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132話 カジノへGO

 ミリゥの海流操作によって順風満帆に俺たちはルビンに到着することができた。

 ルビンはタオユエンと違って海沿いにあるわけじゃない。

 内陸にある都市で、黄河みたいな大河をまたぐように作られている。

 と、船の上でカクラ姉妹から聞いた。


「というわけで、河を上るのにも数日かかるよ」


 リイの言う通りルビンが見えてくるまで長かった。

 その道中で予想外のニュースが飛び込んできた。


「俺がテロリストになってんだけど」


 川沿いの小さな村に立ち寄った時、集会所的なところの掲示板に俺の写真が貼られてある。イタミが撮った俺の顔。その下には指名手配の文字。

 俺の指名手配書が村の掲示板のど真ん中に鎮座していた。


「『タオユエン暴動の首謀者』、『ワルシャ大虐殺の犯人』」

「うわあ極悪人ですねえ。懸賞金がスタンピード討伐の報酬よりも高いです」


 どうやらこの懸賞金はかなり高いらしい。結構な極悪犯罪者だ。


「ねえねえ!!こっちに私たちのもあるよ!!!」


 アキナの叫び通り、俺の手配書の下にセーレたちのも貼られてある。

 セーレ、リイ、アキナ。

 俺と同じくタオユエンでイタミに撮られた写真が使われて、「テロリスト ユキノに与する者たち」とまとめられている。


「なんでこの写真使うかな」

「懸賞金がユキノより少ない!!」 

「私たちも堕ちたもんだねえ。なんて」


 写真の映りが若干不満なセーレと懸賞金の少なさに文句を言うアキナ。リイは笑っている。

 それより気になるのは。


「私とソコルルさんの手配書が見当たりませんね。頭数に入っていないのでしょうか」


 心なしか悔しそうなトーンでニコがつぶやく。


「そっちの方がいいと思うけどな」

「そうですけど。でも、なんか私たちだけ仲間じゃないみたいな感じがします」


 ところで、と硬い顔したセーレが俺の罪状の一つを確認する。


「ワルシャってロンドのはずれにある町だけど、これほんと?」


 他のみんなの視線も俺に集まる。


「冤罪だよ」

「……そうよね。疑ったわ」

「もし犯罪者だったらどうしよかって心配したんだよねえ。……にしてもこれじゃあ、ルビンの街でも歩けないね」


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 結論から言うと、俺たちはルビンの街に無事に足を踏み入れることができた。


「へえ。同じ村の同年代同士で金出しあって旅行しているってわけね」


 ルビンの門番は俺たちの嘘に納得する。

 新宝島の時と同じように、俺たちは偽名を使い変装することにした。


 リン、アイナ、セレナ、ミココ。

 俺以外は新宝島の時と同じ名前だけど、チュラたちが来ない限りバレないだろう。


「で、お前が代表のユキオか。ふぅーん。農民の割にはひょろいな」

「へへへ。へへ。へへへへへ」


 女装する必要もないから適当に偽名を使った俺は、門番の嫌味に愛想笑いで答える。

 いかにもというようながっしりとした体格の門番だが、他の一般人みたいに威圧感なんて何にも感じなかった。チュラとの闘いを経て魔力の流れへの感覚が鍛えられ、俺は相手の力量みたいなのがおおよそわかるようになった。この門番は一般人よりは強いが、ビートル人に比べたら大したことない。

 俺の愛想笑いが気持ち悪かったのか門番は若干ドン引きしつつ俺たちに忠告した。


「ま、貧乏旅行ってんならルビンをすぐ出るこったな。ここはビートル人が征服して以降、カジノ都市になっちまったから。下手に手出すと一文無しになって売られちまうぜ」


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「ぬぁんじゃこりゃああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」


 変わり果てた我が家を目にしたアキナが絶叫し膝をつく。

 関所をくぐったアキナは一目散に走りだした。久しぶりに帰ってきた故郷だ。自分が暮らしていた我が家、つまりはカクラの王宮、に早く行きたかった。


 カクラ姉妹からかつてのルビンについて船の上で繰り返し聞かされていた。

 カクラ帝国はロンドほどじゃないにしろ厚い歴史のある国で、首都ルビンには古くからある建築物がたくさんあって風情のある街だと、特にアキナは胸を張っていた。

 特にカクラの王宮ホンロン城は帝国の富と権力の象徴だった。


「いっそファクトリーみたいに全部ぶっ潰されたほうがよかったかもね」


 腕組みして眉を寄せているリイの横でセーレがつぶやく。

 ロンドの首都アルジェもビートル人によって都市丸ごと工場に改造されてしまった。

 ならルビンはどうなっているかというと。


「居抜き物件ってやつですね」


 ニコの言う通り、ルビンの伝統的な街並みやホンロン城もそのままの姿で一応は残っている。

 だが中身は全く違っている。


「『ようこそ!ホンロンカジノ!!』って、ご丁寧に世界語で書いてある。あそこにはカクラ家の紋章とホンロン城って達筆の表札が掲げてあったのになあ……」


 アキナの隣でリイもがっくりしている。

 リイとアキナが暮らした世界最大級の宮殿は今やギャンブル施設になってしまった。

 赤を基調とした巨大な木造建築。背丈よりはるかに高い城壁のせいで中を見ることはできないが、城門に乗っかっている屋根は金ぴかの瓦と真っ赤な太い柱。現代日本でもここまで大きい城門は見当たらないぞ。

 本来ならそんな門正面に達筆の表札があるはずらしいが、今はテーマパークみたいなフォントの「ようこそ!ホンロンカジノ!!」に取って代わられている。


 外側が変わってないので、なんだかアジアのどこかにありそうなアジア風カジノだ。実際のカジノにこんな表札があるのか知らんが。


「むぅ~!!めっちゃムカついてきたあ!!!」


 アキナが地団駄を踏む。自分たちの家を中途半端に改造されたことが悔しいのだろう。だが結構繁盛しているカジノなので人通りが多く、結構な人数が何事かと振り向いているのでやめてほしい。


「こうなったら私たちも行くしかないよ!お姉ちゃん!!」

「行くって……まあ、門をくぐってみないことには何もわかんないけど、敵陣だよ?」


 カクラの首都ルビンのどこかに眠っている異世界転送装置。それは十中八九ホンロン城の地下保管庫にあるだろうと俺たちは目星をつけている。


「ホンロン城の地下って、何か妨害魔法かかってますか?私の能力で地中から探索してみようと思ったら、ノイズがかかってよくわかりませんでした」


 ニコが残念そうに地面から手を離す。外からじゃどう頑張ってもわからない。


「だったら行くしかないか。客として」


 鬼が出るか蛇が出るか。

 俺たちはホンロンカジノへと足を踏み入れたのだった。





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