101話 デコイ、そして無限収納とネクロマンサー
今回登場するビートル人
No.6 ユイコ チート【Seven Nation Army】:ネクロマンサー
No.44 ユウセイ チート【Big Poppa】:無限収納
「なんつー、馬鹿げた威力……!」
リイの投げた鉄球は俺の少し上を貫いていった。
もし直撃していたら、身体が木端微塵になっていただろうな。
もろに食らったシスウたちは見るも無残だ。
四肢が飛び散り、もはや人の形をとどめてないやつもいる。
ただ、シスウの分身は生身の肉体ではなく魔力の集合体のようだ。なので内臓が飛び散っているといったグロテスクさはない。
マネキン倉庫を爆破したような光景が広がっているだけだ。
そして、マネキンことシスウたちも光の粒子となって消え始めている。
「もしもし」
「もしもし!!」
「ありがと、助かった。でも、これほどの威力だとは思わなかった」
「すごいでしょー!」
電話越しにアキナが誇らしげなのが伝わってくる。
「ああ、すごい。それで、兵士たちの回復は終わった?」
「終わった!今ねー、ロウセエネ探してヒータンと飛んでるところ!!」
そうだった。
ロウセエネと会ってからビートル人を倒すのが本来の順番だった。
だけどあいつらがナパーム弾なんて目立つ真似したためにあべこべになってしまった。
「も、もしもしぃ?ふふっ、変な挨拶」
「セーレか」
「そ。電話変わったの。今ニコのスマホで確認してもらったら、もうこの公園にビートル人は2人しかいない。さっきの一球で分身は片付いたようね。残った2人もユキノの近くで動かない。気絶でもしてるのかしら」
場所を指示してもらって確認したら、たしかに2人とも気絶していた。
ヒイラギはアキナの鉄球の衝撃波で。シスウは、どうやら魔力切れだ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「ふむ。No.35のヒイラギ、No.37のシスウか。ヒイラギの方は見たこともない飛行体を使うと聞いていたが、ドローン、というのか」
2人ともをセーレの鎖で縛り上げて、ロウセエネに引き渡す。
ロウセエネは応援をリイに頼んだのち、少し離れたところで指揮を執っていたらしい。
先兵として突撃した陣が巨大な炎に巻き込まれるのを見て、長期戦の消耗戦になると考え戦略を練り直していたのだそうだ。
「だが、みながいなければじり貧だった。本当に助かった」
俺はこれまでの経緯と人魚王国に向かう旨を伝える。
するとロウセエネは「ほう」と興味深そうに頷いて、額についた古傷を指でなぞった。
「人魚王国ときたか。まったくお主は何というか、予想外のつながりを作っていくのだな」
「おう」
「チュラは手ごわい。あやつに海を支配されたせいで我々は山に逃げざるをえなくなった。だが、お主を心配するのは余計か」
俺は心配していないようだったが、リイもアキナも行くと聞いた時は平静を装いながらもかなり心配そうにしていた。
なんかアキナに水筒持たせてたし。
「で、1つ気になることがあるだが。こいつら、何しにやってきたんだ?」
「それがさっぱりわからん。大抵ビートル人が攻めてくる場合は、ナンバーの小さい上位者がいるものだが……」
ロウセエネのその一言で、みんな同時に一つの可能性に思い至った。
「まさか、デコイか!」
俺の叫びに反応して、ニコがスマホを起動する。
みんなも一斉に気を引き締める。
「……現れました。点の数は3つ。1つ消えて2つ。場所は、墓地です」
「一手、遅かったな」
聞き覚えのある声が聞こえて、ヒイラギたちを寝かせてある方を向くと。
そこにいたのはAWL。
「ちっ、やられた!」
すでに2人を抱えて転移しようとしている。
AWLにとっても絶妙のタイミングだったらしく、嫌味な笑みを浮かべて歪む空間の向こうに消えていった。
「逃げられた……」
「ねえ~マジムカつくぅ!ユッキー!早く墓地行こ!!」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
先のタオユエンの乱で命を落とした者たちは、郊外にある墓地に埋葬されることになった。
ただその数があまりにも多いために埋葬が追い付かず、ほとんどが棺桶に入れられた状態で野ざらしとなっている。
そんな棺桶が並んでいるだけの区画に突如2人の男女が出現した。
男の方はマウンテンパーカーを着てハットを被っている。下は半ズボンだが、その下にタイツと長いソックスを履いている。さらに偏光のサングラスを着けていて、何より目立つのは背負った巨大なリュックだ。
男の体格が平均より小さいことを差し引いても、背中からはみ出ているほど大きい。
まるでこれから富士山にでもアタックするのかというような男の格好は、墓地からもあるいは中世ヨーロッパ風の異世界からも浮きに浮きまくっていた。
一方の女の方は、中世ヨーロッパ風の異世界からは浮くもののある意味では墓地にフィットした格好だ。
彼女が身に着けていたのは、えんじ色の袴に黒の着物。現代日本でも大学の卒業式でしか見かけない和装だ。
肌は血が通っているのか疑うほど白い。おかっぱの髪と切れ長の目も相まって妖しげな雰囲気の美少女だ。
そんなプライベートは仲良くなさそうな2人が、名もなき棺桶の上に並んで立っていた。
少女の方が周囲の棺桶を見回して。
「数万人は下らない」
それだけ呟くと、扇子を開いて口元を隠す。
その口元には笑みが浮かんでいた。
「全然大丈夫。ただ、先にユイコさんにチート使ってもらえると楽かな」
「そう、確かに、1人ずつ片していくのも面倒」
ユイコと呼ばれた少女もまた女子の平均よりは小さく、華奢だ。
だが纏っているオーラからは底知れない圧を感じる。
それを感じ取っているから男の方も遠慮がちな口調なのだ。
おもむろに扇子を扇いだ瞬間、そのオーラがどんどん強く深くなっていく。
それに伴い周囲の空気がざわつきだして、それに伴い棺桶がガタガタと音をたてはじめた。
風で揺れているのではなかった。
棺桶が1つずつ内側から開けられ、中から半分腐った死体が起き上がってきた。
地平線の先まで広がる棺桶という棺桶からゾンビのように這い出してきたのはタオユエンの乱で斃れた元ロンド・カクラの兵士たち。
彼らは生きている時と変わらない動きでユイコのもとへと集まっていく。
「【Seven Nation Army】。さ、しまってくれる?」
「もちろん。【Big Poppa】!」
リュックサックの蓋を開くと、中はブラックホールのように暗かった。
そう。このリュックは異空間に繋がっており、無限に物や人が収納できる。
ドローンで公園を燃やすことが目的なのではなかった。
シスウやヒイラギは囮。
ビートルバムの真の目的は、兵力の確保だった。
いかかでしたか。
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私たまたま来ただけですねんという方は、また気が向いたら読みに来てください。




