44話 疑惑と裁判と制裁
契約で繋がっていない熱い集団って怖いですね。抜けるときにサンクションを受けないといけない。
―――ビートルバム 宮殿―――
「フジオウさんが王の能力を奪って逃げた?」
カゲロウとイタミが地下から持ち帰って報告にビートルバムは大騒ぎとなっていた。
「ああ、そうだ!あの落ちこぼれ、ついにイカレちまったらしい!」
「短絡的で無駄な行為だ」
「え…‥私のスマホは?」
「ちゃんと効いてたさ」
肩を怒らせて急ぎ足で歩く2人を見つけてヤマナミは事情を聴く。
自分のチート【スマホ】で2人の王は檻の中にロックされているはずだ。
そのロックがどうして突破されたのか。
「No.29トールのチートを奪った。おそらく彼もどこかに遺棄されている」
「透明人間のチートを……」
透明人間となって、私のスマホのセンサーをすり抜けた。
ヤマナミはスマホを取り出しマップを起動する。自分の現在地の周辺には赤い点が数十個に点在している。
この点がビートル人だ。
ヤマナミはあちらこちらに動く点の中から29番を探す。
「いた。この宮殿から東へ43Km、海の上」
「一か所にまとまってるということは、まだ日が経っていない」
「アシハラさんは今どこにいる?」
カゲロウに尋ねられてヤマナミはNo.0を探す。
「現在、元カクラ帝国の砂漠の上」
「カジマとの追いかけっこ中か。テキストメッセージなら俺たちのスマホからでも送れるが」
「電話すべき緊急事項でしょうね」
ヤマナミはメッセージアプリを起動しアシハラのアカウントに電話をかける。
1コールも鳴り終わらないうちにアシハラは応答する。
「もしもし。どうしたのかな」
「あ、お疲れ様です。……あの、えっと、結論だけ言います。フジオウがトールを殺して王2人の能力を奪って姿を消しました」
「きみのスマホでも見つからない?」
「あ……すいません。今から確認します」
「うん。お願いする。僕もすぐ着くから」
なぜだかわからないけど、アシハラさんの声を聞くとほっとする。声になにか癒しの周波数が含まれているのかもしれない。
ヤマナミはアシハラさんとの会話をカゲロウとイタミに伝える。
もちろん、マップでフジオウの居場所を探索しながらだ
3人は急ぎ足でアシハラさんの部屋を目指す。
「今から来るっても今日中につくかどうかってとこだな。とりあえずエルさんにも報告を……」
「カゲロウくんは焦りすぎるところがあるね。それで、ヤマナミさん。フジオウは見つかったかな?」
今さっき電話で聞いた声と、いつの間にか自分の赤丸の前に表示されていたNo.0の赤丸にヤマナミは半ばパニックなりながら、顔を上げる。
それは2人も同じだった。
まるで今日は一日部屋にいました見たいな顔をして、アシハラさんが自分の部屋から出てきた。
「「……え」」
「あ……………………………………あ、あの、はい、えっと‥‥‥すみません、見つかりません。トールさんの透明人間も私のマップからは消えますから、それと同じかと」
「うーん、しょうがないね。確かにトールのいじめは目に余ったけど、かといって力を示さないフジオウにも非はある。いずれにせよ、これは僕達への裏切りとみなせる。外出しているユンクァン抜きで今からセブンのみんなで会議して、またみんなには報告するよ」
冷静に事件の因果関係と今後の方策を述べるアシハラだったが、3人は未だパニックの中だった。
ヤマナミのスマホが誤作動を起こしたのか?
いや、なぜか未だに向こうの世界からソフトウェアアップデートが定期的に送られてくる超チートガジェットだぞ。
だとしたら、これがアシハラさんのチートなのか?
