110話 4vs5
今回登場するビートル人
No.8 チュラ チート名【新宝島】 :海棲モンスター・人魚を従える
No.15 ヒキガネ チート名【21guns】 :思い浮かべた銃を出現させる
No.33 フセ チート名【TINTS】 :絶対防御のバリア
「絶対ここだと思ったのに、変な部屋」
電話を切ったセーレは改めて部屋を一望してがっかりした。
ここが宝物庫に違いないと確信していたのに。
というのも、扉の上にデカデカとシックな看板が掲げられていてそこに「竜宮城」だなんて金のゴージャスな書体で書いてあったからだ。
「変なの。浴室とベッドが同じ部屋にある」
部屋の半分弱が浴室で、残りが寝室。
ベッドと浴室の間にはパーテーションがあるものの、それでも変なつくりだ。
独居房か何かだったのだろうか。
「あ~、牢屋か。たしかに、だとしたらこの簡素なバスタブも納得だけど」
だけど違う。ドアにのぞき窓がない。それにベッドが2人分のサイズだ。
「う~ん……モンスター用のお風呂……?そうよ!だからお風呂椅子がこんな変な形なんだ!……でも、だったら浴槽に花びらが浮かべてあるのは変ね」
現代日本のお風呂はみんなこうなのだろうか。あとでユキノに聞いてみよう。
とにもかくにも、この部屋は外れだ。
セーレが部屋を出ようとしたその時。
扉が勢いよく蹴破られた。
「フハハハハ!!これはとんだ当たりの嬢だ!」
「チュラ……!」
自分たちを探しているにしては両手にセクシーな裸の人魚を侍らせているのが気になるが、目の前にいるのはさっき見た魚人。
「てめえら捕まえんのは他のやつらに任せてその間にお楽しみといくつもりだったが、まあいい。俺は気の強い女を屈服させるのも好きだぜ。自分が強いってことを再確認できるからな!」
「屈服なんかごめんよ!」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「だから~、口と行動が合ってないんだって」
「ゴチャゴチャ抜かしてねえで、とっととかかってきやがれって言ってんだろ!!!」
御殿、屋根の上。
リイとイライラチビのビートル人、フセが膠着状態になってもう数分が経つ。
「私ケンカしに来たんじゃないもん。君がかかって来ないなら素通りするだけだよ」
「テメッ、待てよお……無視してんじゃねえよ!ビビってんのか!?ああ~~~~~ん!?!?」
自分を避けて通りすぎようとしたリイの前に、慌ててフセが立ちはだかる。
160cmに満たないフセは、リイより小さく、身体も細い。
その姿はまるで自分より大きな犬にキャンキャン吠えて挑発するチワワだ。
「ほっ」
そんな小さなフセだから、リイが跳び越えることなど容易い。
猫のようにフセの頭上を跳び越えて、そのまま歩き続ける。
「こんのデカ女!!なめてんじゃねーぞ、こら!!」
「もう、眠ってて」
性懲りもなくドタドタ回り込んで今度は鼻が触れるくらいまで顔を近づけメンチを切ってきたフセに、いい加減リイも腹が立った。
その瞳が白く光る。
今日一日の記憶を消して、一晩中ここにつっ立っていてもらおう。
顔を白く照らされたフセが、妖しく嗤って……。
「……え!?」
自分が屋根から転げ落ちて宙に投げ出されたことに気づいたリイは、とっさに手を伸ばして掴まる。
気が付いたら、身体が勝手に屋根から飛び降りようとしていた。
フセを魔眼で見てから転げ落ちるまでの記憶がまるでない。
(いったい何をされたの……?どういう、能力?)
