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153話 そうまでして帰りたい理由は?

「京都の有名なお寺みたいですね。今まで入れなかっただけあります」


 カクラ花園。リイの父親であるケンリウが作った自分だけの庭。

 そこはヤマナミの言う通り、俳句でも読めそうな風流な場所だった。


「カクラの娘、逆転送装置の起動部品はどこにある?」

「…………」


 思わずヤマナミが風景の写真を撮っている奥で、答えの返ってこない問いをフマがリイに投げかけている。

 リイは明後日の方を向いたまま答えない。


「……少しだけ視線が、動いたな。起動部品は庵の中か」

「……!?」


 フマの観察が的を得ていたので、リイは思わずハッとした顔をした。


「行くぞヤマナミ」

「あ、はい」


 庵は2階建てだ。1階には4部屋あって、襖で仕切られているから玄関から奥の中庭まで見通せる。

 いい香りのする畳に遠慮なく土足であがるフマ。

 部屋の真ん中に立ち左右を見渡して、それらしい隠し場所がないか探す。


「【ロック】が軽くなった。もう抵抗する気がなくなったのかな」

「油断するなよ。腐ってもカクラだ」


 縛ったリイを家の真ん中の梁に吊るして、2人で手分けして家探しするフマとヤマナミ。

 フマは淡々と探している。義手も本来の腕のように使いこなして、意外とこまめに箪笥を開けたり、押し入れを開けて天井を覗いたりしている。

 何もなかったので押し入れをぱたんと閉めると、押し入れの上に飾ってあった額縁がフマの脳天に落下してきた。


「あっ」

「……」


 ちょうど額縁の角が脳天に突き刺さったのにフマは眉をピクリともさせない。

 ただ当たった髪を生身の方の手で撫でて再び探索作業に戻った。

 その時ちらりと横目でヤマナミを見たので、ヤマナミはずっと見ていたのを咎められたのかと思って、慌ててそのへんの引き出しを開けてみたりした。


「チートの副作用だ」


 フマがは目だけをヤマナミに向けて、それだけ呟いた。

 それだけ言えばわかるだろ?というオーラが背中から立ち上っている。

 そのオーラとさっきの目つきで、ヤマナミはすっかり委縮してしまった。


(怒られてはいないんだろうけど……目つきがきついから感情がわからない……)


 そもそもあのラッキースケベからして印象は正直よくなかった。不思議と思い出しても嫌な気はしないが、それでも緊張感は今に至るまで解けていない。


(どうしよう。なにせフマさんはナンバーワン。アシハラさんにだってため口きける人だし。なるべく距離を詰めておきたいっていうか……)


 ちらっとヤマナミはリイを見る。見るたびに目つきが鋭くなっている。

 父親が死んだと察したときは相当ショックを受けていたが、もうすでにメンタルを切り替えているようだ。

 ヤマナミが目を逸らさない限り、リイはずっと睨みつけてくる。

 やっぱり異世界の人間は野生動物みたいでたくましい。隙を見せたら噛み千切られそうだ。こっちは2対1なのにヤマナミは心細くなる。


 と考えていたらふっと疑問が思い浮かぶ。

 あれ?じゃあ1番のフマさんってもう寿命が残っていなんじゃ……。

 それで必死に逆転送装置を探しているんだろうか?

 頭に浮かんだ疑問が気になり、起動部品探しに全然集中できないヤマナミ。


 嫌われたら私の命が危ない。

 でも聞きたい。

 それに、人と信頼関係を構築するには何よりもその人の人となりを知ることが大切だ。


 意を決したヤマナミは人懐っこいポメラニアンみたいにとことことフマのそばまで近づいていく。

 てっきり避けられるかと思ったがそんなことはなく。

 かといってなにか愛想してくれるわけでもない。


「なかなか、み、見つかりませんね」

「……まあ、根気よく探すことだ」


 そっけない。フマはそっけない。

 ただ嫌われているわけでないことは確かだ。それは空気感からなんとなくわかる。


「あの……その……」

「なんだ?」

「逆転送装置ができたとして現代日本に帰れば、私たちの寿命が延びる、んですか?」


 もう疲れたので止めたいですのニュアンスだと誤解されないよう、イントネーションに気を使って喋るヤマナミ。

 フマは別にそんなネガティブな取り方をしなかった。

 畳をめくりあげて持ち上げたままの姿勢で答えてくれる。


「延びるかどうかはわからないが、少なくとも止まる」

「な、なるほど」

「俺は少なくとも若返りはしないと思う。No.49の【ヒーリングファクター】があれば変わるかもしれないが」

「俺は?」

 

 俺はといったのがヤマナミは気になった。ということは誰かは若返りたいと思っているのだろうか。

 もしかしてルナさんだろうか。特に他意はないがそんな余計なことが思いついた。

 だがフマがヤマナミは疑問を聞いた瞬間バツが悪そうに顔をそむけたのに気づいて、ヤマナミはしまったと思った。

 沈黙が訪れた。


 きっと詮索してはいけなかったことなのだ。No.0のアシハラさんとNo.1のフマさんとNo.3のアオミさん。この3人は建国創成期からのメンバーで、この人たちしか知らないことがたくさんある。

 

(めっちゃ気まずい……)


 時間にすれば数秒くらいのことだがヤマナミには永遠に感じられた。


「見つけた」

「え?」


 畳の下の板を外したフマがそう呟く。

 ヤマナミも床下を覗き込むと小さな箱が置いてあった。

 蓋には龍のレリーフが彫られていて、その指は5本。

 王の持ち物であることを表すものだ。

 フマが箱に手をかけると、箱は何の抵抗もなく開いた。

 中に入っていたのは、


「フロッピーってやつですかこれ?」

「よく似ているな」


 かつての日本のあちこちに存在したフロッピーディスクによく似た金属のパネルだった。

 ただ表面には魔法式がびっしりと書き込まれていて、他だものではない雰囲気を放っている。この解読はさすがのフマでもできない。というか、ビートル人たちはこういう異世界らしい物事はわからない。


「くくく」

「?」


 最初誰の声かと思った。

 それがフマの笑い声だとわかったとき、ヤマナミはとてつもなく不気味な気持ちになった。

 その笑いが、心から喜んでいるようにも怒りすぎて逆に笑みがこぼれているようにも見えたからだ。

 あるいは悲しすぎて笑みがこぼれたようにも


「あ、あの、フマさん?」

「これで、これでようやく、あいつらに復讐ができる!くはははははははは!!」

「ひっ……」


 まるで昔見たサイコホラーに出てきたシリアルキラーみたいでヤマナミがビクッとしたのと、リイが拘束を解いて明確な殺意をもって向かってきたのとは同時だった。




いつもお読みいただきありがとうございます。

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