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130話 ロックスター、自分をイジメていた相手に復讐する

今回登場したビートル人


No.19 ロウト チート名【Tattva】:相手に幻覚を見せる。自分の望む幻覚を見せ続けられると相手はその快楽の中毒になり、やがて現実と幻覚の区別がつかなくなり廃人になる。

―ビートルバム、南部連合領、荒野―


「「「「「うおおおおおおお!!!!!」」」」」」」


 ボロボロになった冒険者たちが雄たけびを上げ、互いをたたえあっている。

 見渡す限りの地面が討伐されたモンスターで埋め尽くされている。


 集団クエスト、スタンピードの制圧。

 それが達成された瞬間であった。


「やりましたね!!ゴオマさん」

「ああ」


 その喧騒を少し離れたところからゴオマ(フジオウ)とラハルは眺めつつ、お互いに健闘をたたえあう。

 ほかの冒険者たちがボロボロで傷を負っているのに対し、二人は無傷。多少疲れているといった程度だ。


「にしても、どうして討伐するペースを途中から下げたんですか?あのままいけば、最多討伐記録は確実だったのに」


 前半ぶっちぎりの討伐数を稼いでいたフジオウとラハルだったが、突如ペースを下げるようフジオウが指示。結果として4位という目立たない位置に収まった。


「最多討伐記録を達成してしまいそうだったからだよ」

「ふーーーん???」


 眉と目をぐるぐる動かして理解できないということを顔にありありと表現するラハル。

 てっきり冒険者として出世するために参加したのだと思っていたけど、違うのだろうか。


「下手に名を上げるつもりなんかないさ。俺の獲物はロウトだ」


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


―南部連合、イスファハ、ササン城―


 フジオウたちが今まで暮らしていたサマルカンとは比べ物にならないくらいの大都市、イスファハ。

 南部連合の盟主ハシ王国のかつての首都である。


「青いですね~」

「ああ」


 フジオウたちが連れてこられたのは、青を基調とした大きな城。高くそびえるというよりは横に広がっていて、屋根という屋根がドーム状になっている。おかげで風通しがよく、熱がこもらない。


「ササン城にお呼ばれするなんてスピード出世を喜びたいところですが、真の目的は違うんですよね」

「ああ」


 スタンピード討伐で優秀な働きをした冒険者たちには、依頼主である領主から特別褒章が与えられる。

 その領主というのがロウト。ビートルバムでフジオウをイジメていた主犯格の一人である。

 フジオウは彼に近づき復讐するためにスタンピード討伐に参加したのであった。


 フジオウの足にファサファサと何かが当たる。

 犬獣人であるラハルのしっぽだった。


「だったらなんで私にビートル人なことをもっと早くに教えてくれなかったんですか」


 ぷくぅっと頬を膨らませて責めるような目をフジオウに向けている。

 ササン城に送迎されるまでの間に、フジオウはラハルに自分の秘密を打ち明けた。

 自分がビートル人なこと、本名がフジオウであること、そしていじめを受けていたこと。

 ただし、ワルシャの街でジェノサイドをしたことは言っていない。大量に持っているスキルは少しずついろんな人から盗んだことにした。


「ご主人様とはいえ、嘘つかれてたのはショックですよ」

「……悪い」


 また裏切られるのが怖かったという自分の気持ちをフジオウは自覚できていない。


「ま、嘘つかれるのが怖くて奴隷なんてやってられないんですけど。さ、切り替えますよ」

「切り替え?」

「自分の過去にケリつけるんでしょう!気合い入れていかんかい!!」


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 ―ササン城、王の寝室―


「あははははは」

「うふふふふふ」


 豪華の極みのような広い寝室。お香が焚かれ、室温は温かく、部屋全体がピンク色の明かりで照らされている。

 そんな中でエキゾチックな美女たちがほとんど裸のような恰好で笑っている。

 喜劇を見ているわけでも談笑しているわけでもない。

 力の抜けた四肢を地面に投げ出し、焦点の合わない目をして口の端からよだれを垂らし笑っている。


「……はぁっ」


 男の吐息が聞こえると、それまで激しく動いていたベッドの天幕が静かになって、やがて隙間からまたしても美女が乱暴に投げ出される。

 全身に汗を滴らせた裸の彼女は受け身を取ることなく床に激突。お尻や胸がスパンキングされて赤く腫れあがっているというのに恍惚とした表情を浮かべ、ヘラヘラ笑っているばかりで起き上がろうともしない。


「こいつももう壊れたか……」


 投げ捨てた女が口の端に泡を作ってしゃっくりみたいに笑っているのを見下ろしながら、飽きたおもちゃを見るようにつぶやく男。

 彼こそがフジオウの宿敵、ロウトである。

 メガネをかけて髪型は何もセットしていないいかにも優等生然とした少年である。

 だがそれは仮面で、本性は常に見下せる対象を探している残虐な男だ。

 トールのようにある意味で明朗ないじめをするのではなく、その手口はあくまで陰湿であった。


 それは変わっていないな、とフジオウはロウト天井から見下ろす。

 【認識阻害】のスキルを使いここまで楽勝で侵入できた。

 とはいえ使わなくても楽勝だっただろうとフジオウは思う。


(たるんでやがる。隙だらけだ)


 権力の上にあぐらをかいて永らく闘いから身を引いていたに違いない。それは今まで冒険者として命を張ってきたフジオウとの決定的な差だった。

 今のフジオウからすれば、かつての自分はこんなやつにビビッてこびへつらっていたのかと怒りさえ感じた。


 それは簡単な作業だった。

 トレントから奪った【根を張る】を使い、足を天井に根っこのように植え付け固定する。

 そうして自分の身体を逆さに吊るし徐々に徐々にロウトに近づいていくフジオウ。その姿はさながらコウモリのようだった。

 天幕を引き裂いたというのに、ロウトは新しい女の首を絞めるのに夢中で気づく気配がない。

 顔がゆでだこみたいになった女とフジオウは目が合った……ような気がする。だが涙とよだれにまみれながらトんだ目をしている女に状況が理解できようはずもない。


(お前はこの世界で生きてちゃいけない存在だ)


「【ROCKSTAR】、お前の命を奪う」

「あんっ……」


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 なるほど女たちがヘラヘラしていた仕組みはこれか、とフジオウはロウトのチートを奪って理解する。


「チェストー!!」


 自分たちにあてがわれた来客用の部屋に戻った瞬間、フジオウはラハルに塩を撒かれた。


「なんだよ……」

「手を汚したんだからお清めです!」


 ラハルはフジオウの復讐について、良いとも悪いとも言わなかった。

 殺すのか殺さないのかとも聞かなかった。

 説教することも軽蔑することもなく。何があっても私は味方でいる、とそれだけ言って見送った。


「さて。ケジメはつきましたか?」

「ああ」


 ならよし、っとにっこり笑う。

 ラハルのこの態度は己のメンツと命をかけた決闘がありふれている中世ヨーロッパ風の異世界だからこそ出せる度量なのかもしれない、とフジオウは思った。


 正直な自分を見てもらえるっていいな。そうも思った。




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