表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/170

104話 合流、そしてコミュ力講座

―タオユエン沖 無人島―


 タオユエンの海岸から少し離れた無人島に人魚王国の船は停泊していた。

 リイとソコルルが先乗りしておいたおかげで入国はスムーズだった。

 入国と言って正しいのかはわからんが。


「アピア~!」

「あ、あ、あ。ゆ、ユキノさん!」


 近づいてきた俺におっかなびっくりみたいな態度で応えるアピア。

 サザエさんハウスからは出られず、窓越しの会話だ。

 

 窓に手をかけてこちらを見るアピアはニコニコした可愛い顔で。

 ただニコニコしているだけだ。


「………………」

「…………あわわ……えーと…………」


 あ、ちょっと目が泳ぎだしてきた。

 流石に沈黙が長すぎて気まずくなったのだろう。


「……あれからチュラの攻撃はあった?」

「あ、えっと、なかったです」

「よかったね……」


「……」

「……」


「……リイとソコルルを案内してくれてありがとな」

「あ、いえ、全然、だいじょうぶでした」

「そっか……」


「……」

「……」


「あんた何アピアちゃんイジメてんの」


 やってきたリイにケツを蹴られてしまった。


「イジメてねえっつうの!こっちからまくし立てると萎縮するかと思って!」

「だったらそんな塩対応しない!」


 ニコニコするだけで何も話しかけてこなかった最初の段階で、コミュ障のアピアに社交的な会話を期待してはいけないことぐらいわかっていた。

 かといってこちらが主導権握るとこちらがべらべら喋るだけになってしまうし、アピアの成長機会を奪ってしまう。

 色々考えたんだよ俺だって。


「アピアちゃん、あなた社交について教わってないの?」

「そ、そういうのはまだ……」


 俺たちを尻目にセーレがアピアに詰め寄っている。

 あれこそイジメじゃない?マウンティングするつもりかもよ。


「久しぶりに会ったら、まず相手と息災を確かめ合って近況報告をしあうものなの。といっても昨日食べたご飯の話をしたってしょうがないわ。趣味とかライフステージのこととか。そういう当たり障りのないことを聞くの。その後共通の知人の話とか最近の社会情勢とかの話をつなげていく」

「興味なくても?」

「興味なくても。私だって辺境伯のポロの成績になんてどうでもよかったわ。今回だとまずユキノが無事に到着したことをねぎらうの。そんでリイとソコルルが何してるかを伝える。このとき2人への感謝も伝えるとユキノのプライドが満足する。ま、あいつにはそこまでしなくてもいいけど」


 てっきり姫から姫へのマウントかと思ったら、とても役立つコミュ力向上講座だった。

 アピアもどこからかペンを取り出してきて熱心にメモっている。


「セーレのお姫様な側面が輝いている」

「歴史はロンドの方が長いからねえ。そういうしきたりは多いの」


 2人して感心していると、セーレとアピアが手招きしている。


「というわけでユキノ、もう一回やるからまたあの辺から歩いてきて」

「しょうがねえな」



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「ユイコに操られてるけどフェフェル王は生きてるってこと?」

「てっきりビートル人を片付けるだけかと思っていたが、そんなことが起きるとは」


 無人島の石がゴロゴロした海岸。

 俺たちの話を聞いたリイとソコルルは首をかしげる。


「うん……」

「それでセーレ、元気ないんだねえ。これじゃあ喜んだらいいのか悲しんだらいいのかわかんないもん」


 体育座りで伏し目になっているセーレの背中に優しく触れるリイ。

 国が滅んでから離れ離れになっていた父親と再会したら操り人形になっていたなんて状況、どう受け止めていいかわからん。


「もしユイコを倒せたとして、パパも一緒に死んじゃうかもしれない」

「セーレ姉ちゃん!私一個気になるんだけど、どうしてフェフェル様は火を使わなかったのかな!?」


 ネガティブなこと言うセーレに向かってアキナが質問する。

 それは確か、ロウセエネとセーレも現場で言ってたな。


「……ロンドの王が、【フェフェルの火】を使わなかった?」

「ひょっとしてユキノ、手加減されてたんじゃない?」


 ソコルルも反応したけど、なんだよその【フェフェルの火】って。

 あのバカ強いおっさんのとっておきかなんかか?


「王国最強の魔法使いであるパパだけが使える炎魔法。直接手を触れずにあらゆるものを火に変えるの」

「直接手を触れずに?」

「そ。本来なら、パパに触れることなんてできず体から火が出て終わり」

「先言っといてよ!?俺バーニングマンになるとこだったんじゃん」

 

 とんでもない力持ってんなあのおっさん。

 だがちょっと待てよ、ってことは。


「……あのでっけえクジラの中にいた透明人間、フジオウとかいう輩がなんらかの方法でセーレパパの能力を奪った」

「それだよねえ。だとすると、フェフェル様は魔法を奪われて仮死状態になっている」


 魔法を抜き取られるのは、現代日本で言うと精神、魂、気みたいなものを抜き取られるのに等しい。

 だから【フェフェルの火】を奪われた今のフェフェル王は肉体が生きているだけにすぎない。

 俺はユイコが去り際に言い残した言葉を思い出す。


「フェフェルは死んでいない。火を取り戻せば復活する」

「……それ本当に言ってたの?じゃあパパはまだ生きているってこと!」


 体育座りからセーレが復活する。


「だがどうしてそんな重要な秘密を教えたんだ?」

「十中八九あいつらもフジオウを探しているからだ。俺の【ヒーリングファクター】を奪って寿命を延ばしたいから」


 俺は【ヒーリングファクター】があるからいいけど、他のビートル人は異世界の環境に適応するために細胞が常時活性化しているせいで寿命が短い。

 特に他意はなく今の今までみんなに教えてなかったが、いざ言ったら結構驚かれた。


「えええええええ!!??あいつらっておじいちゃんおばあちゃんなのおおおお!!?!?!?」

「そうじゃないと思いますよ。むしろ、私たちがあと数十年耐えればビートル人は全員寿命で死ぬってことかと」


 ニコのいう通り、異世界の春を謳歌しているあいつらの命は短い。


「だが、数十年の間に異世界召喚を繰り返すだろうな。万が一俺の上位互換が召喚されたら大変だ。なにより」

「なにより?」

「カクラの王も同じ状態の可能性が高い」

 

 ケンリウさんもフェフェルと同じ状態でビートルバムの宮殿地下とかに幽閉されているかもしれない。

 リイとアキナの表情が少しきつくなる。


「いずれにせよ、俺たちはフジオウを探し出さなくちゃいけなくなった。スマホに表示されないはぐれ者だからかなり難しいけど絶対に見つけ出す」

「うおおおおお!!ユキノおおお!!私たちのためにそこまでええええええ!!なんか申し訳なくなるわあああ!!!」


 アキナが立ち上がって感動している。

 耳がキンキンするので止めてほしいし、フェフェルとケンリウを味方にすれば異世界ライフがかなり楽になるだろうっていう打算もあるのだが、セーレとリイもなんか目を細めてジーンとしているみたいだし言わないでおこう。





いつも評価いただきありがとうございます。

おもしろかった・続きが気になるという方は、ページ下部の☆☆☆☆☆をクリックして★★★★★にしていただけるとありがたいです。

私たまたま来ただけですねんという方は、また気が向いたら読みに来てください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