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109話 圧迫面接を吹き飛ばせ

とんだ圧迫面接である。


 ブサイクな面接官に「私の顔立ちは悪いですか?正直な意見を聞かせてください」って言われたら答えに窮する。

 イエスと答えても落ちそうだし、ノーと答えても落ちそうだ。


 チュラは真意のつかめない顔をしており、周りのビートル人どもは各自好きな方向を見ていて関心があるのかないのかわからない。

 指名されていないので、誰が答えるべきかもわからない。俺たちは互いに顔を見合わせた。


「えっと……まだあなたのことをよく知らないのでわかりません」


 代表して答えたリイのこれが模範解答だろう。

 文脈的に外見のことを言っているのは明らかだが、明言されてないのを利用して内面の問題にすり替えて、どちらでもないと答える。

 果たして、チュラの答えは。


「フハハハハ、世渡りの上手い女だ。だが、逃げるんじゃない。俺は外見の話をしている。俺は醜いか?」


 そこまでわかっていてなぜ改めて質問する。


「えぇ……うーん……」

「顔立ちがいいとは言えないわ。あくまでも客観的な基準でみればそう」


 何と言っていいかわからないリイに代わって、セーレが答える。

 若干目つきがきつくなっている。

 試すような態度のチュラにムカついているのだろう。


「フフフ、嘘をつかれるくらいなら正直に言われた方が楽、か。だが、客観的なんて、まるで俺を好いてくれる変わり者がいるみたいじゃないか」

「それはまあ、いるんじゃないかしら。私もこの世界の全員を知ってるわけじゃないけど」

「なるほどお前以外の誰かが?」

「……そうだけど。それが?」


「(人魚さんたちにとても人気みたいですけど?)」


 背景が歪むくらい剣呑なオーラがセーレから漂いはじめたので、慌てて俺は丸文字を書いて見せる。

 今ドンパチ始めてもメリットはない。

 へらへらしてやり過ごそう。


 入った瞬間わかったが、この御殿はビートル人特有の浅い知識で作った和風建築だ。やたら廊下に提灯を吊り下げているのがその証拠。

 特殊な様式なんてなく、シンプルに一番遠い部屋が宝物庫だ。もしくは離れの蔵。トライデントはそこにある。

 

それさえわかればもう用はない。鍵の場所なんて教えてくれるはずがないし、扉ごとアキナの剛速球で破壊すればいい。


「ふむ。口のきけぬ女はお前か。この女どもが俺を好いているように見えるか?」

「(ええとても。その、心酔してるようで)」

「フハハ、たしかに。自分に心酔する女はいくらでもあったほうがいい」


 さすがこんなハーレムカルトを作るだけあって、女性をナチュラルにもの扱いしている。

 話の内容もさることながら、大きく脚を開いて手を太ももの上でだらんとさせながらしゃべる姿勢、それに人を食ったような表情。非常に他人をイラつかせる。

 こいつ、ルナとどんな会話してたんだろう。

 

「あの、私たち。明日の朝になったら出発します」


 いい加減うんざりしたリイがそう切り出した。

 面接らしく最後まで茶番だ。そう考えているのは俺たちだけじゃない。

 チュラが初めて笑顔になった。それは口の端を耳まで吊り上げて、ギザギザの歯を見せる気味の悪いものだった。


「そうはいかないなあ。この島に来た以上、女は全員俺たちのことを好きになる。そういうルールなんだから」

「はあ!?」


 我慢の限界に達したセーレが絶叫する。

 だがそんなことも意に介さず、チュラは続ける。

 いつの間にか、それ以外のビートル人もこちらに集中していた。


「それに。最近ビートルバムをハエが飛び回っていてな。人魚姫がタオユエン方面に逃げたって噂もある。そんな時にへらへら女だけの難民だ。はいそうですかって帰すと思うか?」


 あっという間に空気が変わる。

 ムシマルはいざ知らず、チュラは話を聞いた時から疑っていた。

予想通り、俺たちがこのまま帰れるはずはなかった。


「だったら最初からそう言えばいいのに。うだうだ回りくどいから女の子に嫌われるんだよ」

「まったく。鬱陶しいったらありゃしない」


 もはや猫を被る必要もない。


「ありゃ~。リンちゃんもアイナちゃんも本性はそんなだったのか」


 ムシマルが残念そうな声を出すと。


「アッアッアッ。だからババアはダメなんだよ」


 痙攣みたいな笑い声をあげて、死んだ魚の目の覇気のないやつがエイジズムを振りかざし。


「ったくクソ生意気なメスどもが」


 イライラチビがシンプルに罵って。


「女体の美しさに騙されるなんて君たちもまだまだだね」


 剣持ってるナルシストが気持ち悪かった。

 眉毛が気に入らないようで引き直している。


「男女云々というより、人として性格が悪いだけだと思います」

「べー、だ!!」


 あっかんべーしてアキナが化粧を落とす。

 リイもセーレもそれに続くが、そんな手でごしごしやったら肌に悪くないか?

 

「フハハハハハハハハ!カクラの残党程度かと思いきやこれは思わぬ収穫だ!人魚姫より人間の姫!早い者勝ちだ!先に捕まえたやつが好きにしていいぞ!!」


「『追い込み漁』!いくぞ!!」


 実にほぼ一日ぶりに俺は声を出す。それは事前に決めておいた作戦名だ。

 なるべく低い声を出したのが功を奏し、チュラたちが一瞬怯んだ。

 その隙にリイが一歩前に出て、幻覚の魔眼を発動。


 部屋中が緑の光に包まれた。




「派手にぶっ壊したなあ。アキナ」


 実際の圧迫面接もこうして会場ごと吹き飛ばせたらさぞスカッとするだろうな。


「でっしょー。でもちゃんと誰もいないとこに投げたからね!」

「静かにしてください。私たちは床下から行きます」


 ニコとアキナは計画通り一緒に行動するようだ。アキナの電話越しに2人の声が重なっている。


「ありがと。やつらも追いかけて来なかったわ。でもここ、何の部屋かしら」

「それで、ユキノの見立てだと一番奥の部屋か蔵だね。でも屋根から見る限り、離れなんてないよ」


 リイとセーレもひとまずは無事のようだ。

 俺たちはこの御殿に来る前にすでに、チュラからトライデントを奪い返す計画を立てていた。

 それはいたってシンプル。各自独立して動きトライデントの隠し場所を探すというもの。

 できればまとまっていたかったが、この新宝島で多VS多の派手な闘いをしてしまっては、洗脳されている人魚たちが巻き添えになる。

それでステルス的に動かざるを得なかった。

 だから緑の魔眼とアキナの剛速球で目くらましをして、それぞれで逃げた。


 普通なら不安で心細くなる無謀な作戦だが、ニコが携帯を発明してくれたおかげで可能になった。

 ヤマナミ以外が持つ劣化スマホとニコの携帯なら利便性は互角。


「ビートル人たちも動き始めました。みなさんお気を付けて」


 チュラたちも反撃に出たが、ひとまず俺はようやく化粧が落とせた開放感を感じている。

 これをまずしたくてトイレに入ったんだ。

 もちろんトイレの明かりは全部消してある。


「しっかし……」


 外から聞こえる大騒ぎを聞きながら、俺は濡れたタオルで顔を拭きつつ独り言ちる。


「あいつ、元から魚顔だな」





いつもお読みいただきありがとうございます。

おもしろかった・続きが気になるという方は、ページ下部の☆☆☆☆☆をクリックして★★★★★にしていただけるとありがたいです。

★だけでもうれしいです。

私たまたま来ただけですねんという方は、また気が向いたら読みに来てください。

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