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113話 選手交代

「ぬわあああああん!!!もしもーし!!もしもーし!!!」

「なんだあ……?そんな古くせえもんどこで手に入れた?」

 

 半泣きになりながら電話をかけているアキナを見てフセは戸惑ったが、その隣にニコがいるのに気づいて合点がいった。

 援軍を呼ぶつもりのようなので阻止しようと迫る。


「…ハァ……ハァ……それ以上一歩でも近づいたら……蹴り殺すから」

「あぁ~~ん!?」

 

 フセの前に立ちはだかったリイだったが、脚はふらついていて立つのもやっとだ。


「てめえ、まだ俺にそんな減らず口が利けるのかよ!」


 目を剥いて肩を怒らせたフセが、リイへと標的を変える。


「アッアッアッ!月がきれいだよ、幼女ちゃんたちい!!」


 屋根をショットガンで吹き飛ばし、ヒキガネが登って来た。

 アキナがリイのそばまで後ずさりする。


「なんか変なの連れてきたね」

「あいつ銃ぶっ放して私たちのことストーカーしてくるのおおお!もーしもーし!!」

「ああん!?んだよ、ヒキガネじゃねえか!?」


 次から次へと人が現れる状況にフセはうんざりした。

 あのまま一対一ならカクラの姫を再起不能にすることもできたのに。

 しかも、ヒキガネがいるとフセは能力が使いづらくなるのだ。


「また幼女のケツ追っかけてんのか!!」

「ア~!?!?君がいたら僕が撃たれるじゃないか!!」

「「お前」幼女ちゃんたち!!「どけ」どいて!!」


 そう言われたら余計に動かないリイたちだった。


「フセの能力は絶対防御。相手の攻撃ならすべての類の攻撃が防げて、攻撃は相手に跳ね返る」

「何それ!?!?勝てないじゃん!」

「私の魔眼まで跳ね返されちゃって、屋根から落ちかけた」


 フセの能力説明をリイから聞いた瞬間、ニコは痛む足を押さえてフセに殴りかかった。


「ひぃっ!!」


 小さな女の子の拳にビビって尻餅をついた男性の周囲を、薄い緑色のぼんやりした光のベールが覆っていた。


「その代わり、チートの発動中は一切動けないんです。それがフセの弱点」

「ニコ!てめえ、お前がバックレたせいで俺たちは大迷惑したんだよ!!」

「私はこんな美しくない街を作りたくはありませんから」


 ファクトリー建設の関係で、ニコとフセは面識があった。

 だからフセのチートの対策も思いついた。


「アキナさん、リイさん。このままフセとヒキガネを結んだ直線上からズレないでください。そうすればどちらも私たちに攻撃ができませんから」


 ニコの拳を前にしてフセは動けない。ヒキガネは、もしフセに当たれば反射して自分が傷つく。屋根の上という足元の悪い状況では回り込んで撃つこともできない。


「アッ!!フセ殿!幼女にタッチされるなんてご褒美じゃないか!一発くらいもらいたまえ!!」

「なめたこと言ってんじゃねえぞ!!てめえがその女に蹴り飛ばされればいいんだよ!!」

「えぇ……仲良くないのお……」


 自分たちの頭越しにビートル人同士が罵り合っている光景にアキナが苦虫を噛み潰したような顔をする。


「だけどこれ。この状況は、じり貧」


 妹の手前気丈に振る舞っているが、リイは今すぐにでも倒れてしまいたかった。

 ニコのわき腹からは再び出血しているし撃たれた足からの血も止まらない。

 頼みのアキナに鉄球を作る余裕は2人にはなかった。


「ハッ!お前、撃たれてんじゃねえか!!そんなんじゃ死ぬのも時間の問題だろ!!どうだ、イチかバチか一発ぶん殴ってみるってのは?」

「その手には……乗りませんよ」

「もしもーし!もしもーし!!早く来てええ!!!……え?もしもしはわかったからどこにいるか早く?……えーっと、御殿!!……じゃなくて、目印になるもの?」

「はぁ……大きな声出す前に言うべきことをまとめなさい、っていつも言ってたじゃんか」


