表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/170

35話 赤と青

 ジャブとかフェイントとかの駆け引きなんて一切なく、まずは右ストレートで殴り合った。

 互いの拳が互いの顔面を捉えて俺たちは同時にふっとぶ。


「しょっぱなから反則かよ。おまえ、やっぱりほんっとに性格悪いのな」

「うるせえな!だったらレフェリーでも連れて来いよ」


 俺の両目が視力を取り戻した時、すでにラクはファイティングポーズだった。

 あいつ、拳についたサメの歯で俺の両目を的確に抉ってきやがった。


「視力を失うのは、何回目か」

「次は心臓を止めてやるよ」


 物騒な宣言だな。スポーツマンシップに反するだろ。

 さて。

 俺はラクの拳を躱しながら考える。

 サメの歯でリーチが多少伸びてるとはいえ、俺とラクは体格が1回りくらい違う。

 だから落ち着いて距離を取ればラクの攻撃は当たらない。

 いや。これ、目が強化されてるな。


「なんで!なんで!あたらないんだよ!!」


 ラクがブチギレてる。

 

「そんなもん、俺が蝶のように舞ってるからじゃないか」

「てめえ、本気でぶっ殺す!」


 ラクが全身を躍動させ俺に蹴りを放つ。

 そのスピードはやっぱビートル人だけあってステータスそのものもチートだ。

 なんてのんきに描写してる場合じゃなかった、避けきれん。


「刺さったか!」

「刺さったよ。またルール違反だ」


 今度は足に針を仕込みやがった。

 俺のみぞおちにパスタ一人前くらいは入りそうな穴が空いている。

 すぐに塞がったが。

 だからすぐ反撃しようとして違和感に気づいた。

 足に力が入らない。


「得意になってんじゃないぞ、不良品。この針は、ヘビの牙だ。インド象が3秒で死ぬ猛毒だ!さすがのお前も平気じゃいられないだろ!」


 毒か。

 このタイプの攻撃は始めてだ。


「ああ、なるほど。どうりで頭が熱っぽいと思った。多分アドレナリンが出てるんだな」

「つくづく減らず口を叩く野郎だな!!」


 小鹿みたいに震えてる俺にラクはヤクザキックを食らわせる。

 いつの間にか後ろに来ていた壁に俺は後頭部を思いっきりぶつける。

 40度の熱が出てる状態でこの衝撃は、昇天しそうになる。


「1つ教えといてやろう。今俺にはお前が3人に見えてる。さしずめラクとリクとルクってところ‥‥‥」


 今度はストンピングだ。

 俺は頭を防御しながら考える。

 こいつ俺たちがボクシング中だってこと忘れてんじゃねえの。

 

 

――――――

「ねえ、早く。このままだとユキノが死んじゃう!」

「わかってます。いくら自分がチートだとはいえ能力も把握しないままあんな真似して」


 ニコの手首から先はゲーム台のディスプレイの中に消えていた。コントローラーを介してではなく直接ゲームの世界をいじくりまわしているみたいに、クジラ爆弾の構造を再構築している。


「まずは何より推進力を与えます。セーレさん。そっちの鎖に魔力を流し込んでください」

「りょーかい!」


 ニコとセーレを中心にクモの巣みたいに張り巡らされた鎖のネットワークがクジラ爆弾の隅々までに行き届いていた。指定された鎖にセーレが魔力を流し込めばニコのサポートになるのだ。


「流したよ!」

「ありがとうございます。これからしばらく流し続けてください。このクジラが墜落しないかどうかはセーレさんの魔力次第です」

「私の負担が凄い!」


 とはいえこのなかで一番魔力量が多いのはセーレだ。言われた通り魔力を流す。


「あ、え、うそ」


 ニコが呟く。その声には驚きと困惑がこもっていた。


「どうしたの」

「赤と青の配線、片方を切ると爆弾が解除されますが」


 ニコがディスプレイから手を離す。

 その手には血管みたいな赤と青の線が握られていた。


「片方を切るとこのクジラは大爆発を起こします」



――――――

「はぁ‥‥‥はぁ‥‥‥はぁ‥‥‥」


 人を踏みつけ続けるのは体力が要る。


「久しぶりだな、ここまで運動したのは。いっつも現地人にさせてるからな」


 ぴくりともしなくなったユキノを見て俺は一息ついた。

 ここまで熱くなった自分に驚く。

 俺としたことが、つい奴らの口車に乗せられて、ボクシングなんてのに参加しちまった。

 ボクシングなんてクラスの大人しいやつとやった時以来だ。

 

「まあ、あれは一方的だったけれど」


 思い出しかけた現代日本での記憶に気を取られて、見るとユキノがいない。


「何!?」


 振り返るとユキノが立っていた。

 傷1つない顔で余裕の笑みを浮かべている。


「てめえ、【ヒーリングファクター】!!!!!」


 サメの歯で切り裂き、毒を刺し、数えきれないほど踏みつけたのに、それでもこいつは透き通るような白い肌で俺の前に立つ。


「クソが!!俺は!思い通りにいかないことが!一番!!ムカつくんだ!!」


 もはやボクシングなんて知ったことか。

 俺はユキノの首根っこを掴んで【ミルウォーキー】を発動。

 だが。


「なんで‥‥‥なんでだあ!!!」


 身体の全てを分解したはずなのに瞬きするとユキノはまた復活している。

 これじゃあまるで、俺のチートが弱いみたいじゃないか。


「絶対に認めねえぞ!!」


 たとえアシハラさんが探し求めてるチートとしても、俺を馬鹿にするやつはこの世から消してやる。

 そうやって俺は何度も何度も【ミルウォーキー】を発動。

 これだけ繰り返しチートを使うと気絶するはずだが、今の俺は際限なく発動することができた。

 そうだ。

 俺だって闘いの中で成長するのさ。俺はサーティーンズの1人なんだから。




―――――

「ものすっごい回数俺が殺されてるんだが」

「幻覚なんだからいいじゃん」


 リングロープとして使われていたセーレの鎖でラクを縛り上げる。

 ラクは気をつけの姿勢で縛られ血走った眼で何度も俺への呪詛を吐いていた。


「つっても気分はよくねえよ。何で目が開いてんだよ、目が合って仕方ねえ」

「でも現実のユキノは見えてないよ」


 超絶片結びをしてラクの捕獲は完了。

俺はへたり込む。

 毒が回復していない。


「毒攻撃は初めてだ。徐々に回復してるとはいえ、爪が紫だ。熱はまだ‥‥‥7度5分」

「一般人なら即死してそうだね」

「だろうな。にしても、幻覚の魔眼か」


 リイの目は緑に輝いていた。


いかがでしょうか。

面白い・続きが気になるといったかたは評価・ブックマーク、出版社への売り込み等お願いします。

感想もお待ちしてます。ここがよかった、つまらん、作業中におすすめのYouTube等是非教えてください。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