瓦を掴む指の向こうに人を食った笑みを浮かべているフセが見える。
「ひゃははははは!滑稽だったぜ、高貴なお姫様が転げ落ちるのは!!男が女を見下ろすんが当然なんだよ!」
大パニック中のリイの頭に、フセの余裕のない嘲りが響いていた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「目がキモい!目がキモい!なんか気持ち悪いいいい!!」
「アッアッアッ。床下に隠れるなんて幼女らしくて可愛いなあ。どうこれ、僕の銃、かっこいいでしょ」
御殿の床下。
四つん這いとは思えないスピードで逃げるアキナとニコを、ビートルバムの陰キャ、ヒキガネが狙っている。
「どういうことでしょう。虚空から銃が出現しました。もしかして私と同じ能力」
ヒキガネが今構えているリボルバーは突如その手に出現した。
たるんだ顔つきと体形の男が持つには不釣り合いなゴツゴツとした銀色。
ニコは自分と同じ能力を持つのではと危惧した。
「だとしたら勝てません……」
「ええ!?」
バァンという破裂音が響いて、アキナとニコの間を弾丸が通り過ぎる。弾丸は柱を抉ってどっかに消えた。
「第二成微期は来てるみたいだけど異世界の幼女は防犯ベルなんか持ってないから安心……アッアッアッ」
「ギャアアアアアア!!私の剛速球より速いいいい!!!ニコおおおおお、早く鉄球作ってえええええ!!!!」
持っていた分はナタリスとシスウとの闘いで使い切ってしまっていたのだ。
だが、そんな縋るようなアキナの叫びにニコは絶望的な顔で応える。
「作れません。ここは海の上で、イカダの上なんです。床下に行けば何とかなるかと思ったんですけど、やっぱり、地面がないと作れません……」
「ええええええええええ!?!?!?!?」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「なにがカブトムシやカマキリの能力も使える、だよ。使いどころ間違っちゃ意味ねえだろ」
「そ、そんな……カブトの甲殻が……」
俺のパンチを顔面に食らってダウンしたムシマルは、硬い虫の身体でも防ぎきれなかったことが信じられないようだ。
頭から生えた無駄に立派な角がプルプルとひきつっている。
歌舞伎の女形に倣って肩幅を狭くし続けていたせいで肩甲骨周りがバキバキになった俺は、1人トイレの個室でストレッチをしていた。
そしたら誰かのそのそ入ってくる音がして、隙間から覗いたらムシマルだった。
提灯が破壊されているのを訝しんでトイレを調べ始めたので、気付かれるより先にドアごとぶん殴って、今に至る。
「カブトムシより、黒硬象虫とかのほうがよかったんじゃねえの?」
「なんだとぉ~!?でたらめな虫作ってんじゃねえよ!」
「……お前がなれるのって知ってる虫だけ?俺の中にあったお前実は最強説が崩れたわ」
この一言がムシマルの神経を逆なでしたらしく、怒気を発しながら変態を始めた。
今度は何の虫になるのかが暗くてよく見えないから、うかつに近づけな……。
ドゴオッ!!
ムシマルが動いたと思った瞬間、俺は腹に衝撃を感じて吹き飛ばされた。
ドアにぶつかっても勢いは止まることなく、そのまま廊下に飛び出す。
自分の背中が板壁とふすまをなぎ倒していくのを感じながら、俺の腹に頭突きしたままのムシマルと目が合った。
元からのギョロ目がさらにでっかくなっている。
これは、バッタか。
でも。
「バカ」
「なにぃ!?」
俺は上半身を捻って、ムシマルの身体を傾ける。
するとムシマルはいとも簡単に俺から離れて明後日の方向に飛んで行ってしまった。
前はナタリスの銃撃食らって強くなったが、背中を攻撃されたことって少ないな。
なんてことを思いながら背中の木片を引き抜いて、土壁に衝突してもがいているムシマルを狙い定める。
「羽も生やさないと真っ直ぐ跳べないだろ。それに」
「く、くそ!立て、立て……」
「バッタの後ろ脚は逆向いてんだぞ。そんなんで歩けるわけないだろ」
壁に手をついてようやく立ち上がったムシマルに向かって、助走をつけてジャンプ。
空中で魔力障壁を後方に展開。その反作用でスピードアップ。
「ま、待て……!まだ準備が……!!!」
正面飛び式低空ドロップキック。またの名をジョン・ウー。
「グハアアアアアアアアア!!!!!!!」
胸から顎にかけて蹴り上げ気味に入った俺の両足の裏は、土の壁ごとムシマルを吹き飛ばした。
「ノミにすればよかった。バッタより飛ぶ力が強くて体も硬い」
ま、知らねえんだったら仕方ないか。
いかがでしたか。
おもしろかった・続きが気になるという方は、ページ下部の☆☆☆☆☆をクリックして★★★★★にしていただけるとありがたいです。
★でもありがたいです。
私たまたま来ただけですねんという方は、また気が向いたら読みに来てください。




