表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/170

14話 No.34 ヒャクイチ

ヒャクイチの特技は音ゲーです。現代日本にいた頃は不良のいないゲーセンに結構な頻度で出没していましたが、同じクラスのイケてるやつがUFOキャッチャ―とかしに来たときは息を殺してました。

 ヒャクイチは痩せた少年だった。

 少年か?

 髪がベタベタしてて服装に無頓着だから若々しさがない。

 でも肌は白くてもちもち。

 見ようによっちゃ30代くらいに見える、そんな容貌。

 別に10代の少年少女を転移させなきゃいけないルールもないんだし、30代でもいいんだけど。


「お、お前。僕の嫁候補じゃないな」


 お、さすがビートル人。

 ネッドとラッドの闘いで把握できたが、転移ボーナスのおかげで俺たちの身体能力は高い。

 だからさっきの膝蹴りもネッドラッドが喰らえば、そのまま昇天する威力だ。

 だが、ヒャクイチには崩れたマンガやフィギュアの中から飛び出してきて、うろたえる余裕があった。

 そして俺も体が軽くなっていた。


「なるほどな。確かに体が楽になったわ。借金はしないに限るな」

「そ、それが狙いだったのか、それにお前‥‥‥お前‥‥‥男…」


 部屋が散らかったのと俺が男だったのとに混乱してるが、やがてそれらはすべて怒りに変換されていく。

 勢いよく俺に掴みかかろうとしたヒャクイチだったが、自分の積み上げたフィギュアやマンガに足を取られ、こけた。


 拍子抜けるな。


 てっきり俺はビートル人同士で激しいバトルを繰り広げるのかと思ったんだが。

 俺はこけたヒャクイチの手を掴んで捻る。


「ぐっ、離せ!汚らしい異世界人が触るんじゃない!」

「異世界人はお前だろうが」


 ビートル人のプライドが垣間見えたが、さておき。

 ヒャクイチの細い腕を捻って組み伏せる。

 肩甲骨の間に膝を載せると、ヒャクイチの口から「ぐふぅっ」ッと間抜けな音が漏れた。


「えーっと、なるほど、34ね。後半ってことしかわかんねえな」

「後半?くっそ、離せ!」


 34だからこの弱さなのか?

