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118話 人は見た目がすべて

「誰かと思ったらソコルルじゃない」

「その声はセーレ……って、傷だらけじゃないか」


 御殿からひょっこり顔を出したセーレの焦げた髪や火傷した肌を見て、慌ててソコルルは回復魔法を使う。

 エノンタケとの闘い後に体を休めていたら突如御殿をぶち抜く大きな衝撃があったので、セーレは原因を探りに来たのだった。


「ありがと。これ、宝物庫のカギの一部」

「ありがとう。ふむ、やはりこういう形か」


 ソコルルの手にはカギの断片が3つ。チュラが持っているのとユキノがムシマルから手に入れた分があればカギは完成する。

 だが。


「ほら。これで開くはずだ」

「おほっ!カギができた」


 断片とカギ穴の形状をもとに、ソコルルがレプリカを砂魔法で作った。


「……開いた」


 防御魔法がかけられているかと警戒していたものの、無事に開錠できた。

 3人がかりで重たい扉を開けると、奥の台座に三又の槍が刺さっているのが見えた。


「あれがトライデントね」

「ちょっと待ってセーレ」


 トライデントを前に勇み足になったセーレをリイが止める。


「なんか、手前に水槽ある」

「すい……そう……?」



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 ビートルバム。湯殿。

 もうもうと湧く蒸気で湿度が高い。

 チュラを追ってきたらここにたどり着いた。間違いなく、有利なリングへと引き込まれた。


「あの客間でお前叫んでいたな。たしか、追い込み漁って」

「ああ、言ったな」

「宣言通りムシマルを倒したようだが、いきなり俺で大丈夫か?」

「何が?」


 心配するような言葉をかけてきたチュラだが、悪意が隠せていない。


「ハーレム要員に闘いなんてできないだろう」


 魚人になったからのか元からなのか、俺より頭一つ分高い位置からそんな嘲りが降ってきた。


「言いたいことは大体わかった」

「せいぜいお前を喜ばすくらいしか能のないやつらだ。セーレとかいうお姫様も俺の攻撃を防いでばかりだったし。ほかの奴らも今ごろ、あいつらに好き放題され……はぐぅっ!」


