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13話「猫耳もふもふ美少年」


「ふぁっ!」


目が覚めたら大人の姿のリル様に抱きしめられていました。


もふもふのお耳としっぽを生やした三歳児のお姿のリル様だから同じベッドで眠ることを許可したのに、朝起きたら大人の姿になっているなんて詐欺です!


大人の姿のリル様の頭にも、もふもふの猫耳が生えていました、あの耳を思う存分触りたい……など一瞬ですが不埒(ふらち)な事を考えてしまいました。


「ん……、おはよう……アリーゼ」


目を覚ましたリル様が、「おはようのキス」私の額に口づけを落としました。


「きゃあっ!」


不意打ちのキスに驚いて、リル様を思い切り突き飛ばしてしまいました。


ドスンと音がして、リル様はベッドから転げ落ちました。


「痛っ……」


「すみませんリル様! おけがは……!」


「お嬢様! 今の悲鳴はいったい!」


メイドのエミリーがほうきを片手に部屋に入ってきました。


どうしましょう! 人型のリル様をエミリーに見られてしまいました!


「ニャー」


ですがリル様はいつの間にか猫の姿に戻っていて、エミリーの後ろに隠れました。


人型のリル様と一緒にいるところを見られなくて、ホッとしました。


「あの……これは、リコルヌが……ネズミ、そうネズミをくわえてきたから驚いてしまって……それで」


「それでリコルヌを叱ったのですか? 猫は飼い主にネズミや鳥の死骸を持ってくることがあります、ですがそれは飼い主が大好きだからすることなのです、叱らないでください」


「ごめんなさい」


「行きましょうリコルヌ、ミルクをあげます」


「ニャー」


リル様はしっぽを立ててエミリーについて部屋を出ていきました。


リコルヌがねずみを獲ってきたと嘘をついたのは私ですが、リコルヌを叱りつけた悪者にされて、ちょっとだけ傷つきました。





「アリーゼ、まだ今朝のこと怒ってるの?」


「怒ってません」


今日は平日なので授業があります、私は生徒たちが登校して来る前に教室に行き、部屋の掃除をしていました。


朝の掃除はリル様と一緒にしているのですが、今朝あんなことがあったので気まずいです。


「あのまま人の姿でエミリーに会えないでしょう? 俺は独身女性の部屋に忍び込んだ変態、アリーゼは婚姻前に男を部屋に連れ込んだ痴女になってしまうからね」


「ち、痴女……!?」


なんてはしたない言葉なのでしょう。


「痴女って言葉だけで、顔を赤くするなんてアリーゼは可愛いね」


リル様にほうきを持っていた手を掴まれ、背後から抱きしめられました。


「リル様離してください、もうすぐ生徒が来てしまいます」


「誰もいないところでなら、ずっと抱きしめていてもいいの?」


「そ、そういう訳では……」


「今朝のことはごめん、アリーゼを悪者にして悪かったよ、反省してるから許して」


リル様が美しい声で私の耳元でささやきました、リル様の吐息が耳にかかってくすぐったいです。


「もう怒ってないですから、離してください」


「額にキスさせてくれたら離してあげる」


「えっ……!」


額への口づけは今朝したばかりですよね?


「アリーゼ……」


リル様が私の頬に手を当て顔を近づけてきました……あれ? キスをするのは私の額でしたよね? でもこの角度だと……私の唇とリル様の唇が接触してしまいます。


「だ、だめです……! リル様……!」


リル様から距離を取ろうとしたとき、ガタン……と音がして、音がした方を見ると、教室の入り口に何人かの生徒が集まっていました。


「みんな早いねどうしたの?」


リル様が私から体を離し、何事もなかったかのように生徒に対応します。


「学校に早く行って、先生に分からないところ質問しようと思って」


「ごめん、俺たち邪魔しちゃったね」


「私たち、外で遊んでいるから続きしてていいよ」


ばっちり子供たちに見られていました! こんな破廉恥な行為を子供達に見られてしまうなんて、教師失格です!!


「アリーゼ先生、大丈夫? お顔が真っ赤だよ?」


「アリーゼ先生は(うぶ)だからなぁ~~」


「心配しないで、パパとママがそういうことしてるの見たことあるから、私たち免疫があるの」


「みんなそこまでにしてやって、アリーゼが立っていられなくなってしまったから」


私は顔を手で隠しその場にへたり込みました、今はとても子供たちの顔を見られません。


「アリーゼ先生、ごめんね」


「私たち気にしてないよ」


「アリーゼ先生、立てる?」


子供たちが声をかけてくれましたが、返事をすることができませんでした。


「アリーゼ先生は午前の授業を休みます、ボクはアリーゼ先生を部屋に送り届けて来るから、みんなが教室に来たら自習するように伝えておいて」


「リルさ、リル先生……私は平気です、ちゃんと授業できますから」


「無理しなくていいよアリーゼ先生、自分では気づいていないようだけど、今のアリーゼ先生はトマトのように赤い顔をしているんだよ、とても授業ができる状態じゃない」


今の私はそんなにひどい顔をしているのでしょうか?


「ちょっ……リル様!?」


ぼんやりしていたら、リル様にお姫様抱っこされてしまいました。


「動かないで、落としたらアリーゼにけがをさせてしまうからね」


私を抱え教室を後にするリル様、背後から子供たちの「ヒューヒュー」という声が聞こえてきました。


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