 すると俺の手を振り払ってヒャクイチがポケットからスイッチを出して押した。その瞬間、屈強なボディーガードが入口に集まってくる。


 だいたい11人くらいか。


「お前らどこにスタンバってた?っていうか、そんなにすぐ来れるなら俺がドア開ける前に止めろよな」

「こいつを殺せ!」


 物騒なことばを叫んでヒャクイチが走り出す。追いかけようとしたが、ボディーガードたちに囲まれて進めない。

 ミノ並にガタイのいい人間たちがプレッシャーをかけてくる。

 ほんとに人間かこいつら。


「……わかった。一旦離れてくれ。逃げないから。なにより、男同士密着するなんてむさくるしいだろ」


 取り囲んでプレッシャーをかけてくるボディーガードたちに適当なこと言いながら、俺は足で床を探って目当てのものを探す。

 えーと。なるべく角張ってるものがいいな。だとすると。


「そうそう、もっと離れた方がいいな。そうだ、せっかく11人いるんだから、こう、4-2-3-1って感じで並んでくれないか」


 そっちの方が一撃で倒せるんだけど、そんな自分勝手な希望を聞き入れてくれるわけもなく、ボディーガードたちは俺を取り押さえようと動いた。

 まあいいや。


「シュート!」


 俺は床に転がっていた名前も知らないヒロインを足で宙に浮かし、フォワードの位置にいるボディーガードに蹴り飛ばした。


「うげええ!」


 全盛期の誰かみたいな美しい俺のシュートは美少女を矢のような速度でボディーガードの顔面に突き刺すと、そいつは悲鳴を上げて倒れこんだ。

 ロボットのフィギュアより美少女フィギュアのが踏むと痛いんだよな。髪の毛とか服とか尖ってるし。


「これがサッカーだ!!ビートル人の誰も広めてないのか?」


 倒れたそいつを越えて他のボディーガードたちを躱しながら、俺はそこら中においてあるフィギュアやマンガやらゲーム機などをボディーガードにシュートしていく。


「おい、ヒャクイチ!!逃げんじゃねえ!」


 ボディーガードを倒して廊下に出ると、ヒャクイチがエレベーターに向かっているのが見えた。


 まずい、俺もこの建物の構造は把握してない。なんせ外からよじ登ってたからな。


「きゃはははは!遅かったな馬鹿め!」


 ヒャクイチは勝ち誇った笑みを浮かべて、走り出した俺をあざ笑った。こいつ自分が有利な状況になると調子乗るタイプか。

 だが。


「あれ、あれ、動いてない。どうして。おい、おい、早く来いよ!」

「残念だったな」


 どれだけボタンを連打しようが、エレベーターはうんともすんとも反応しない。

 しつこくボタンにかじりつくヒャクイチの髪を掴んで引きずり倒し後頭部を床にぶつけさせたあと、外から下を覗く。


 ネッドとラッドが今まで散々回していた棒を持ってこちらに振っていた。


 俺も元気に振り返す。

 見えてねえな。ガラス割るか。

 改めてネッドとラッドに向かって手を振る。


 「危ねえじゃねえか」て怒鳴ってるのが聞こえたが気にしないでおこう。


 地上を歩くだけじゃなく、上から見てみないとファクトリーの位置関係は分からない。あの奴隷棒がビルの真下にあるってことに気づいたらエレベーターがあることはすぐ連想できた。


「さすがにエレベーターの仕組みまで再現することはできなかったってわけだ。まあ、俺たちって当たり前に使ってるものの仕組みをいちいち考えたりはしないもんな」

「……俺たち?」


 改めてみるとこのエレベータークッソ古いな。さすがにチートといえど日本の最新エレベーターを再現することはできなかったんだな。ただ、だからって内装まで雑居ビルの狭いやつみたいにしなくてもよかったと思うんだが。

 物理もへったくれもないシンプルな滑車で動かしてるから、だからあの奴隷棒はあんなに重たかった。


「お前、もしかして転移者なのか?」

「あん、そうだぞ」


 押さえつけられた首を動かして聞いてきたヒャクイチに俺はあっさり返事する。ついでに左手に刻印されたナンバーも見せた。


「49?貴様があの不良品か!お前、アシハラ様に逆らうつもりか!!?」

「誰だそれ?」


 反射的に聞き返して、思い出した。確か今回の異世界召喚はクオリティ重視でってカゲロウたちに指令出してたやつか。


「俺を召喚した元凶の野郎かよ。そいつがどうかしたのか」

「どうかしたのかだと!?お前、あの方に逆らってこの世界で生きていけるとでも思ってるのか!」


 ヒャクイチが腹に力を込めて叫んでいるのが、押さえ込んでる膝から伝わってくる。


「そんな怒鳴るほどやべえやつなのかよ、そのアシハラってやつ」

「何にも知らないんだな、まったくこれだから不良品は‥‥‥」

「……で、誰なんだよアシハラってのは。核心を避けた会話ばっかしやがって、そんなんだから引きこもりなんだよお前」


 全然アシハラについて説明してくれないから少し煽ってみたのだが、ヒャクイチは黙り込んでしまった。

 らちが明かねえ。


 俺はヒャクイチを立たせて、首をロックして窓際まで引きずっていく。

 ヒャクイチなりに抵抗するが、俺ほどじゃない。現代日本でモヤシのやつは転移してパワーアップしても相対的にモヤシのままだ


「おい、何をする、離せ、離せ、俺に光を浴びせようとするな」


 すでに出勤時刻となって窓から朝日が差し込んでいた。地上100メートルなんて現代日本じゃそうでもないが、なんせここは中世ファンタンジー風の異世界。地の果てまで続く平野が見える。


