57話 内政① 家を作ろう
家は間取りより立地よ。
「魔力って目に見えないから、想像で補うの。自分の魔力がこう流れて対象にこう作用してっていうのを、頭の中に隅から隅まで描く」
「……俺の魔力はフォークリフトだ。目の前の材木を持ち上げて、あっちまで運ぶことができる」
自分の魔力が二又のフォークになって、積みあがった材木を持ち上げるイメージを頭に描く。
見える範囲の材木は浮き上がったが、陰に隠れた木がぼろぼろとこぼれ落ちてしまった。
「ヨシ!」
「何がヨシなのよ!運ぶだけなんだから、具体的な乗り物じゃなくて何となく手のイメージでよかったのに」
セーレが散らかった材木に手をかざす。
すると材木が散らかったまま持ち上がる。
セーレが手を指揮者のように動かすと、空中に浮かんだ材木がジェンガみたいに整然と並ぶ。
「はい、どうぞ」
「あ、ありがとうございます。そこ置いといてください」
現場監督であるニコの指示に従い、セーレはお風呂の材料を所定の位置に置く。
「腕の代わりに使おうと思ったが、魔法むずいな」
そういって前腕まで回復してきた左腕を見る。
【ヒーリングファクター】は、俺の意志である程度制御できるらしい。利き手である左を早く生やしたいと念じていたら、左腕の方が回復が早い。
「温泉に入ればきっと回復するわよ」
「リウマチとかによく効くよね」
あの後。
レッドドラゴンさんに正式にソングⅡの建国を承認してもらった。
申請書の類なんて一切なく、代わりにレッドドラゴンさんの鱗を一枚貰った。
それがドラゴンとのつながりの証明になるんだそうだ。
「じゃあこれ、玄関に貼る感じで」
「はい。図面に書いといてください」
セーレの置いた材木を抱えて、ニコがそばを通って来てそう言った。
人が寝れるくらいに太い木をフランクに肩に担ぎ上げていた。
「おぉ!相変わらず、その、強い女性っていうか」
「別に、力強いねって言っていいですよ」
力強いね。
「はい、ではセーレさん。この図のとおりに鎖を張り巡らせてください」
「はーい。えーっと、結構複雑ね」
材木もこっちに四角、あっちに三角。レンガが並べてあったりして、いったい何が建つのかわからない。
完成図はニコの頭の中にしかない。
「できたわ」
「では、せーので魔力を流しましょう」
「「せーのっ!」」
イルミネーションみたいな、宇宙人へのメッセージみたいな幾何学模様の光が瞬いた後。
目の前に家が出現していた。
「ただいまー。お、だいぶ進んだねえ」
リイとヒータンが帰ってきた。
「お疲れ。おー、すげー収穫」
今日の昼飯を獲得すべく森に入っていたリイとヒータン組。
ヒータンの背中には角の生えた鹿っぽい生き物が載せられていた。
「いやー、リイちゃんが睨んだらみんな動かなくなるんだもん、楽勝だったよ!!」
ヒータンがテンションを上げて狩りの様子を説明してくれる。
魔眼えげつないな。
「楽勝過ぎて普段は使わないんだよね、家族で狩り勝負するときも禁止って言われたし。ってか、すごい家ですな」
ヒータンの鹿と自分が背負ってきた木の実を下ろしながら、ニコの建築を称賛するリイ。
「はい、青りんご」
「わーい、ありがとうございます」
そのまま荷物から果物を取り出して、ニコに渡す。
「む、待たせてしまったかな。すまない」
「別に待ってないが」
「待ってろよ!」
だが、ナイスタイミングでソコルルが帰ってきた。
「それで、どうだった?」
「ああ、ドラゴンの魔力まで加わっているんだ、すぐ溶けたりはしないさ。それでレッドアイズさんにも伝えてきた。ソングⅡの敷地内に移動させるってな」
と、そのとき俺たちの背後から影が落ちてきた。
振り返ると、二足歩行のドラゴンがこちらに長い首をもたげていた。
レッドアイズさんとは異なり、その身体は純白だった。
手には、ジャコメッティもとい凍結されたユンクァンが握られている。
「すまないな。ビートルバムとの面倒ごとを押しつけるかたちになってしまって」
「いいってことよ」
「あー、ルーツさん。来てくれたんだ!里のみんなによろしく言っといてね」
ゴジラみたいないかつい顔したドラゴンことルーツさんは短い謝罪を口にして、ユンクァンを家から少し離れたところに置き、帰って行った。
ユンクァンは天に手を伸ばした状態で凍っている。その姿は地獄から脱出しようとしているようで、見ていると息が詰まる。
早く捨てよう、このオブジェ。なんか運気が下がりそうだ。
「お昼からはいよいよ温泉を作りますよ。細かいリクエストがあればどうぞ」
リンゴを食べながら、ニコが家の中の案内をしてくれた。
入り口がどうしてこんなに大きいのかと思ったら、ヒータンも中に入れるようにということだった。
「といっても、ヒータンはここまでしか来れません。一緒にご飯を食べる時は一度、外から回ってキッチンに来てください」
「りょ!お気遣いありがとう!」
ニコとヒータンの言葉を通訳して伝える。
ヒータンが入って来れるよう入口と玄関が大きい以外は、普通の洋館だ。
いや、俺普通の洋館知らねえけど。
生まれ育ったの日本の郊外のニュータウンだし。
でも、2階に個人の部屋が並んでて、一階に風呂とか倉庫とかキッチンがあって、階段が、家の真ん中にデーンと置いてあるのって、イメージの洋館の典型じゃないかな。
まだ家具や内装はないから、すごく広く感じる。
それでも、このいかにもナーロッパ的な雰囲気の家に入って、俺は改めて異世界に転移してきたって実感がわいた。
2階の各自の部屋を決める。
「ニコちゃん、2階は部屋4つしかないよ?」
「セーレ、それはもしかして僕の部屋がないという意味か?僕はドラゴニュートの里に家があるぞ」
「あ、そっか」
「ということで、ソコルルさんは一階の応接間で過ごしてください」
さて。
「はて、ぶん投げるといってもな」
このジャコメッティ、どうしたものか。
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