「アシハラさん、その、今日はずっと部屋にいらしたのですか?」
カゲロウが目を泳がせながら尋ねる。真剣な話をしなければならないことはわかっているのだが、ここを確かめなければ集中できなかった。
「あ、ははは。そっか、そうだね。確かに気になるだろうけど、でも自分のチートのことは教えられない。悪いね」
「そ、そうですよね」
「でも、1つだけ。ヤマナミさんのスマホは壊れてないよ」
そういってアシハラはヤマナミたちにトールの遺体を探してくるよう指示を出し、部屋の扉を閉めた。
しばらく扉の前に立って3人が去ったのを確認する。
「さてと、大変なことになってきた。ビートル人が来る前に、昨日見た夢を聞かせてくれ。マコ」
―――ハートランド ドラゴンの里―――
「うーん……合わせる顔もないと言いますか、すみません……」
「いや、いいよ」
檻の間からニコが申し訳なさそうな顔をのぞかせる。
俺は檻の間から手を伸ばしニコから果物を受け取る。
「俺よりお前らのが心配だ。だって何言ってんか解んないだろ」
「はい……そこはあのドラゴニュートのソコルルに分があります」
「最悪だな。俺の悪評を撒き散らかされてる」
ニコが持ってきてくれた果物はベリーみたいなやつだった。房から1つ取って口に入れてみると、酸味が強い。
あの後。
俺の魔法障壁の前に崩れ落ちたソコルルは、セーレの回復魔法によってすぐ回復した。
ただしまた跳びかかって来られても困るから、セーレには力をセーブしてもらった。
「ついにハートランドを侵略するつもりか、ビートル人」
「俺はビートル人じゃねえよ」
「言い訳が下手すぎる。だとすればその手に刻まれた数字は何だ」
「俺も困ってんだよ!手が切り刻まれようがこの数字まで回復するんだぞ」
少女漫画のイケメンみたいなドラゴニュートは、立ち上がる力がないにもかかわらず俺に喧嘩を売ってきた。
なんでこう、行く先々で悪人扱いされるかな。
あ、ビートル人どもが好き勝手してるからか。
「はた迷惑な」
「ユッキー……」
ヒータンがいつも間にかこちらに来て囁く。
「かなりマズめなことになっちゃったよぉ。ドラゴニュートがこんなんで、しかもユッキーのこと恨んでるってなったら、他のドラゴンたちに敵だと思われる」
「ドラゴニュートとドラゴンって仲良しなのか?」
「ドラゴンもドラゴニュートも他種族とは群れないけれど、でも人間とドラゴニュートのどっちに味方するかっていうと」
「そりゃ似たところの多い方だわな」
人間もドラゴンも自分と似てるやつのが可愛い。
周りを見渡せば、俺を取り囲むドラゴンの視線がかなり厳しいものになっていた。
「ヒータン、お前。その異人とどういう関係だ。よもやお前が招き入れたとは言うまいな?」
いかにも強そうなレッドアイズみたいな黒いドラゴンが集団から前に出来てて、険のある言い方で尋ねてくる。
多分あいつ、戦闘部隊のリーダーだな。
そしてその部下たちであろうワイバーンが空を滞空して、ゴジラみたいなやつらが出入口を固めている。
うん。
まずいな。
セーレとリイとニコは?
ああ、ワディさんの足元か。
ならひとまず安心だ。
「ヒータン。お前、自分に火の粉が降ってきたら、適当に嘘こいて俺に被せていいからな」
「ほぇ?」
「お前はここで生きなきゃいけないんだろ。俺は出てきゃしまいだから」
驚いた後心配そうにヒータンは頷いた。
「ちがうよ!ユッキーたちは良い人だよ!うっかりハートランドに迷い込んで困ってたから連れてきただけ」
「疑わしい!あの若いドラゴンはビートル人に脅迫されている!」
「ああ、足元でうっせえな」
「きっとビートル人にも色々いるんだよ!ドラゴニュートの町を襲ったのは、悪いビートル人!」
「ビートル人はみな悪ではないのか!お前もあの時の侵略を覚えているはずだ!!」
「うっ……それは……」
「ビートル人どもはドラゴンの里には来てないんじゃねえのか?」
「「「こいつ、ドラゴン語が話せるのか!!?」」」
俺がいきなりドラゴン語で議論に参戦したことでドラゴンどもが面食らっている。
「そうだよ!ユッキーはドラゴン語が話せるんだよ!」
「そうそう、僕とドラゴンは友達だよ」
「ふざけるな!そうやって油断させて何もかも奪っていくんだろう!俺の町のように!」
そう叫んだソコルルは翼を素早く動かして俺を切りつけた。
よりにもよって首の動脈が切られて噴水みたいに血が出たが、すぐに塞がった。
こいつ大概ムカつくな。
「てめえ、話し合う気がねえんなら、覚悟できてんだろうな」
「お前、それは一体……そうか、ビートル人のチートか……」
「おい、あいつ傷が塞がったぞ……」
「信じられん……人間か?」
「でも、血は赤いぞ…‥」
ドラゴンたちが俺のチートを見て困惑している。
ソコルルもどうやら本気になった。
まだ回復しきってはいないが闘う気だ。
だったら俺だって相手してやるよ。
と、構えたとき、俺の肩を誰かが叩いた。
リイだった。
とてもにこやかな笑顔をしていた。
「リイか、ちょっと離れてろ、今からこのトカゲ怪人と話つけるから」
「今そんなことしちゃ余計こじれるでしょ?」
リイの目から発せられる青い光が俺の網膜を直撃する。
青一色の世界のなかで冷静さを取り戻しながら、俺は自分がセーレの鎖に縛り上げられるのと、その背後でニコが鉄の檻を作っているのを、他人事みたいに眺めていた。
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