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26話 Everything is 作業

 俺たちはいつか海の向こうからミサイルが飛んできて日本が爆発すると頭の隅で思っていた。

 海の向こうっつっても、俺たちの場合はソ連じゃなくて北朝鮮だったがな。

 テストの前日とか怠いときはミサイル飛ばしてくれないかと思ったりもしたが。


「ニコ!」


 迫りくる爆風を前に俺はとっさにニコに覆いかぶさった。

 爆風を喰らうのは2度目だ。

 あたりが土煙でおおわれる中、またしても熱と衝撃を全身に感じる。

 今度は背中が焦げやがった。


「ユキノさん。そんな‥‥‥」

「ああ、待て待て。顔を上げるのは数秒待ってくれ。今はまだ、後頭部が刈りあがってるから」

「そんなレベルじゃないと思いますけど」


 回復魔法を手に宿したニコが恐る恐る俺の背後に手を回そうとするが、それより早く髪がすくすくと生えてきた。


「っと回復回復。心配してくれてありがとうな」

「異常な回復力。それがあなたのチートですか」

「おう。あんときは黙ってたけど。ってそんなことより」


 俺は爆心地に目をやる。

 多摩ニュータウン並みに彼方まで広がっていた寮の群れが、半分は消し飛んでいた。

 おそらくあれ一発で全爆破するつもりだったのだろうが、クジラのダメージで狙いがそれたのだろう。

 威力の半分が爆破したのは何もない平野だった。

 ミサイルを発射した張本人はもういなかった。

 こぼした血さえ爆風で吹っ飛ばした。


「完敗だ」

「……くやしいですが」



「お疲れ様。惜しかったね」


 坂を平らにして俺たちが下界に降り立った時、まず駆け寄ってきたのがリイだった。

 俺をスルーしてニコの無事を心配していた。


「ニコちゃん、大丈夫だった!?」


 これはセーレだ。

 俺をスルー(以下同文)。


「私なら大丈夫です。ありがとうございます」


 2人のお姫様に心配されて若干びっくりしてるようだが、その表情の変化は周りには気づかれていない。


「で、お前ら2人は知ってたのか。あのクジラが生き物だって」

「いいえ」

「知らなかったよ。ていうかあの兵器がダメージを受けるところなんて見たことなかったから」


 一度闘ったことのあるセーレとリイでもあれが生き物であることは知らなかった。


「それにしても法外な威力だよ。私たちの寝るところがなくなっちゃった」

「ミサイルは初めて見るのか」

「いいえ、何回かぶっ放されてるわ」


 ビートル人はカクラやロンドと闘った時にもミサイルをぶっ放していたらしい。

 俺はクジラが開けた大きな穴を見る。ここからだとめくれ上がった穴の縁しか見えない。


「ビートル人的にどうなのかな。この、みさいるに私たちは勝てそうかな?」


 俺が初めてビルディングに乗り込んだ時は泣いていたが、基本リイは飄々としてどこかに余力を残したような態度をする。

 だが今回はどこか不安そうだ。

 セーレも目の前のクレーターに足がすくんでいる。ロンドにビートル人が来た頃はまだ幼かったらしいから、ビートル人の力を実感するのはこの数日が初めてなんだろうな、

 こういう時こそ、主人公の俺が出来るってかっこよく宣言する場面なんだろうが、いかんせんミサイルとは闘ったことがない。借金とも闘ったことはなかったが、さすがにあれとはわけが違う。

 中身のないポジティブは絶望を深めるだけだ。

 あたりに重苦しい沈黙が流れたとき。


「できますよ」


 ニコが声を上げた。

 セーレとリイと並ぶとドワーフらしい背の小ささが目立つな。

 って。


「いいのか?そんなこと言って」

「いいですよ。やってみせます」


 失敗しない女みたいに堂々と俺たちの前に進み出て。

そうしてニコは曇空とクレーターをバックに腕組みをして仁王立ちした。


「このファクトリーとあのクジラさんを救うために、あのビートル人を倒しましょう。協力してください」


 ニコが90度お辞儀をして頭を下げる。

 何となくなりゆきでというか俺が強引に協力させてきたんだが、どうやら本気になった。

 あのクジラさんが傷つきながら町を破壊されてたのがよっぽど悲痛だったらしい。

 やっぱこいつシーシェパードだ。


「いいよー」


 ニコのお願いは、消しゴム取って並にあっさり受け入れられた。

 いいのかお前ら。具体的なプランも何もまだ聞いてないんだぞ。


「いいけど」


 俺もいいけど。断るわけないけど。


「ていうか、断ると思ってないだろ」


 俺の言葉を聞いたニコは少しだけ口角を上げて笑って、


「こういうのは告白と一緒で、確認作業です」



―――ビートルバム 宮殿―――

「怒ってる。ラクさん、ブチギレてる」


 ヤマナミがスマホをズームさせて観察する。

 意気揚々と出かけて行ったラクだったが、さっき帰って来た時には。

 Feel Good Inc.はボロボロだった。

 体中から血を流して、空を飛ぶのもやっと。

 身体の端々は元の魚に戻りかけていた。

 なんとか宮殿に降り立ったFeel Good Inc.はその瞬間灰となって崩れ落ちた。

 

「あいつら異世界人のくせに‥‥‥俺を馬鹿にしやがって、畜生、畜生…!」


 灰で全身真っ白になったラクが呪詛を吐きながら灰の山から這い出てきてた。

 いつも可愛い系のイケメンは怒りで顔が歪み見る影もない。

 痛々しい光景だった。

 だがその全身から発せられる憎悪に誰も近づけずにいた。

 それでも、ラク担当の召使は主人の汚れを掃除するために近づかなければならない。

 最低限そうする素振りぐらいみせないと職務怠慢で処刑されるからだ。


「でも、あんな状態のラクに近づいても殺されるよね」


 ストレス解消として。

 ヤマナミの予想通り、ラクに近づいた2人の召使いはあっという間に【ミルウォーキー】のチートで、オブジェに変えられた。

 人体の不思議展に出展できそうな人体標本が2つ。

 ジョジョ立ちみたいに灰の中に立った。

 ヤマナミはスマホのズームを遠くする。これで内臓や血が赤い色としか見えない。

 なにも自分のために近づいてくれた人間をオブジェにしなくてもいいじゃないかとヤマナミは思うのだが、ラクは同じ人間と思っていないためなんとも思わないのだろう。

 だから逆に、ヒャクイチのように異世界人の女を好き勝手したりしないのだが。


「あ、倒れた」


 ラクが倒れた。

無理もない。人間を改造するのはかなり魔力を消費すると以前自分から言っていたじゃないですか。

 心のなかでそう文句を言いながら、仕方なくヤマナミは走り出す。

 40番台はこうやって上の人間の後始末をするのが仕事なのだ。

いかがでしたか。

面白い・続きが気になるという方は評価・ブックマーク、炎上ツイート等お願いいたします。


少しずつですがポイントが上昇していて、恐悦至極歓びの極みでございます。

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