我したら大変だもんねえ。ああ~モフモフ」

「うぇい、ありがとさん。ほな、新人さんら自分の身は自分で守りつつ、数字上げてってっか。あ、そや。ルナの近くには近づかん方がええで」

「大丈夫よ。カクラ語で叫ぶつもりだから、でも一応、はい」


 そういってルナがヤマナミたちに渡したのは、耳栓。


「私も気を付けるけど、【ソニョシデ】を発動してる時は離れるのが一番よ」


 ヤマナミは思った。

 この人たちは、私たち6人が100万人に勝つことを微塵も疑っていない。

 

 ……え?

 AWLとムドウさんがいなくなって6人?

 人数が合わない。

 もう一人いる?

いかがでしたか。

おもしろかった、続きが気になるという方はページ下部の評価ボタンを押していただけるとありがたいです。会員登録する必要があるのがネックですが。

ふらっと読みに来たよって人は、また来てくださいね。

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