表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/170

52話 欠損

「オラァ!オラァ!!」


 ジャブ、ストレート、フック、ストレート。

 メリケンサックを両手に嵌めて、ユンクァンの顔面にコンボを撃ちこむ。

 

 どれだけ殴ろうとそもそもノーダメージ。

 ていうかそもそも、顔が遠くて浅くしか入らねえ。

 このクソノッポ。


 だったら下を狙うまでだ。

 俺はユンクァンの股間に思い切り蹴りを放つ。


「いってぇ!!」

「金属を蹴ったんだ。当然だろう」


 脛を押さえてぴょんぴょん飛び跳ねる俺に、顔が歪んだままのユンクァンが冷たい言葉を投げる。

 金属だけにな!


「いや、金だけにか?あ、金って言うのは玉のことであって、お前の名字じゃないぞ」

「お前もう喋るな」


 顔を上げた瞬間、目の前に銀色の拳骨があった。

 腕を液体金属にして射程距離を伸ばす。

 拳の速さで鉄が飛んできたと思ってくれ。


「なるほどね……距離を取っても殴られるってわけか」

 

 曲がった鼻が治るのを感じながら考える。

 対人格闘でこいつに勝てるやつなんているのか。


「直接手を下した人数なら、俺が一番じゃないか」

「あん?」

「ラクにしろ、ヒャクイチにしろ、派手な攻撃をするチートだろう。カクラ人やロンド人を直接手で屠ったのは俺か、そうだな、カジマくらいじゃないか」


 まるでゲームのスコアみたいに自分が殺した人数の多さを話す。

 グロンギかお前は。


「つまんねえ話してんじゃねえよ」


 急に長文喋り出したと思ったら、気分の悪い自慢話か。


「お前にとっても役に立つ情報だ」

「どこがだよ。まさか、ビートルバムの井戸にロンド人が毒を入れたとでもいうんじゃないだろうな」

「遠からずだ」

「……なんだと?」

「とどのつまり、異世界であろうと完全な悪役などいない」


 ちょっと待てよ。つまんなくねえじゃねえか。


「そんなことよりお前の処分の仕方だが。首を刎ねるつもりだったが、止めて、顎も捨てていくことにした。袋の中でペラペラしゃべられるのは耳障りだ」


 ユンクァンの指一本一本が刃に代わる。

 指みたいに細かく動くナイフが10本。

 悪夢みたいだ。


「ハット被ってボーダー着たほうがいいんじゃねえの」


 メリケンサックを握る手に力が入る。


 そんなことより、ですますな。

 悪役がいないって。

 そりゃあそうか。自国の都合だけで日本の高校生を召喚したんだ。

 ロンドが逆に食いつぶされたのも当然の報いっちゃ当然。


「だけど、大義名分がないと。争いの連鎖が止まらない。みんな自分のために戦い続けるぞ」

「そうだな。お前も既に、その参加者だ」


 レッドアイズさんが言ってたな。

 どちらの主張も正しいから、勝った方が正義だって。


「不思議な態度だ。お前、自分の死を少しも気にかけてない」

「だって死なねーもん」


 俺の顎を掴もうとしてきたユンクァンの手のひらをメリケンサックで迎撃する。

 金属と金属がぶつかって、東大阪みたいな音が里中に響いた。


 メリケンサックが欠けちまった。


「ニコ合金より強いとき……」


 俺の感想を無視して、ユンクァンの左フックが襲い掛かる。

 もちろん、その手もエルム街で。

 右耳を掴まれて。


「一発撃ってしまいなんぞ、プライドでもなかったろ」

「残念。お前が転移した後、ライジンに改名したんだよ」


 俺のマウンティングをユンクァンは鼻で笑って、そのまま右耳を引きちぎった。

 自由になったからとりあえず距離を取る。

 

「……キーーーーーーンとしか聞こえねえ」


 右耳から噴き出した血はもう止まっているが、一向に耳が回復しない。

 いつもだったら速攻で回復して感覚が復活するんだが。

なんでだ。

 

 目の前でユンクァンが引きちぎった俺の耳を握りつぶすのが見えた。

 いや、あれは。

 刻みつぶす?


「切り落とした指がすぐくっついたとラクから聞いた」

「だったら引きちぎった耳も渡してほしかったんだが」

 

 ユンクァンは手のひらの上の細切れの肉片を投げ捨てる。

 俺の右耳は、あわれハートランドの風になった。


「欠損した部位をお前の【ヒーリングファクター】は治せるかな」

「俺も気になってたとこだ。経過をスケッチしてくんない?」


 

―――ハートランド 上空―――

「す、すまない。魔力を伝達するなんて便利な鎖だな」

「有線LANとかなんとかってユキノから呼ばれてる」


 ユンクァンに足を貫かれ上空に避難したソコルルは、自分に向かって鎖が飛んできているのに気がついた。

 見ると、ユキノの友だちの1人が放った魔法だった。

 鎖は傷ついた足に巻きついて、回復魔法を発動。

 一瞬にして足の傷が治った。

 

「くっそ、隙をつかれた。ユキノ一人にセブンは荷が重すぎる」

「重すぎて結構ピンチだよ」


上空から、ニコとヒータンが固唾をのんでいる。

 無表情がデフォのニコはあいかわらず表情に変化はなかったが、ヒータンの背びれを握りしめていた。

 ヒータンが心配そうに唸る。


「ヒーちゃんわかるかなー、ユッキーは特異体質でね。あれくらいじゃ死なないけど」

「死んだほうがマシになりかねないですよ。早く動きましょう」

「そうね。ソコルルにも協力してもらって」


 突然自分の名前が出てきて困惑するソコルル。

 いったい自分が何の計画に参加させられるのか。


「……何の話かな」

「結構大役だよ。ニコさんのサポートをしてもらう」


 回復代だからね、とリイは笑った。


 

―――ハートランド 砂上―――

「話が、話が違うぜ……チートってのはあれば無敵でアホみたいな顔してハーレムライフが送れるって聞いてたんだが」


 グーしか出せなくなった自分の右手を見る。

 指を全部切り落とされたせいで大流血だ。

 真っ赤すぎてマッカーサーになる。


「チート持ちなんざ、いくらでもいる」

「お前らが召喚したんでしょうが」

「能力に胡坐をかいてたら原住民にさえ敗北する。お前の右手のようにな」

「残念、左手がまだある」


 はっきり白状しよう。

 かなりの強がりを言った。

 だって、若手ヤクザ相手に片手だぞ。

 しかも全身ドスのノッポヤクザ。


「魔力障壁、全開!」

「薄いっ!」


 渾身の魔力を込めて展開した魔力障壁だったが、ユンクァンの素手で突破されてしまう。

 

 素手!?

 いや、手の周りに魔力を込めてる。

 それが見えただけでも、進歩といえばしん……。


 俺の魔力障壁を掴んで破り捨てるユンクァンに俺の思考は中断される。

 ユンクァンの鉄拳が俺の腹に突き刺さる。

 傷なら一瞬で回復するのが俺のチート【ヒーリングファクター】だが。

 欠損は回復しないらしい。


いかがでしたか。

おもしろかった、続きが気になるという方はブックマーク・評価等お願いします。

全然関係ないけど、家賃補助っていいよね。あれがあるだけでQOLが上がるよね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