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170話 やるかやられるか

 俺は側頭部を思い切り畳にたたきつけられた。

 ごみを捨てるみたいに雑に投げつけられた。


「ゲ……」


 いつもなら痛みを感じる間もなく傷が回復するのに身体はいつまでもひしゃげたまま。

 首から上が畳に突き刺さって、左目が顔から飛び出して床下を見つめていた。い草が口に入ってるのが気になって、舌をもぞもぞ動かしたら奥歯がぼろぼろ抜けた。

 そして腹には相変わらずワイヤーが突き刺さっている。その痛みがズキズキ来るから、俺の首はまだ千切れてない。


「顔面がひしゃげてくれたおかげで、首の骨がいかなかったのはせめてもの幸運だな……」


 なんでフマは追撃をしてこないのかわかんねえけど、してこねえならいいや。

 俺はワイヤーが刺さった辺りの腹筋に魔力を込める。それをロケットみたいに噴射すれば、身体からワイヤーが強制的に引き抜かれるとともに、フマから距離がとれる。


「……治った」


 逆再生みたいに折れた鎖骨も飛び出た眼球も裂けた腹も元に戻って、俺は元気に2本の足で立っている。


「ユキノ!聞こえる!?さっきも言ったんだけど、フマの左手は触れたものの能力を奪うの!!」


 いつの間にか中庭に移動したリイが俺に叫んでいる。

 いや、違う?


「お前、リイか?」


 ひょいひょい木と屋根を飛び移っている運動神経の良さは確かにリイだが、顔がおかしい。片目だけが少女マンガみたいに大きくなって、頭には犬の耳がついているし、鼻筋が線みたいに細くなっている。

 まるで整形手術をやりすぎた人みたいだ。いや、ふざけて作ったMiiというべきか。


「そだよ!あいつのせい!なんか、【ふぉとしょ】って言ってた!」

「【フォトショ】。画像加工アプリか……!」


 リイが屋根と庭の木を反復横跳びしているのは、下からヤマナミがリイを撮影しようとスマホを右に左に追いかけているからだ。


「私の【フォトショ】は現実の顔も加工される。片目だけ大きくなれば視界がおかしくなるし、鼻が細くなれば呼吸がしづらい」


 そう言ってヤマナミは俺を撮影する。次の瞬間、両腕が明後日の方向にひしゃげた。


「そりゃパーツも加工できるんだよな。だが、能力と能力のぶつかり合いなら、気合いで……ふんぬ!!」


 こいつのチートと俺のチートは珍しいことに正面からぶつかり合う。

 だから気合いを入れたら、小学生が描いたみたいな曲がり方をしていた俺の腕も真っすぐに戻った。


「時間稼ぎにもなってないね」

「しまっ……」


 俺を撮影していた隙にリイの接近を許したヤマナミが回し蹴りの餌食になる。リイのつま先がヤマナミの顔を、目の前に掲げていたスマホごと蹴り飛ばす。ヤマナミの身体は剪定された低木に矢のように突っ込んで、塀にぶつかる音が庭に響いた。


「つま先なんて、現代日本の格闘技じゃ使わねえぞ」

「なんで?裸足なの?」

「反則だからっていうか、総合で見かけないからっていうか」

 

 靴履いているならつま先の方が脛より痛くないし威力もあるよな。

 それが当然という顔をして、リイは同じく剪定された木の枝に立っている。


「ヤマナミ」

「大丈夫ですよ。【フォトショ】は、自分にも使えます」


 フマの呼びかけに返事して、頭についた枝を払い落しながらヤマナミが立ち上がる。乱れた髪をスマホのカメラで直しているように見えるが、ちがう。鼻やまぶたなど、蹴られたときはかなり痛々しかったようだが、すでに【フォトショ】のおかげでほとんど治っていた。


「ありゃ。闘志を折る気で蹴ったのになぁ」

「ウララさんの受けた屈辱に比べれば大したことないんで」

「へへぇそれはそれは……にらめっこしよっか」


 その言葉を聞いた瞬間俺は慌ててリイから目を逸らす。

 今回の目の色は黒だった。なんかヤバい雰囲気がする。


「あああああああ!!!!!」


 とっさに目を逸らしたものの、視界に入れてしまったヤマナミが頭を抱えて絶叫する。

 何の能力かはわかんねえけど、ただ片目が加工されているせいで本来の威力は出せてない。


「性格の悪い能力だ。どこへ行く?」


 自分の目に飛んできたリイの魔眼の波動を左手で消滅させたフマ。

 そんなフマの背後に回る俺。


「どうしてさっき俺を攻撃しなかった?」

「あれでそのまま死ぬくらいのチートなら不要だ」


 魔力を操作して足から飛ばす。相手を切り裂く三日月形の魔力障壁は、フマの手に弾かれて消滅する。

 どうせそうなることはわかっていたが、同じ攻撃を俺は繰り返す。


 この闘いの勝利条件は2段階ある。

 ベストなのはこいつら2人を倒して、逆転送装置を破壊する。けど、いくつか考えなきゃいけないことがある。その中で一番は俺の持っている黒のフロッピーとフマの持っている赤のフロッピーのどっちが本物なのか。

 もしかすると両方必要かもしれないんだよな。尻ポケットに入れたフロッピーは、さっきたたきつけられ時にも壊れなかった。特殊な魔法が込められている。

 フマはフロッピーをどこにしまっているかな。


「角度を変えて斬撃を飛ばしてきたって、俺がフロッピーを庇う動きをみせはしないし」


 あ、バレた。


「距離を取って左手から逃げようとするやつぐらい想定済みだ」


 そりゃそうだよな。と思った瞬間、フマの左肘から先がミサイルみたいに飛んできた。

 早い話がロケットパンチだ。

 俺が放った斬撃も突破して俺の右胸の下に衝突。

 そのまま身体ごと持っていかれて、天井に激突した。


「パンチじゃねえじゃねえか!」


 後頭部から髪を伝って血が顔に流れてくる。板に頭をぶつけた。その怪我が全く治らないし、左手の指がろっ骨の間に刺さっている。

 あいつ、グーじゃなくて指を立ててロケットパンチしやがった。だから衝撃で身体に指が刺さったままだし、俺は天井に貼り付けになっている。


「パンチで吹き飛ばしちゃ、能力無効が解けちまうもんな……」


 だから強引に引きちぎった。皮膚も千切れたが、その瞬間から治る。

 飛んできたフマの左腕を持ってみて気が付いた。


「ロケットでもねえ!」


 腕は自立して飛ぶのではなく、フマの二の腕とワイヤーでつながっていた。

 つまりフマはワイヤーを巻き取って移動ができるってことで……。

 気づいた時にはもう遅かった。右手にカッターナイフみたいなかたちの変なナイフを持ったフマがワイヤーを巻き取って急接近してきて、左腕をもう一回俺に押し付けると同時に、心臓にそのナイフが突き刺さった。


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