「……お前、何がしたのか知らんが、もしこの世界の仕組みに逆らうつもりなら、命はないと思えよ。せっかくビートル人としてこの世界に来れたのに俺たちに逆らうなんてどうかしてる」

「そもそも本人の同意なしに異世界に引っ張って来る時点でどうかしてるだろ」


 さっき破ったガラスを完全に割って、俺とヒャクイチは窓際に出る。


「多分同い年くらいだろうけど、お前ハイパーインフレって学んだか。物の値段が爆上がりして貨幣の価値がゴミクズになるってあれだ。で、そのためには物不足になってもらわないとな」


 ほれっと俺はビルの下を指さす。


「なんだいったい‥‥‥ってリイじゃないか。あいつにだってリボルビングはかけてある。魔眼も満足に使えない今のあいつはとるに足らない!」

「だと思ってな。超配達ランチくんを捕まえておいた。にしても電池だのエレベーターだの、お前の知恵じゃねえよな」

「な……この、裏切り者があ!」


 リイの決まった表情から察するに電池で結構回復できたらしい。さすがに元本まで返済できたとは思えないが、それでも。

 ほんの少しの間だけならいけそうだ。

 リイの目が赤く光りはじめる。


 赤の魔眼は、攻撃の魔眼。

 この魔眼で見つめられると凶暴性が増す。


 下にいるネッドもラッドたちはすでに目を閉じている。


「なるほどな、読めたぞお前の計画が。どうせラッダイトでも起こそうってんだろうが、まさかファクトリーの工員1人1人に魔眼をするわけにもいかないだろ。詰めが甘いのはお互い様だ」


 腕をねじり上げられながら勝ち誇ったようにヒャクイチが喋る。もうすぐ出勤時間だ。ここからだとよく見えるが、ファクトリーの入り口にはすでに工員たちが現れ始めていた。

 まるで朝の品川駅のように。


 この人数に赤の魔眼をかければ大パニックを起こせるが、ヒャクイチの言う通りいちいち魔眼かけるなんて時間がかかりすぎる。


「だからお前をベランダに連れてきたんだ。エレベーターはお前が逃げないように、壊さざるを得なかった。だから、リイを引き上げるにはこうするしかなかった」

「引き上げる?お前いったい何の話をしてる?」

「俺も1人で来たわけじゃねえってことだ。セーレ!」


 俺は上に向かって叫んだ。

 その指令を待っていたかのように、目の前に一本、鎖が垂れてきた。


「ごめーん。これくらいしか伸ばせなかった!」

「いや、充分だ」


 作戦的にリイの魔力回復が最重要だったために、セーレはランチくんの電池をあまり使えなかったようだ。鎖を100メートル出現させるほどには魔力を回復していなかった。


「これもみこして、俺はお前をしばいてた」


 俺は鎖を握って魔力を送り込む。ヒャクイチをしばいて魔力を取り戻した俺とセーレの魔力を合わせたことで、鎖はリイのもとに届いた。


「なんで私はえれべーたーに乗れなかったんだ?」

「お前が見えるところにいないとカクラ軍たちが働いてくれないだろ。ついでに、ほれ一発」


 セーレの鎖に捕まってビルの屋上まで行く途中、リイは俺が差し出したヒャクイチの顔面にビンタを食らわせた。

 鎖に捕まりながらもすげえ腰の入った一発。身体能力の良さが垣間見えるな。


 直後。


 朝焼けにつつまれたファクトリーを赤い光が覆った。

いかがでしたか。


すこしでも

・おもしろかった

・続きが気になる


と思っていただけましたら、思ったまま眠ってください。

ブックマークや評価、感想も欲しいけど、かくいう俺もおもろかったからって何もしないし。

なんならこの欄は流し読みするだけだし。

みなさん明日も早いだろうしいちいち感想書いてもらうのもな‥‥‥あなたが明日も読みに来てくれればそれで、ええんや‥‥‥。


いや、やっぱください。感想欲しいっす。

あなたのポイントが励みになるんです。そういえば前作も嬉しかった。俺も書きます、だからあなたも書いて。

是非お願いします…!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