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112話 二連敗

逆転までを1話にまとめるつもりでしたが、延びてしまいました。次話もなるはやでアップします。

「死んじゃう死んじゃう!!!」


 アキナが魔力障壁を展開。

 雨あられの銃弾を防ごうとするが、物量に押し切られるのは時間の問題だ。


 どれだけ魔力を追加しても、障壁も柱も片っ端から削り取られていく。

 すでに2人並んでギリギリなのに、これ以上柱が削られたらハチの巣にされてしまう。


「私が退きますので、アキナさんは床束の陰に隠れてください」

「ゆかつか!?」

「私たちが今隠れているこの石の台に乗っている太い柱です」

「わかった!って、ニコは!?」

「大丈夫です」


 アキナに場所を譲ったニコが足元の丸太に指を引っかけると、そのまま力で丸太の一部を引き剥がした。


「うわぁ、怪力ぃ」

「ふんっ」


 細い指に捕まれた木片を近くの柱に向かって投げつけると、カランっと乾いた音があたりに響いた。


「アッ?この銃弾の中を逃げたって?」


 勘違いしたヒキガネが誰も隠れていない床束に向かってAK47を撃ち込む。魔力障壁も何もない無防備の床束は見る見るうちに細くなっていく。


 囮にした根太とは逆方向の根太に向かってニコが走り出す。

 何も説明されなかったのでびっくりしたアキナだったが、とっさに口を手で押さえた。


(あの柱があれだけ弱くなれば、こっちの柱には、この角度)


