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22話 Scar Tissue

リアルが忙しくいつの間にか一週間も経過してしまっておりました。

―――ビートルバム 宮殿―――

「50番の子、またいる」


 異世界転移してきた少年少女たちが暮らすビートルバム。彼らはそのど真ん中に位置する宮殿で暮らしている。

 50人が暮らして、ミノみたいな召使がその数倍いる。だが宮殿がでかすぎて人口密度がモンゴル並になっており、誰ともすれ違わず一日暮らすことができる。

 そんな宮殿のだだっ広い中庭のよく日の当たるところにユキノの次に召喚された少年はいつもいる、それをヤマナミは発見した。


「ちぇっ、うらやましいなあ。何でヤマナミだけスマホ持ってこれたんだろ」


 スマホのカメラ越しに50番目の異世界転移者を眺めるヤマナミに、巨大亀にのったラクが羨ましそうにつぶやく。

 少年は、ただ日光浴をしていた。バトミントンをするわけでもなく、犬の散歩をするわけでもなく、荷物を枕にして寝そべっていた。


「全ッ然見えないけど。でもあいつ、いっつも空色の服着てるね」

「同じ服何着も持ってるんですかね。でもいい色合いしてて、さわやかな、清潔感ありますよね」


 「でた。清潔感」とラクが笑いながら言う。だがヤマナミのいう通り、50番目の転移者アキヅキはなんだか爽やかなやつだった。すっきりとした顔立ちに澄んだ瞳。欲にまみれたチート転移者の中では異彩を放っていた。


「あ、そうだラクさん。そろそろ進撃するようセブンから指令が下ってます」

「今言うんだ。いつだっていいけど、でもやけに働かせるなあ」


 ヤマナミの報告を聞いたラクはめんどくさそうに巨大亀から降りた。その衝撃で亀の皮膚がパズルのピースみたいにぽろぽろと崩れ落ちた。

 そろそろ限界なんだなとヤマナミは思った。

 ラクがミルウォーキーを解除すると途端に亀の甲羅が破裂した。あとに残ったのはひっくり返ったトカゲだった。その表皮は乾いていて、全身がひび割れていた。


「この甲羅、石ですか」

「そだよ。トカゲを巨大化させて石背負わせて亀にした。でも手足がなんかぬめぬめしてて亀っぽくなかったから、水分ぬいた」

「……無理なく改造した方が、チートを最大限発揮できるのでは」

「僕のテンションが上がらないじゃん」


 当然の成り行きみたいに言いながら、今度はポケットから魚を取り出した。ダンゴムシをポケットに詰め込んでた幼稚園の友達をヤマナミは思い出した。だがラクは水魔法を魚にまとわせていたので、魚は生きていた。

 生きているだけだったが。


「じゃ、いってくるね。頑張ってあいつらを殲滅してくるから」

「お手数おかけします」

「ははっ、ユキノのこと?別に大した労力じゃないからいいよ」


 ラクに投げられた魚は、風船が膨らむみたいに大きくなって、あっという間にクジラになった。

 今度はビーム以外に何が搭載されているんだろう。


「女子ってさあ、カブトムシの角ちぎってクワガタにアロンアルファでくっつけないんだよね?楽しいのにもったいないなあ」


 ミルウォーキーを発動して生き物を改造するとき、ラクは楽しそうだ。

 男子でもする人少ないと思いますよという言葉をヤマナミは飲み込み、クジラの中に入るラクを見送った。



―――ファクトリー建築棟 屋上―――

「天才だったんですよ、私」

「自分で言っちゃった」


 ええ、事実ですから、っとニコはラーメンをすする。ネッドラッドたちみたいに現代日本の料理を初めて見たわけじゃなかったから、特にリアクションはなかった。

 トマトとピーマンだけのラーメン。意外といけるな。トマトを厚めに切ったら肉っぽいし。肉っぽいな。うん、肉っぽく感じてきた。


「8歳の頃、花を触っていたら突如花輪になりました。何が起こったのかわかりませんでした」

「すっげ」

「自分の能力だと認識するのに、花輪が5個要りました。理解した瞬間、号泣しました」

「なんで」

「お花をちぎるのは趣味じゃありませんから」

「可哀そうってこと?」


 俺の確かめにニコは首肯する。

 なるほどね。


「成長していくにつれコントロールできるようになって、ついには土を掬うだけで釘が作れるようになりました」

「お、すげえな。魔法じゃん」

「……魔法ですよ」


 魔法だった。そうだった。うっかりビートル人が出てしまって、ニコに妙な顔をされてしまった。

 ファクトリーの夜は静かだ。昼間あんだけ機械が爆音を上げていたせいか、余計にそう感じる。


「数年間、里で自分の力を磨いてました。壊れた人の家を直したり、鍬を直したり、道を直したり‥‥‥」

「直してばっかだな。ムカつくやつに釘ぶん投げたりしねえんだ」

「性格悪いですね。さすがビートル人」


 ドワーフってのはどうやら争いを好まない民族らしい。

 そうだったっけ?ニコの性格か?