 必死こいて電話しているアキナの頭にポンと手を乗せて、リイは空を仰ぐ。

 輝くネオンに負けないように魔力を振り絞らないといけない。


「一睨みで気づいてよ、ソコルル」


 一筋の黄色の光が夜空に向かって昇っていく。

 すさまじい明るさに、思わずヒキガネも体をくの字に曲げた。


「アッ!?これだから大人の女は嫌なんだ!」


 目をこすりながら世の女性たちへのトラウマを吐いたヒキガネが見たのは。


「なんだこの砂のドーム?あいつらはどこに行った!?おい!フセ!!」


 AK47を乱射するが、砂に穴は開かない。

 ヒキガネの声に答える者は誰もいなかった。


「ひゃっほおおおおおお!!!!ソコルルぅぅぅぅ!!!」


 待ちに待った助けにアキナがしがみつく。

 ジャケットがユキノのものであるせいが、アキナは2人同時に助けに来てくれたような気がして、不思議と安堵感に包まれた。


「いったい何の光だったんだ。ヒータンが突然爆笑して、何事かと思ったぞ」

「黄色は笑い。スベり知らずの魔眼。これじゃないとかき消されちゃうから。あとで謝っとく」

「それにしても明るい街だな。税金の無駄遣いだろ」

「おい!!てめえトカゲ女!!なんだこれは!!!」


 ソコルルの魔力と薬草によって回復したリイとニコ。

 彼女たちに向かって、相変わらずバリアを張りっぱなしにしているフセが怒鳴り散らす。

 張りっぱなしにしているというよりは、ニコがこぶしを解いても張り続けざるを得なかった。


 尻餅をついたままのフセの頭上にとめどなく砂が降ってきているのだ。

 バリアが反応しているということはフセにとって危害があるということ。それなのに、この魔法の発動主であるソコルルに跳ね返らない。


「まるで滝行だな。敵だと判断したからこうしたんだが、問題ないよな?」

「うん、ずっとそのままでいいよ」


「いいわけあるか、バカ野郎!!なんでこの砂跳ね返らないんだ!?俺のバリアは絶対無敵だぞ!!」

「この緑の膜がそのバリアとやらか。詳細は知らんがとにかく、攻撃をしなければいいんだろう?私はただ砂をお前の頭上に降らせているだけだ」

「ただの砂に俺のバリアが反応するわけねえだろ!!」


「そうなのか?まあ確かに、お前に降る砂は少々尖らせてあるからかもしれないな。万が一目に入れば失明するんじゃないか。だが自然界には確かにそんな砂が存在するし、そんな砂だけが降ってくる日もあるだろうさ。お前は急な夕立にもそうやってキレるのか?」


 フセがさらに喚き散らしているが、それはもはや言葉の体をなしていなかった。


「どうやらこいつは私が相手した方がいいようだな」

「相手の感情に流されないって羨ましい。じゃ、あのロリコン野郎は私が片付ける」

「さっきから飛び道具を撃ち込んできている外のあいつか。それじゃ、選手交代といこう」

「あ、ちょっと待ってください……」


「アッ!?アッアッアッ……」


 砂のドームが霧消したのと、リイが跳びかかっていったのは同時。

 人並み外れた脚のバネをもつリイのダッシュにヒキガネが反応できるはずもなく。


「アアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッ!!!」


 リイのフロントキックをもろに食らって屋根から吹き飛ばされた。

ブックマーク100件突破しました!!!

ブックマークゼロが当たり前のなろうにおいて、これは一つ壁を越えたなと感動しております。ひとえに、みなさんの応援のおかげです。ありがとうございます。今後も頑張ってまいります。



おもしろかった・続きが気になるという方は、ページ下部の☆☆☆☆☆をクリックして★★★★★にしていただけるとありがたいです。

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