 ソコルル、ユキノ、リイ、セーレ、アキナ、ニコ。

 背の順に並んだこの6人の中で一番体重が重いのは、実はニコだ。


 服の上から見ると華奢な小学校高学年くらいの体格だが、その身体にはドワーフ族の特長である高密度の筋肉が搭載されている。

 大槌を振るうなど普通のドワーフがする鍛冶仕事をしていないため鍛えられてはいないが、その筋力は並みの人間男性をはるかに凌駕する。


「ふんっ」


 その細い腕に横方向に伸ばし、力を込めて叩きつける。

 自分のウエストくらいある床束に対してラリアット。

 それも狭い床下で膝をついた状態の、上半身の捻りだけで放つラリアットだ。

 常人なら腕を骨折するが、折れたのは柱のほうだった。


 床束が折れたことで、それが支えていた床の骨組みがバランスを崩す。

 メキメキと不穏な音が響いてあちこちが裂け始めた。


「うぉおおお!!天井が、落ちる!!」

「アッ!」

「天井じゃなくて床です。こっち階段みたいになりましたよ」

「あっ、そっか」


 ヒキガネの悲鳴が聞こえた気がするが、そんなことはお構いなしに崩れた床の隙間から床上に出た。


 床下を隠密に進んで下から宝物庫に侵入するプロジェクトはこれにて破綻となった。

 なお、宝物庫が別棟だった場合について提案者であるアキナは何も考えていなかった。


「あー!なんかちょっと見ない間にボロボロになってる!」

「大砲でもぶっ放したんでしょうか」


 中庭から御殿の奥に向かって一直線に破壊された跡を見て、ニコとアキナが首をかしげる。


「まあいいです。ヒキガネが追って来るより先に屋根裏に隠れますよ。この部屋の大きい棚に登れば私たちでも届きそうです」


 出て来た部屋とは別の部屋。大きな衣装棚がある部屋に入って、棚の上までよじ登る2人。


「ふんっ」

「お~怪力」


 ニコが天井を張り手で破り飛ばして、屋根裏への道を作る。

 だが。


「あ、桁に手が届きません。椅子を……」

「けた……?あ、椅子なら私がなるよ!」


 ふくらはぎが吊りそうなくらいニコが手を伸ばしているのを見て、壁の上に横向きに渡してある柱のことだとアキナもわかった。

 そこに手をかけたいならと、ニコの足元で四つん這いになる。


「え……、いや、その、やっぱり椅子を」

「遠慮しないの!早くしないとあいつ来るよ!」

「はあ……では、遠慮せず」


 アキナは自分の肩甲骨が割れるかと思った。


「ぷんぎゅぉっ!!」

「や、やっぱり降りましょうか。踏まれた猫みたいな声が聞こえました」

「へ、平気平気!全然大丈夫だから。早く登ってえええええ!!」


 背中の上で全力投球したことを改めてヒータンに謝ろう、そう思ったアキナだった。





「よっと」


 ニコがようやくまたがった桁に、アキナは猫みたいに軽やかに手をかける。


「どうして逃げるんだよお!僕と友達になればS&W使わせてあげるからさあ!!」

「げっ!!」


 床下から弾丸が飛び出てきたと思ったら、ヒキガネが床を突き破って這い出てきた。

 床下を這いずり回りさらに崩れた床の下敷きになって全身埃と土まみれになっていた。


「あっち行け!!!」


 アキナが天井の一部をちぎって投げつける。

 鉄球じゃないし腰が入ってないのでへろへろだ。

 だが目くらましに放ったので、その隙に2人は桁から梁に飛び移る。

 

 このまま屋根裏を進んで、垂木と垂木の間の薄いところを壊して屋根に出るというプランだ。


 だが。


「生意気なメスガキなんてこっちからお断りだ!!くらえAK47、二刀流!!」


 神経を逆なでされたヒキガネがもう一丁AK47を出現させて、天井に向かって銃を乱射し始めた。


「やばいやばいやばい!!」


 地面から飛び出してくる銃弾の雨を避けながら、アキナとニコは走る。

 天井の板に穴がぼつぼつ空いて星空みたいになっている。


 別の部屋まで行けば銃弾の雨からは逃げ切れる。

 だが梁には屋根を支える小屋束という柱が交差しているから、梁から梁へと飛び移る移動が必要になる。

 その跳び移る瞬間だった。


「あっ」


 小さい声を漏らしたニコが、バランスを崩して梁に不時着した。


「おぉう、ニコちゃん落ちなくてよか……」

「撃たれました。弾は貫通したので不幸中の幸いです」

「分析してる場合じゃないでしょおおおお!!!!」


 ニコはわき腹を撃ちぬかれていて、見る見るうちに服に血がにじんでいた。

 すぐさまアキナは回復魔法を展開する。

 出血は止まったが、傷は一向に塞がらない。

 アキナは能力がピーキーなのだ。ピッチングの攻撃力は桁外れだが、他はてんでダメ。

 セーレは言わずもがなリイやソコルルでも数秒で治癒できる傷に手こずってしまっている。


「ううぅ……全然塞がらないよお!!」


 この間にも銃の雨は止まない。

 それどころか。


「アッアッアッ!袋のネズミだねえ!!生意気な幼女たちは僕がしっかりわからせてあげるからねえ!!!」


 ヒキガネが屋根裏まで登ってきた。

 だが幸いなことに、たるんだ体型と2丁のAK47が邪魔して思ったようには進めていない。


「ふんっ」


 ニコが野地板を突き破って天井に出る道を作る。

 天井裏に急に光が差し込んで、ヒキガネは一瞬目が見えなくなった。


「今度は引っ張り上げてもらわないといけないので」


 天井に出たアキナはニコを引っ張り上げる。

 相変わらずニコの表情は平坦だが、額に脂汗がにじんでいた。


 そして響く銃声。


「……足を撃たれました」

「うわああああああああああ!!!」


 雄たけびを上げて火事場の馬鹿力でなんとかニコを引き上げたアキナは、屋根の天辺に誰か寝そべっているのに気が付いた。


 そしてその傷だらけの女の人を、少し離れた小男が見下しているのも。


「え……うそ……そんな、お姉ちゃん!!」

「……………アキ、ナ……?」


 寝そべっているのではなかった。

 リイはフセに指一本触れることさえできず、敗れていた。





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