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38話 ハートランド

「セーレ、お前は蜘蛛みたいに鎖を張り巡らせてくれ」

「総当たりでバイクを探せってことね」


 セーレの周囲半径20mに鎖の結界が張り巡らされる。

 これのどっかにバイクが引っかかってくれればいいけど。


「ラクは?」

 

 あたりを見渡してもチート野郎は見当たらない。

 俺たちと同じく自由落下中のはずだ。

 この状況で攻撃を仕掛けてくるなんてこと、ありえるか?


「見つけた!一台だけ!」

「でかした!」


 セーレの結界が捕らえたのは、ニコのバイクだった。

 背の低いニコにちょうどいい原付サイズのバイク。

 全員が乗るには小さすぎるけど、しのごの言ってる場合じゃねえ。


「飛び乗れ!」


 世界衝撃映像に出てくる逞しい家族みたいに、4人一斉にバイクに乗る。


「ダメです……重量オーバーです」

「ほんと。フルスロットルとは思えない落下スピード。ガス欠してんじゃない?」

「魔眼の効果ないのに何でそんな冷静なんだよ」


 ニコがバイクのエンジンを全開にしてるにもかかわらず、落下速度が一向に下がらない。

 

「というより、減速するには時間が足りなさすぎます。セーレさん、鎖を地面に!」


 もはや言われる前に鎖を出現させ、指示の意味もよくわかってないまま地面に打ち出すセーレ。


「届いたよ!ってこの長さ、もうすぐ激突する!」


 垂らした鎖の長さがセーレに残り時間を教えた。その短さにセーレはゾッとしてる。

 ニコは鎖を掴んで集中。そのそばでリイが瞳を青く輝かせている。

 忙しそうだから説明は後で聞こう。


「激突します!!皆さん、魔力障壁を全開に!!」

「結局激突するん……」


 セーレの叫びは途中で途切れ、俺たちは硬い硬い地面に叩きつけられ異世界の大地の染みになるかと思われた。


「え………?」

「これって、ニコちゃんが」

「ゼリーだな」


 魔力障壁が発動してるから顔が埋もれず、周りがよく見える。

 俺たちは地面に囲まれていた。

 グニグニして柔らかい。

 まるでチョコパフェの中に落ちたみたいに優しく包み込まれている。


「私の能力で地面を柔らかくしました。落下の衝撃を吸収して、でも気をつけてください。今から跳ねます」

「でもすごい圧力でつぶされそう‥‥‥ぐふっ」

「んーっと多分だけど、今から反発するよね?」


 リイの予測通り吸収しきれなかった勢いで俺たちはトランポリンみたいにジャンプした。

 さっきより低いお空だからって何の恐怖も感じないのはどうかと自分でも思う。



「ほっ。ほっ。ほーーーー」

「完璧じゃんかセーレ。次はバック宙いってみよー」

「ってリイ。三回半ひねり!?」


 ニコが柔らかくした地面でトランポリンしてるセーレとリイ。

 一方のニコは未だ緊張が解けていないようだ。


「ありがと。マジで助かったよ。お前がいなきゃ俺以外死んでた」

「あなたが死ぬ方法ってあとは寿命くらいですよ。ラクはどこにいったんでしょう」

「さあな。能力者本人なんだし、生き延びる方法くらい用意したうえの行動だろ。ただその場合またこっちに向かってくるかもしれないんだが」

「流石にこの荒野から私たちを見つけるのは至難の技ですよ」


 だとしてもあの2人をあんまりぴょんぴょんさせるわけにはいかないか。

 うぉ、後方伸身2回宙返り3回ひねりだ。


「ラクに見つかっちまうかもしれん。新体操は中止だ」

「はいよー。ってかニコちゃん。ここってハートランドだよね?」


 シュタッって感じで主人公みたいに着地したリイがニコに問いかける。

 

「ああっ、ああっ。んふふっ」

「立てない自分にちょっと笑ってんのかよ。ほれ」


 ぼよんぼよんの地面に足を取られてバランスを崩しっぱなしのセーレを固い地面に引き上げる。

 