 大体わかったことと同じ内容だったので、最後まで聞かずメリケンサックを顎にお見舞いしてやった。

 舌を噛んだのかもしれない。


「わかったって言ってんだろ」

「そりゃ……悪かったな……図星で」


 減らず口を利くので、近くにあった桶の角を顔面にたたきつけた。

 桶が砕けるほどの勢いで殴ったのに、チュラは大きくのけぞっただけで足腰はぐらついてない。


「あいにくだが、俺は女を洗脳する趣味はない」

「……催眠は嫌いか。性癖が合わんな」


 さっきの桶攻撃でチュラはたらこ唇の端を切ったが、それだけだ。

 防御力が高いうえに、的が高くて狙いづらい。


「ところで。今のが全力か?」

「なんだと?」


 瞬間、チュラの大きなこぶしが俺に向かって繰り出される。

 とっさに腕で防御するが、人間とは思えないインパクトに貫かれる。


「うぐぅっ!」


 そのまま吹き飛ばされて後ろのヒノキの壁に激突する。

 見ると拳を受けた左腕がぼっきり折れていた。


「……ニコ以上だな。お前ほんとに現代日本人か?」

「骨折が一瞬で治るお前にそれを言う筋合いがあるのか?」


 質問を質問で返しやがって。

 だがその質問を聞く限り、怪力は魚人化のおかげらしい。


「隙ありぃ!」


 向かってくるチュラに、跳ね起きを利用した両足蹴りのカウンターを食らわせようとした俺。一応顔面にヒットしたものの、逆に左足首を掴まれてしまった。


「そんな非力さでハーレム主が務まるか!」


 口の端が耳まで裂けるくらいの笑顔でチュラは俺を棒みたいに持ち上げる。

 これはまずい。


「ぅらあ!!」


 掴まれていないほうの足でチュラの顔面に蹴りを入れようとした俺だったが、時すでに遅し。

 そのまま床に向かって全力で投げつけられた。


 バキィィィィっという床が砕け散る音が風呂中に響き渡る。

 そして俺の体はバウンドしてそのそばに転げていった。


「魔力障壁で防いだか。だが、振り回されたダメージは防ぎようがない」


 おっしゃる通り。遠心力だかなんだかで血の流れがめちゃくちゃになった感覚がある。

 今の俺の視界は真っ赤。目から血の涙が流れている。


「だが、もう平気だ」

「【ヒーリングファクター】……俺を人間の姿に戻してくれる希望だ」


 ギザギザの歯を見せて笑うチュラはどこか寂しそうだった。


「望んでそんな外見してるわけじゃないのか」

「冗談」

「なんだ。でも、魚顔は元からだろ」

「ったく、評判通り口の悪い野郎だ」


 俺の挑発をさらりと受け流すチュラ。というか、ほかに言いたいことがあって手が回らないって感じだな。


「素顔がよくないのは確かだ。どういうわけかビートル人には顔の整ったやつが多くてな。そいつらの輪に入れなかったのが俺たちだ。組織するつもりもなく、俺の周りには同類が集まった」

「異世界転移する奴って大体顔いいもんな」


 魚人だから元からなのか、チュラの顔には表情がない。のぼおっとした顔と光のない目で見つめられると、底知れない不安におそわれる。


「ハーレム作るのにも才能が要る。ここは俺たちみたいに恵まれなかったやつの慰安場所だ。男性陣は反対しなかった、全責任を俺一人に負わせてはきたがね」

「……気持ちはわかるんだけど」


 異世界小説の読みすぎだろ。

 それに昨今の社会情勢だ。女性の主体性とやらを肯定していかないことにはモテるやつもモテなくなる。


「見た目よりなにより、女性を尊重するやさしさが大切、なんじゃねえの」

「ははは。安いネット記事みたいなことを言う。イタミを殺した人間が何を偉そうに」

「あん?」


 俺がイタミを殺しただと?


「俺はあいつの股間に膝蹴りしただけだ。殺してなんかいない」

「言い訳は結構。イケメンが物腰柔らかなら優しくて、不細工なら弱いになるだけ。外見と評判ですべては決まる。そうだろう!!」


 チュラが怒鳴った瞬間、俺が激突して開いた床穴から水が噴き出す。

 足もとに飛んできた水滴が冷たい。


「海水……?」

「排水の都合上、ここは御殿で一番海に近い。そして俺の【新宝島】は……」

「陽動のためにベラベラ喋ってやがったのか!!」


 そうだった。こいつのチートは、海洋生物を思いのままに操る力。

 噴き出す水とともに湯殿に闖入してきたのは、


「カニ……?」


 大量のカニがあとからあとから湧いてくる、横歩きで。

 日本の海岸で見かけるくらいの小さいやつだ。

 てっきりクェゼリンみたいな巨大海モンスターが出てくるかと思ったら。


「カニなんか出してどうすんだ?」

「見た目に惑わされないことだ。現代日本のカニは死肉を漁るぐらいだが、異世界のこいつらは生きてる肉も食うんだぜ」


 すでに数百匹はいるカニが、ピクミンみたいに整列して一斉に俺に襲い掛かってきた。

 最初は魔力障壁を展開した踏みつけで退けることができたが、徐々に数で押され始める。

 

 そして首筋にぽとっと何かが落ちる感覚がした。


「しまった!天井か!!」


 見上げるとすでに天井全体を覆いつくすカニ、カニ、カニ。

 そして背中に感じる鋭い痛み。

 中に入ったカニが肉を挟んでちぎりやがった。

 それに気を取られていたら、足からもカニが登ってきやがった。


「いってぇぇぇぇぇぇ!!!」

「よく見ることだ。小さいカニだって立派な鋏を持っているだろう。お前らはそうやって、見たいものだけを見てばかりいる」




いつもお読みいただきありがとうございます。

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