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9.ハンバァーーーグッ!!!!


 ……。


 目をすぐにそらされた。

 が、重要なのはそんなことじゃない。あれは間違いない。見間違えるはずもない。


 俺はすたすたと、その子の所へ歩いていって、声をかけた。



「え~っと、もしかして…」

「ひ、人違いですっ!」

「いや、でもさっき目あったからさすがに」

「人違いですっ!」


 ふと彼女の隣にある紙袋に目がいく。

『ヴィンヴァン』と書かれている。有名なゲーム会社の名前だ。このショッピングモール内にもある。そして俺もそこでゲームを買ったことがある。最新のソフトが必ずあるのだ。オンラインで頼むと発売日よりも数日遅れることが多い。だから俺はゲームソフトは主にここで買っている。


「それ、ヴィンヴァン…」

「!? み、見ないで下さいっ!」


 慌てて彼女はそれを隠そうとする。その拍子にベレー帽が少しずれてしまう。

 そしてその隙間から顔が少し見えた。

 うん、やっぱり間違いないわ。


「……小野さん、だよね?」

「……お、お、小野さん? だ、誰ですかね? 私は、よ、ヨネギですが…」

「…ヨネギって、もしかしてそのソフトの中から取った名前?」

「うっ…」


 ヨネギ。最近発売されたRPGの主人公の名前だ。俺も最近やっているから知ってる。

 ヨネギと聞いてふと浮かんだのがそれだったので聞いてみたら、体をびくりとさせていた。


「やっぱり、小野さんだよね?」

「……はい」

「あ~やっぱり。すっきりした。じゃ!」

「…………え?」


 誰か分かったらすっきりしたので、俺はその場を後にする。

 さっきから手元のブザーが振動していて早くハンバーグを取りに来いと言われているのだ。

 小野さんもプライベートで俺と会うなんてあんまり望んでないだろうし、あんまり話をすることも望んでいないだろう。それに俺には理恵が待っている…。


 待っていろ理恵。お兄ちゃん、今行くからな……!








 


「おなかいっぱ~い!!」

「ほら、理恵。お口ふきふきしようね~」

「うむ、むううむ」


 食べ終わって口の周りがデミグラスソースでいっぱいの理恵の口を凜花が拭いている。

 微笑ましい光景だ。だが、俺は失敗した。理恵と凜花の前に座っているため、理恵の口と手をふきふき出来ないのだ。俺がしたい。でも、妹二人が仲良く口を拭いているのを見ていた気持ちもある。

 俺は一体、どうすればいいんだっ!!



「ほら、ゆう兄。変な顔してないでいくよ」

「いくよ! おにい!」

「え、あ、うん」


 俺が悩んでいるとも知らずに! この二人は! 

 ……まあいいか! 二人とも可愛いし!





 ***


 

 ショッピングモールを後にし、俺たちは家の近くの公園にやってきた。


「おにい! いやあ!」

「ほれほれ、速く逃げないとタッチしちゃうぞ~」

「あははははは! おにいはやーい!」


 俺は今、公園で理恵と追いかけっこをしている。俺が鬼で理恵を追いかけ続けている。冷静に考えれば何が楽しいか分からないが、理恵が楽しそうなので俺も楽しい。最高に楽しい!!

 そして凜花はそれを見ながらベンチに座っている。まあ荷物を抱えながら遊ぶわけにも行かないので荷物番って感じだ。


「ほれほれ~」

「あぶな~い!! あははははははは!」

「ほれほれほれ~」

「あははははははは! あ!」

「ん?」

「おにいあれやって!」


 理恵は立ち止まり、ブランコを指さしてニコニコしている。


「次はブランコがやりたいのか?」

「うん! ぶらこやる!!」

「よ~し、じゃあ……よし、おいで」

「やった~!」


 俺がブランコの上に乗り、その上に理恵を乗せた。

 そして理恵に両手で握らせ、俺は片手で理恵を抱えて、片手で鎖を握る。


「じゃあ、理恵一等兵! 準備はいいか!」

「いえっさー!」

「発進!!」

「はっしーん!!」


 いつものお決まりをする。以前、パピーと一緒に見ていた戦闘機の映画を見て、ハマったのだ。サブスクの視聴中の所にはいつもその映画がある。理恵はずっと見てるのだろう。俺もたまに理恵と一緒に見てるし。


