48話 同胞
集団に溶け込ませよう溶け込ませようとしてくるやつってダルいですよね。文化祭とかで、えお前そんなクラスに帰属意識感じてたの!?ってなる。
「うぉらあ!」
墜落したソコルルに向かって巨大な魔力障壁を叩きつける。
どうして自分の魔力で弾丸を作らなかったのか。
その理由がこれだ。
「夏の暑い日に道路の端で見かけるよな、っと」
「……僕は……干からびたトカゲじゃ‥‥‥ないぞ」
ソコルルが意識を手放した。
現代日本の夏あるあるが異世界でも通じたことに驚きながらも。
俺は魔力障壁の上に飛び乗って座りこむ。
観客へのアピールが必要だからな。
「俺の勝ちだ……な?」」
遠くのほうのドラゴンが横になってやがる。
そんなに俺の闘いが退屈だったのかよ。
「ってかまあいいや。裁判長、俺の勝ちでいいんだよな?」
「これが貴様らビートル人の計画か?」
質問を質問で返された。
いや、てか。
いつの間にか背後に来てるし、それより何より。
このレッドアイズだいぶ怒ってらっしゃる。
「まだ意識のあるものは倒れた仲間を抱えて離れよ!」
「……って、ちょっと待て。ちょっと待て。ちょっと待て!!」
レッドアイズの口の周りにとてつもない量のエネルギーが集束している。
肌がピリピリしてきた。
このエネルギーはラクのクジラが出したビームより、強い。
なんだ。何が起きてる。
そりゃレッドアイズくらい頭の位置が高けりゃ状況もよく分からんだろうけど。
俺の目線からじゃドラゴンたちが倒れていることしかわからんぞ。
「ガウガウ!ガウガウガ!」
「みんな!私の下に隠れて!ってヒータンが言ってる!」
「リイが言うなら間違いないわ!!」
もはや俺が通訳する必要もないほどに意志疎通ができてるヒータンとリイ。
だが、ヒータンのあの焦り方と、そのヒータンを守るために文字通り飛んできたワディパパ。
確かなことが2つある。
1つ。レッドアイズさんは今から遠くにいる誰かに全力で攻撃を仕掛ける。
そしてもう1つ。
「お前ら、ソコルルのこと無視か!!」
「……うぅ……どれくらいの時間が経った……」
俺の足の下で眠っていたドラゴニュートが目を覚ました。
図ったようなタイミングだな。
と、その瞬間頭上で爆発音が響き渡る。
レッドアイズさんが貯めに貯めたビームをぶっ放した。
「4分33秒ぐらいかな!お前ちょっとじっとしてろ!!」
ソコルルに乗せた魔力障壁に魔力を追加する。
ぶっ放したビームが着弾して、ここまで爆風が襲い掛かってきた。
何回目?
なあ、これ何回目?
あたりを見回すと、ドラゴンどもはその硬い表皮で熱と風を防いでいる。
セーレたちはヒータンとワディに護られて、しかも自分たちでも魔力障壁を展開している。
足元のソコルルは恐怖で目を瞑って縮こまっている。
俺はというと、何度もダメージと修復を繰り返たおかげで熱風の中でも目を開けていられるようになった自分に驚いていた。
「心なしか、視力も上がってんじゃねえの」
口を開けても喉が火傷しない。
俺の身体は徐々に強くなっていた。
んで。
「っと。風がやんだな。もういいぞ」
「もういいぞって……貴様、なぜ平気なんだ!?」
ソコルルが俺の焼けた肌を見て悲鳴を上げる。
「あん?まあ平気じゃねえよ。死ぬほど喉乾いた。それに」
まだ何か言いたげなソコルルを無視して、俺はビームの飛んでった先を見つめる。
頭がすーすーする。
「なあ、レッドアイズさん。俺が禿げるくらいの威力のビームだってのに、あいつ」
「あり得ん……わしの全力だぞ……」
レッドアイズが絶望の声を漏らした。
陽炎に揺れる男がこちらに向かって歩いてきている。
それはもう堂々と。
「あいつ、このドラゴンの群れを歩いて通るつもりか」
爆発をやり過ごしたドラゴンたちが、一斉に照準を合わせる。
その数数百匹。
だが。
「あ?ドラゴンたちが…」
「ユキノ!!」
おっと。ソコルルのこと忘れてた。
俺は魔力障壁を解除してソコルルを自由にさせた。
「すまんな。髪が生えそろうまで下敷きにしちまってた」
「それも気になるところだが、そんなことより」
「あ、やっぱあいつがお前をフルボッコにしたビートル人か」
近づくドラゴンを触れることなく気絶させてるあいつが。
それがこいつのチートか?
「違うさ……」
「ユキノ!!」
今度はセーレたちだ。
ヒータンの足の隙間からこちらに駆け寄って来る。
「ユンクァン!ユンクァンじゃん!」
「ビートル人のやつら、いよいよ本腰になってきたわ」
「ユッキーの身体ってどうなってるの!?それにみんなが負けちゃって、首長~!」
ヒータンがレッドアイズさんを頼りにしているが、レッドアイズさんの全力の一撃をあいつは跳ね返した。
あの黒づくめのオールバックの男が。
てか。
「ユンクァンっていうのかあいつ」
「ええ、セブンの1人」
「セブン?サーティーンズじゃなくて。どんな7人だ」
その問いかけにセーレは悔しそうな悲しそうな複雑な表情をした。
「ロンドの国を滅亡させた7人がセブン」
「……ってことはお前の宿敵か」
セーレが単身ビートルバムの宮殿に乗り込んで倒そうとした奴らの1人がユンクァン。
それも叶わず廃棄されてしまっていたが。
「……そうよ。力の差がありすぎて宿敵にすらならないけど」
セーレが悔しそうに拳を握る。
あんとき、ごみと一緒に捨てられていたセーレは体中傷だらけでボコされた後だった。
誰と闘って負けたのか。
あんまり聞いてもトラウマを抉るだけになりそうだ。
「とりあえず、お話してみますか……」
俺はみんなを背に歩きだす。
なにせ向こうからユンクァンが歩いてきてるから。
こっちが棒立ちで待ちぼうけてるわけにもいかないだろ。
「あ、ちょっとユキノ!」
「なにより、あいつの目的は俺だろ。これ以上、トカゲさんたちを巻き込むわけにもいかないしな」
それにお互いがお互いをもう認識しちまってる。
いまさら逃げることも出来ない。
「逃げずにこっちへ向かってくるとは、肝が据わっている」
「この世界に転移した恩恵ってそれくらいなんでね。お前らと違ってハーレムもないし」
目の前に立ったユンクァンの威圧感が凄い。
身長が185はあるな。
それに全身黒づくめ。
割と暑いハートランドのこの地で白バイ警官みたいな長袖長ズボン。
「それで、俺に何の用だ」
「お前を連れ戻しに来た、ビートル人の同胞よ」
え。
俺を心配して走って来ていたセーレたちの足が止まる。
まずい。
ついにそういうやり方で来やがったか。
「ロンドとカクラの姫に、ドワーフの職人。いい人材を集めたな。ビートルバムへの手土産としては十分だ」
「ユキノ?」
少し離れた位置からセーレたちが問いかける。
その声には不安がこもっていた。
「でたらめ抜かしてんじゃねえよ!」
俺はユンクァンを睨み付けて叫ぶ。
だが、ユンクァンはその堂々とした態度を崩さぬまま。
「お前はビートル人だろう。ならばビートルバムに帰るのが自然だ。お前は最初からずっと、俺たちの同胞だ」
いかがでしたか。
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