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50話 ファンタスティックベイビー

僕ちゃんはパーフェクトって中々いい歌詞

「やっぱりそういう出自か……」


 吹き飛んだ下半身を尻目に、まずは切り離された左腕を拾いに行く。

 腰から下がない分体が軽いから、片腕だけの匍匐前進でも意外と速い。


「鍛えてきたし、避けられると思ったんだが」


 正直言って、太刀筋が全く見えなかった。

 ユンクァンの姿が消えたと思った瞬間、上半身が宙に浮いていた。

 左腕を引っ付けて、そのまま下半身に向かうが。


「あー、ユンクァンと目が合った」


 俺の脚の間からユンクァンが見える。

 あいつスタイルいいな、黒でまとめてるからか。


「今そんなこと考えてる場合じゃない……って、待ってくれたんだな」


 ユンクァンは俺がキングジョーみたいに合体するのを待っていてくれた

 まだ、だいぶ怒ってるのが全身からわかるけどな。

 あれは、魔力か?それとも覇王職の覇気か?

 

 俺の全身がつながったのを見て、ユンクァンがこちらに迫って来る。


「あ、待ってタンマタンマ。まだ皮がつながっただけだから。まだ骨全然繋がってないから!」



 全然待ってくれん。

 やさしくねえな。

 ユンクァンは俺の肩に刃を突き刺し、宙に持ち上げる。


「そもそも伊東光でもないが、俺を捨てた名前で呼ぶんじゃあない。俺はユンクァンだ。ビートル人のユンクァンだ」

「いってぇ!あっつい!刃物は焼ける!!離せよピカリン!」


 こいつ、刃物の長さは伸縮自在か。

 剣には銃。


「食らえ、このクソひかり野郎!!」


 俺は指を銃のかたちにして人差し指の先端から魔力をぶっ放す。

 特別サービスでライフル並みの大きさと速度。

 標準を絞った今度のやつなら顔面に風穴開けれるだろ。


「ジャケットに魔力を込めたあたりから魔力の扱いにこなれてきた俺」

「せいぜい中の下ってところだがな」


 左目と鼻の間を狙った俺のライフルは見事命中。

 ユンクァンの顔面にデカい穴を開けたが。


「んだよ。やっぱり腕を刀にするだけのチートじゃなかったか……!!」

「隠す必要もないが、俺は全身が液体金属だ。物理攻撃の類はいっさい無効」


 そりゃお強いこって。


「ところで刺したら抜いてくんない?肩に全体重がかかって治るもんも治らないんだが」


 お月様みたいに欠けていた左目が元通りになって、ユンクァンは再びその鋭い両目で俺を睨み付けている。


「いっておくが、俺とお前では経験に埋められないほどの差がある」


 そう言ってユンクァンは俺ではなく自分の背後に向かって魔力弾を撃った。


「きゃあっ!!」


 ユンクァンの魔力弾がヒータンの翼を削る。

 すかさずセーレが回復魔法を展開して、墜落は免れた。

 俺の方を見たままぶらいんどでセーレたちを狙った。


「ってめえ!」


 気づいてやがったか。


「そうでなければ、いつまでも串刺しになっていないだろ」

「意外とマゾだっていう可能性もあるだろ」

「ユキノ!!私たちなら大丈夫だから!!


 体勢を立て直したヒータンの上から、セーレとリイとニコがヒータンの上から俺に向かってサムズアップを送り。

 そのままドラゴンの里の上に飛び去って行った。


「セルフサクリファイス。聞こえはいい」

「裏切られただけだろって言いたげだな」

「人は裏切るのが常だ。信じられるのは血の同盟のみ」


 こわ。

 ひょっとしてこいつ、転移前はヤクザだったんだろうか。


「そうかい。そりゃあ、世知辛い人生だな」


 俺は肩からユンクァンの刃を引っこ抜き。

 そのまま着地すると同時にしゃがみ込んだ。


「あの時のお返しだ!!くらえ!!」


 俺の頭の上をソコルルの砂鎌が通過する。

 髪の毛が少し切れたが、ユンクァンの方は首が落ちかけている。


「さっすがー!」

「僕の実力を見くびってもらっちゃ困る。貴様と闘った時は全力ではなかった」


 負け惜しみな気がするが、確かに。

 俺の時の砂にここまでのパワーはなかった。

 

 俺が独りでユンクァンを相手している間。

 セーレたちは撤退を選んだが、ソコルルは正面切って闘うことを選んだ。


「貴様はとにかく魔法に慣れる必要がある」


 ソコルルが俺の前に立つ。


「だが、指導している場合じゃない。ユンクァンはあれじゃ死なない」


 だよな。

 ユンクァンは表情を一切変えていなかった。

 切られた瞬間、ただ右手で頭が落ちないよう支えただけだ。

 もうすでに、切り口が銀色に光って塞がり始めている。


「切断すればワンチャンあったかもしれんぞ」

「するつもりだったさ……!」


 ユンクァンが歩いてくる。

 あいつ走んねえんだ。余裕の表れか知らねえけど、せいぜい早歩きしかしない。

 ただ威圧感がすげえ。


「あの時の龍人か。砂を固めるしかできないお前など取るに足らんな」

「ふざけんな。僕たちを侮辱した罪、命を持って償わせるぞ!」


 ソコルルが飛翔する。

 俺たち人間は空が飛べない。

 異世界に来たんだからちっとは飛べるかと期待したのに、せいぜいジャンプ力が上がったくらいだ。


「いっけー、ソコルル!そのまま空から砂まき散らして終わらせちまえ!」

「言い方!」


 だが、そうだろう。

 ソコルルの必勝パターンはそれだ。

 この世界にハーピーや吸血鬼がいるのかは知らんが、いたとしても空が飛べるのは大きなメリットだ。


「同じ手だ。前もそうやって飛んでるお前の羽根を切り裂いただろう」

「僕が同じ間違いを2度すると思うか!!」


 ソコルルの前方に巨大な砂の塊が現れる。

 それはまるで巨大な拳骨だった。


「圧殺する気か。下ら……」


 逃げようとするユンクァンの足に魔力弾を撃ち込む。

 軸足に力を籠めるその一瞬を狙った俺の一撃で、ユンクァンの脚が千切れ飛ぶ。

 崩れ落ちるユンクァンにダッシュしながら、魔力弾を撃ち続ける。


「貴様、死ぬ気か!!」

「死なないさ!!!全力でやれ!」


 柄にもなく俺を心配するソコルルに俺はそう返して、身体の各箇所が銀色に変化したユンクァンを掴む。

 逃げようとするユンクァンに追いついて、何とかつかむことができた。

 お前が切断してくれたおかげで、身体能力が強化されたよ。


「わかった、信じよう!」


 その言葉とともに、俺とユンクァンめがけて超質量の砂が落とされた。


いかかでしたか。

おもしろかった、続きが気になるという方は、評価・ブックマーク等々をお願いします。

っていうか、ハーレムどこ行った。

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