「うわああああああああああ!!」

「ぶ~~~ん!!」


 口で戦闘機っぽい音を鳴らしながらブランコを揺らす。もちろん、理恵が乗っているのでゆっくりだ。それでもまだまだ小さい理恵からすれば大興奮だった。


「ぶぶぶぶぶぶぶ、ぶ~~~ん!」

「あははははははは!」



 ブランコを揺らし続ける。理恵が満足するまでそれを続けた。

 その次は滑り台。そしてまた鬼ごっこ。俺たちははしゃぎながら4時くらいまで遊び続けた。









「スゥースゥー」

「寝ちゃったな」

「あんだけはしゃいでたらそりゃすぐ寝るよ」


 帰り道。理恵を抱っこしながら帰っていると、理恵が寝息を立て始めた。

 今日は俺と一緒で朝からテンションMAXだったからな無理もない。むしろお昼ご飯の後に眠くならなかったのが不思議なくらいだ。

 俺の服に涎を垂らしながらすやすやと眠っている。ふっ、可愛すぎる。


「帰ったらお風呂入らせて、ご飯食べたらすぐ就寝かな、これは」

「かもな~、あ、俺がお風呂もご飯も寝かしつけもやるから」

「…はいはい。どうぞ」

「よっしゃ」

「それはそうと、ゆう兄、明日も休みなの? 部活」

「ん、そうそう。明日も休み」

「明日はなんかすんの?」

「いや~? 特に何も考えてないな。ゲームして、理恵とお昼寝して、理恵と映画見て、風呂入って寝るくらいか?」

「そう、じゃ丁度よかった。明日も私ちょっと出てくるから」

「そうなのか。友達か?」

「美咲ちゃんに勉強教えてもらってくる」


 そうか。そう言えば、凜花は今年受験生だったな。

 でも美咲? あいつに教わるつもりか? やめた方がいい。俺は泣かされた。

 

「…なんだ、勉強か。美咲恐いからお兄ちゃんが教えてやろうか?」

「……ゆう兄より美咲ちゃんの方がいいじゃん」

「なっ、なんで…」

「え、だって美咲ちゃんの方が頭いいし…」


 くっ! それを言われては反論できない。実際美咲は俺よりも成績がいいから。

 それでも俺は諦めない! 俺も妹に教えたい!! 


「そ、それはそうかもだけどな、美咲、怒るつ恐いぞ。それに、数学ならお兄ちゃんの方が得意だ」

「美咲ちゃんは私には優しいから大丈夫。厳しいのはゆう兄にだけだよ。あと数学は私も得意だから大丈夫」

「くっ、……」


 全てねじ伏せられただと!

 諦めるしかないのか……!


「でもな、凜花…」

「ゆう兄。ゆう兄のことはちゃんと信頼してるよ。でも、私もかっこつけたいの。ゆう兄に頼らずにゆう兄と同じ学校入りたいの」

「……」

「これまでゆう兄に頼ってきたじゃん? だから今回は頑張ってみたいの」

「……」


 い、妹が成長している…!

 今まで俺に何でも頼ってきたのに! 中学校の勉強とか、生徒会の運営とか、悩みとか全部俺と一緒に解決してきたのに。

 妹が頑張っている!! 

 くっ、少し泣きそうだけど、これを応援できなくて何がお兄ちゃんだ!!


「わ、わかった。じゃあ、頑張ってな。でも無理はすんなよ。なんかあったら俺に泣きついてこい。俺はお兄ちゃんだからな」

「うん。ありがと」


 唐突な妹の成長。

 なんかこう、成長している喜びと、離れていく悲しみがあるな。


「お、ついたな」

「うん。じゃあ、理恵のことお風呂にいれたげて。私先にお母さん手伝ってくるから」

「ん、了解」


 凜花は玄関を開け、先にリビングへと引っ込んで行った。夕飯づくりを手伝いにいったのだろう。


「ほら、理恵。お家ついてぞ~」

「…んぅ」

「起きてお靴ぬぎぬぎしようね~」

「んん、ん」


 玄関に座らせると理恵は寝ぼけ眼のまま、靴を脱ぐ。


「よし偉いぞ~。次はお手々洗ってお風呂だ」

「……おふろ~?」

「そ、お風呂だ。今日はお兄ちゃんと入ろうな~」

「おにいとおふろ…。おにいと!?」

「そ、お兄ちゃんとお風呂」

「はいる! おにいとはいるよ!!」

「よしよし、じゃあお手々洗って、お着替え持ってこような」

「うん!」


 お風呂と聞いて元気になった理恵は、トタトタと洗面所に走って行く。俺も後に続いて、洗面所へと向かった。





 




 お風呂も終わり、ご飯も終わった。

 理恵もやっぱり疲れていたのかすぐに寝た。



「んじゃ、俺も寝るわ~」

「は~い、おやすみ~」

「おやすみ~」



 俺も寝ることにし、自分の部屋に入り、電気を消した。

 いや~、いい休日だった!! 明日も楽しみだ!

 

 

 

 


 

 







 

 

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