「なんなんだ。ハートランドって」

「ああ、一生出れないかと思った。え、ハートランド?え、ここハートランドなの?」


 だからなんなんだよ、ハートランド。


「ほんとにハートランドなのリイ」

「多分そうだよ。この人気のなさ、土地の不毛感。ハートランドって感じ」

「私もそう思います。この土の質はカクラでもロンドでもありません」

「……俺もそう思うな。土だけじゃなく、空気もこう、なんていうかハートランドだ」


 うん。肺にハートランドが入って鼻から抜けていく。


「空気は変わんないよ?」

「あ、そすか‥‥‥」


 適当に合わせたらミスった。


「ハートランドってあれだよ、あのカクラの北にある広い土地のことだよ」

「ふーん?」


 セーレのふわっとした説明だといまいちよくわからんな。

 てか、リイとニコがうげってなってる。

 さてはセーレもよくわかってねえな。


「セーレさーん。ハートランドですよー。フェフェル王に教えてもらったでしょー」

「うーん?これくらいしか教わってないよ」

「もしかしてあれか、同じ第一王女でも第一子かどうかの差か?」

「あ、それ結構デリケートなとこですよ」


 王族として備えるべき知識を確認しあう2人をみて思ったことは、あまり大きな声で言っちゃいけなかったらしい。

 ニコに頭を抑えつけられた。

 めっちゃ力強い。



「はい、ということでハートランドです。私たちの住む大きな大陸の上半分。それがハートランドです」

「へー」

「私たちの大陸は凸のかたちをしています。その上の四角がハートランド。下の長方形がロンドとカクラ」


 ニコが地面に凸の図を描きながら説明してくれる。


「カクラの方が数倍でけえじゃん」

「まあね。てか地図見たの私も初めてかも」

「ですが今では全部がビートルバムです」


 ロンド、カクラの色分けをビートルバムが塗りつぶす。


「まるでモンゴル帝国だな」

「そのビートルバムでさえ侵略し損ねているこの世界最後の秘境、それがハートランドです」

「秘境、ね」

「といっても私たちのような亜人が元から住んでたんですけどね。でも私たちに国なんてないし、それに‥‥‥」

「ん?ちょっと待て」


 ニコによって詳しく書かれる世界地図から顔を上げる。

 現代日本の常識が邪魔して、今まで気が付かなかった。


「この世界地図、誰に教えてもらった?」

「あ、確かに。リイでも初めて見るんだし、そんな情報をどうしてニコちゃんが知ってるの?」

「そういえばそうだね。位置関係なんて上から見ないと分かんないよ」


 この世界に飛行機は存在しない。ラクのFeel Good Inc.が何よりチートだったのは空が飛べたからだ。


「…‥‥‥最後に説明するつもりでした。別に隠すことでもありません、ちょっと言いにくいですが」

「言いにくい?ビートル人に教えてもらったとかか?」

「ユキノさん、正解です。もっと詳しく言うなら私たちの世界のかたちはある1人のビートル人によって明らかになりました」

「誰だよそいつ」

「No.0、アシハラです」



 あれ。

 曇りか?

 ニコの衝撃的なセリフを演出しているのか?


 いや。違う。

 緊急事態だと、俺以外の3人の表情が告げている。

 は‥‥‥?


「おい、嘘だろ‥‥‥」


 空飛ぶクジラを否定したのがこの章の始まりだぞ。

 なのに章の終わりでこいつを登場させんのか。

 いや、していいのか。

 ミノタウロスもドワーフもいるんだから、王道のファンタジーキャラはいてもいいんだ。


「……このハートランドが人跡未踏である理由。それがこれです。いえ、こいつらです」

「……」

「……逃げるぞ!!」


 俺の叫びが合図になっちまったのか、俺たちの頭上を滞空していたドラゴンが火を噴いた。



 ハートランド。

 それは幻獣や神獣の暮らす土地。

いかがでしたでしょうか。

いとをかし、続きが気になりて候といふ右大臣は、ゐゐね、ぶっくまあく等お願いします。


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