 まあいいや。


「で、ある時。私と同じくらいの少年少女がやってきました。カクラでもロンドでもない人族でした」

「ビートル人」

「彼らが通り過ぎた後には何も残っていませんでした。家も人も、国も」

「世界征服。ニコの里も征服しようって来たわけか」


 ビートル人がカクラを滅ぼしてビートルバムを建国した後。世界征服を開始した時の話。そのなかでニコの住むドワーフの里が狙われた。


「いえ。彼らはハートランドに興味はなかったんです。チート生活がしたいだけなので、彼らは開拓には興味が無いんです」

「ハートランド?」

「カクラ王国領の上です。この世界に残された未開拓地で、私の里はその入り口にあったんですよ」

「へえ。変な病原菌とかいそうだな」

「喋る龍ならいますよ」


 え、行きた。龍と喋りた。俺なら通訳なしでいけるで。


「話を戻します。ビートル人は私の能力に目をつけました。戦力になるとふんだのでしょう。私を勧誘してきました」

「そこ勧誘なんだ。てっきり拉致かと」


 俺の疑問にニコは少し苦しそうな顔をして、


「はい。ビートル人についていくかどうかは私の自由意志でした。彼らの言う現代日本の技術が、作り出すものが、何より魅力的でした」


 と一息で話し切り、箸をおいた。


 やっぱトマトは肉じゃねえ。


「彼らの作るものを自分も作ってみたい。それだけでした。正直、ビートル人の世界征服って人族だけの問題ですし、ドワーフの里にカクラもロンドも侵略してきたことがあるので、私たちにしてみれば一緒なんです」

「異世界でくらい、いい国と悪い国が闘ってほしかったんだが」

「魔王なんていませんよ。何回も聞かれましたが」


 ニコがスープを飲み干した。どんだけ似せようと、やっぱり味はどっか違うんだよな。なんて含みのある言い方してみたが、俺は向こうでもスープは飲み干さない。


「やっぱ味微妙に違うんだよな」

「そうなんです。電池の時も言いましたが、ビートル人の誰も実際に作ったことはなかったんです。仕組みを知ってる人はいましたが、ガソリンを爆発させて車輪を転がすと教えられても再現しようがありません」

「あいつら高校生だもんな。どうせ普通科だろ」

「ファクトリーでいうと、自動馬車、自動配膳機、エレベーター。それでも彼らのイメージは刺激的でした。魔法とこの世界のものでどう再現するか考えるのも楽しかったですし」

「楽しかった、ねえ‥‥‥。お前の技術がこのファクトリーを支えてる」


 俺の一言で、ニコは目を逸らした。

 ‥‥‥非常に重苦しいんだが。

 俺の性に合わない空気だ。

 だが聞かないといけないだろ。自分のしたことについてどう思ってるか。

 シリアスな展開も少しは必要だ。


「……そうですね。罪悪感、それが引きこもってる理由かもしれません」


 聡明だな、こいつ。


「ただそれでも、これだけは誓ってほんとです」

「なに」


 ニコが俺をしっかりと見据えている。


「武器は作りませんでした。人を殺すために能力は使いません」



 夜空を見ながらいつの間にか眠りに落ちていた。

ヒーリングファクターを手にした今、現代日本にいたときより睡眠時間が少なくて済む。

 だが。


「ベンチの手すりは枕にはなんねえな」

「あなた帰ったんじゃないですか」

「おん?結構キューティーなパジャマしてんじゃん」


 家の前のベンチに寝そべってる俺を見てニコが驚きの声を上げる。昨日見送ったやつが家の外で寝てたらそりゃ驚きもするわな。


「だって今日も自転車乗るじゃん」

「またですか。飽きもせずどうして」


 俺がその疑問に答えようとしたそのとき。


 ファクトリーにサイレンが鳴り響いた。

いかかでしたでしょうか。


こんな時代やから。

こんな時代やから‥‥‥!


みんなで支え合って生きていかなあかんのや‥‥‥!


私の作品をあなたにおもしろいと思っていただけたら幸せこの上ないです。

いいね、コメント等是非お待ちしております。


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