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160話 PKそして大歓声

「ほおおおおお!?!?!?!?」


 いきなり目が巨大になったアキナがパニックになっている。


「おおおおおおお!?!?葉っぱの先に止まっている虫の目まで見えるぞおおおおお!?!?!?」

「よしアキナ、なんか逆転できそうなものを探せ!」

「ええええええ!?!?!?」


 アキナの長所はなにも剛速球だけじゃない。

もう1つの特技である目の良さ。

 それを手品で強化した。


「まるで付与魔法だな……使い手が変わればチートの使い方も変わるか」


 食虫植物の向こうでヒイロが感嘆している。

 おそらくユタアキラはこんな見方を強化する使い方をしなかったんだろう。


「もっとも、そんな小細工を弄したところで僕は探せないが」

「おおお!!なんか目が慣れてきた!!もっと見晴らしのいいところから探したい!!」

「させるか」

 

 再び空に上がろうとした俺を捕えようと、どこからか蔓が飛んできた。

 だが消失マジックで消して……。


「アキナ!!」


 死角からアキナを抱える手をはたかれて、アキナがゴロンと地面に落ちていった。


「やばい!!!首が折れ……」


 脳天から地面に激突したアキナ。脳天でしばらく逆立ちしたあとぼてっと顔から地面に倒れた。


「受け身が取れない!」

「サボテンが飛んできたぞ!!逃げろ!」


 首だけになったアキナに容赦なくサボテンが襲い掛かる。

 手を伸ばしているが、ぎりぎり間に合うか……。


「どっせえええええい!!」


 アキナが転がってる地面が破裂したみたいに大きくなって、アキナを俺のところまで飛ばしてくれた。

 おかげで間一髪キャッチできた。


「今のは?」

「なんか、できた!ニコっぽい感じで!!」

「おっけー感覚派!」

「でね。今地面に横になって思い出したんだけど……」


 アキナは俺に植物園の植物についてと、思いついた秘策について話してくれた。


「おっけ」

「軽っ!ユキノのほうこそいいの?」

「俺はいいさ。お前にしかできないことだ。協力するしかないだろ」


 ヒイロは俺に殺傷性のある植物を投げつけ続けているし、俺はそれを消し続けている。

 アキナのアイデアはこのジリ貧な状況を打破する素敵なものだった。

 それに、作戦を語るアキナの目はキラキラしているしな。


「何こそこそ話してる?愛でも囁いてるのか?まるでこっちが悪役みたいで」

「そっちが悪役だろ」

「視点が偏りすぎだ。俺たちが悪役ならブラックバスは大悪党になるだろう。悪いのは輸入した人間の方だ」

「お前には魚並みの知能しかねえのか。静かにしてろよ。もう少しでお前を倒すんだから」


 食虫植物の向こうでヒイロがイラっとした気配があった。

 だがそんなことは気にせず、俺はアキナを足の前に置く。まるでPK前のサッカー選手みたいだ。

 ていうか、そのつもりなんだけど。

 ちなみにいまだに少女漫画みたいに目がでかくなっている。

 その視力、推定100。


「じゃあ、頼んだ」

「頼まれた!!っていうかユキノのほうこそ……頑張って!」

「はっ、この状況で何をする気だ。僕の物量で押しつぶしてやる」


 こちらをふりむくことはできないアキナなのに、なんだかこっちを見てサムズアップされた気がした。


「いくぜ!シュート!」


 数歩離れたところから助走をつけて、アキナの頭を思いっきり蹴り飛ばした。

 魔力を乗せて、アキナが目を回さないよう配慮した無回転シュート。

 アキナの頭が、サボテンとトレントと何重にも重なった蔓を貫いて森の奥に消えていった。

 俺たちをやじっていた食虫植物があっけに取られている。


「囮作戦ね……君も結局仲間を切り捨てた。極限下の状況ではみんな悪になる。ただそれだけの話だ」

「勘違いしてんじゃねえ。震えて眠れ」


 飛んでいったアキナがくり抜いた穴を脇目に、俺は飛んできたサボテンを蹴り飛ばす。

 足に突き刺さった針を引き抜いて、炎をまとわせて新たに出現したサボテンゴーレムの眉間に投げたら、ゴーレムは炎の中で崩れ落ちた。


「いや違う。【マジカルミステリーツアー】があの生首女に移ってる!そんな真似ができるなんて聞いてないぞ!」

「単なる手品だよ。ユタアキラなら絶対やらねえだろうけど」


 さてと。しばらく俺は【全言語理解】しかない状態でこの枯れた植物たちを相手しなきゃならない。

 お花たちと話し合うのは無理だな。死んでるから。


「どうしてだ?どうしてそんな自己犠牲を?そういう宗教の信者か?」


 食虫植物が首をかしげる。

 器用なことができるんだな。こっちは飛んでくるサボテンを避けるので忙しいんだけど。


「お前だって昔は日本人だっただろ。同じ宗教かじったことぐらいあるだろ」

「あの頃から僕は理解できなかったよ。どうして自分より他人を優先するのかなんて、カクラにいる僕たちにはない価値観だ」

「それで、よく、国がまとまってるな!」


 回転蹴りでサボテンゴーレムを蹴飛ばして、絡んできた蔓を魔力で弾き飛ばす。

 サッチャンに【ヒーリングファクター】を取られたときは隣にナツメがいたから気にならなかったけど、今回は徐々にダメージが蓄積していく。

 相変わらず足にサボテンの棘が刺さってるし、それに。


「毒鱗粉……視界がかすんできた」

「ははははは。気づくのが遅いよ。手品も【ヒーリングファクター】もない状態じゃもってあと30秒ほどだろう。僕は生首女も見えているぞ。さっきから土に顔をこすりつけたまま一切動かない。僕の勝ちだ!」


 朦朧とした頭にヒイロの高笑いが響く。

 今にも崩れそうな膝を手で支えて、俺はうるせえパックンフラワーを睨みつける


「お前の【LOVEマシーン】は操る物が遠くに行くほど、挙動が粗くなるだろ。ちゃんとよく見てみろ。偽物だから」

「なにっ!?」

「見つけた!!!!!!」


 パックンフラワー越しにアキナの声。そして次の瞬間、アキナのでもヒイロのでもない耳をふさぎたくなるような絶叫が聞こえてきた。

 スピーカーのパックンフラワーも耐え切れず、口を限界まで開けたまま痙攣して地面にぽとっと落ちた。

 その悲鳴は何十人もの女性が一斉に悲鳴を上げたよりもさらに心臓に悪くて、植物園のガラスをビキビキと揺らす。木という木からも虫や小動物がぽろぽろ落ちてくる。

 まさに死の絶叫だ。

 マンドラゴラ。

 こんなの至近距離で聞かされるなんて、想像するだけで嫌だ。



いつもお読みいただきありがとうございます。

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