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47話 決闘

「……ふっ、少しはやるようじゃないか。この僕に土をつけさせるとは、大した人間だ」

「あっそ」


 ソコルルが立ち上がるのを素直に待っている。なんつーか、クリーンファイトでいかないと周りのドラゴンたちの評価が下がる気がして。


「今のは強者として君にハンデをくれたやったにすぎない。くれぐれも驕り高ぶらないことだな……死ぬぞ?」

「めんどくせえな」


 めんどくせえな。


「お前が強いのは分かったから、早く全力を出してくれ。こちとらハートランドで道草食ってるわけにもいかないんでな」


 これでも一応、ファクトリーに残してきたネッドとかラッドのことが気がかりではある。俺たちが留守にしてる間にビートル人の誰かがファクトリーに攻めてくるかもしれねえし。


「ふっ……その人を食ったようなものの言い方、いつか自分の身を滅ぼすぞ」


 ソコルルが飛翔する。

 ビルの2階くらいまで上昇したソコルルを見上げて、俺は嫌な予感がした。


「さては降りてこないつもりだな」

「ご名答」


 その瞬間、ソコルルがサイヤ人みたいに砂魔法を連射してきた。

 視界の全てが黄色くなる。


「どういうことだよ。砂かけ婆かお前は。こんな砂撒いて何の意味が……」


 そこから先の言葉はいえなかった。

 降り注ぐ砂が口に入ったからだ。


「うぇっ!!ぺっ、ぺっ。マジかよ!せこすぎるだろ」

「戦闘中にペラペラしゃべるなんて素人すぎるし、それに」


 バックして逃げようとして気づいた。

 足が砂に埋まって動かない。


「読みが浅い」


 ソコルルが翼をはばたかせると、砂が鎌状に飛んできた。

 動くことのできない俺はその砂の刃をまともに食らって、


「左肩が裂けた!いってえ!!」


 どうして痛覚まで回復させちまうんだ俺の身体はと思いながら、肩がくっつくのを待つ。

 だが、おかしい。

 治りが遅い。

 血はすぐに止まった。だが、切り口がいつまで経っても塞がらない。


「お前、なんかしやがったか」


 もがいて砂から脚を引っこ抜いた俺はソコルルを見上げる。


「ちょっとした技術さ。お前らビートル人のチートも無敵じゃない」


 左肩はまだ治らない。

 鎖骨がようやくつながったが、神経がまだつながってないせいで左腕が全く動かせない。


「全然塞がんねえ。どういうことだ」


 ぶら下がってるだけになってしまった左腕をかばいながら俺は考える。

 今まで見てきたものを思い出せ……!

映画でも漫画でもアニメでも、きっと空を飛ぶ敵を倒すパターンがあったはずだ。


「思いついたが、たいていヒーローも飛べてるな」


 いや、そんなことない。

 飛べない主人公が空飛ぶ敵を倒す展開もあったはずだ。

 と、小学6年生辺りまで記憶をさかのぼっていた時、


 ざしゅっ、と。

 今度は左脚を砂の弾丸で撃たれた。

 幸い掠るだけだったが。


「また砂かよ!せめて砂糖菓子にしてくれ!てかいい加減降りて来い!!」


「んだよ。やっぱ人間大したことねえじゃん」


 うお。俺の情けない戦い方をみてどっかのドラゴンがやじ飛ばしてきやがった。


「だな、あの小僧が服を振り回した時はちったあ楽しめるかと思ったんだが、ドラゴニュートの殺戮ショーか」


 こんな感じの落胆したような声がそこかしこから聞こえてくる。

 よく考えりゃ俺はローマ時代の奴隷と同じことをさせられてる。

 とんだパンとサーカスだ。


「くっそ。なんで俺がお前らドラゴンを楽しませるために死ななきゃいけねえんだ!」


 結構ムカついてきた。

 ビートル人はアフリカの少年兵とか見做してた俺だぞ。

 その俺が何でこんなコロッセウムの剣奴みたいなことになっちまってんだ。


「それはきみの感想だろう。僕はこうやって自分の能力を発揮できる場は好きだぞ!」

「そりゃ幸せなこった。俺はやっと左肩が治って嬉しい」


 ようやく神経が繋がって、左腕が動くようになった。

 さてと、と俺は抉れた左太ももを見ながら考える。

 偶然にも昨日ソコルルの心に灯せた疑問の火は、今消えちゃったらしい。


「あわよくばこの闘いすらも無効化しようとしたが、そこまでうまくは立ちまわれなかったし」

「ふっ、この闘いで勝ったほうが正義だ。それがハートランドのルール!」

「ほらー、今もこうやって大声だろー!だからおりてこーい!!」


「ユッキーの闘い方って、力抜けるね」

「んー、まあ、あいつ死なないから。危機感が欠けてんの」

「あのすぐ治る能力のデメリットだねぇ」

「リイ、ほんとにヒータンの言葉わかんないんだよね?」

「同じことがヒータンにも言えますね」


 ガウガウとしか聞こえないヒータンの言葉の意味を、リイはおそらく雰囲気で察している。

 コミュ力高いな。

 しっかし。


「危機感ねえ……」


 正直死ぬって危機感はないんだが、それでも怪我したら痛いからな。ラクに何回か捌かれたせいでだいぶ慣れたとはいえ、傷つくのは嫌いなんだが。


「危機感なら感じてるさ」


 今度は向こうに待ってもらってた。

 上空で不敵な笑みを浮かべるソコルル。

 その表情から何を考えてるかがわかった。

 勝ち確。


 こちらに向けた手のひらにはさっきよりでかい砂の弾丸を作っていた。


「ライフル並みだな。次で終わらせるつもりか」

「ご名答。今回の砂はさっきより粗いぞ」


 なるほど。左肩は、斬られたと同時に傷口を削られたのか。

 それで表面積が広がって治るのに時間がかかった。


「まだ左脚は治りきってはいないだろう。安心しろ、命までは奪いはしないさ。きみを行動不能にすれば勝利だからね」

「そりゃどうも」


 俺はもう一度ジャケットを脱いだ。

 現代日本にいた頃、そこそこ頑張って入った高校の制服。

 中世ヨーロッパ風のここじゃかなり浮いてるが、それでもいじられてこなかったのはビートル人が何人もいるからだろうな。


「は、またジャケットか。やっぱりきみは素人だ。同じ闘いにこだわって、ばかり!!」


 ライフル並みの速さで射出されたソコルルの砂弾丸を。

 俺は魔力を込めたジャケットで包み込む。

 弾丸のスピードを殺さないよう、そのまま体を回転させて。

 ソコルルに送り返す。


 ぶっつけ本番だが、出来た。

 ただ、見切り発車だったから。


「避けろ!ソコルル」

「はっ!?」


 俺の突飛な行動に釘付けになっていたソコルルがとっさに身を捻ったすぐ後。

 砂の弾丸がソコルルの翼を撃ち抜いた。


「現代日本じゃ、空飛ぶ敵は撃ち落とすと相場が決まってるんだ」


 空高くからハメプしてくる敵は撃ち落とす。

 俺の脳内本棚から導き出された結論だ。

いかがでしたか。

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