殺人姫に離別の花束を 4
短めですが、次話もすぐ更新します。
『……へぇ。それは私も見たことない魔法ね。でも、消耗も激しいみたいね、そんなかっこう良い魔法カナキ君には似合わないわよ』
「……余計なお世話ですよ」
そう言いながらも、僕は立っているのがやっとだ。その間にも、また新たな魔物たちが続々と床から這い出てくる。流石に先ほどのシヴァほどの強さは持っていなさそうだが、だからといって、今の僕で相手できるとも思えなかった。
「――私が後ろの敵を相手します。カナキ先生は前の敵に集中してください!」
「なっ! アルティ君!?」
背中からそれが聞こえたとき、僕は驚きの声を上げた。
思わず首を後ろに向けると、泣いていたときが嘘のようにしっかりと僕と背中合わせになって立ち、右手に魔力執刀を展開するアルティの後ろ姿があった。
「アルティ君、それは……」
「えへへ、びっくりしましたか? 実は……エトちゃんにこっそり教えてもらって、魔力執刀の練習をしてたんです。エトちゃんは、既に独学で習得してたらしいから……」
言われて僕も、エトが人並み以上に繊細な魔力調整が得意だったことを思い出す。魔力執刀は、常に刃の部分の出力を調整せねばならないため、下級魔法の中では五指には入る難度の魔法だが、あのエトならば、独学で習得したとしても頷ける。だが、あのアルティが、エトに教えてもらったとはいえ、ここまで魔力執刀を扱えるようになるには、かなりの努力が必要だっただろう。
「カナキ先生の得意魔法がこれだって聞いたから、もし私が完全に習得出来たら……エトちゃんと二人で先生に見せて驚かせようって……!」
「…………そうだったんだね」
アルティの言葉が最後は途切れ途切れになり、瞳も伏せられる。
そして、当たり前のようにその隙を逃すことなく、骸骨のような魔物が走り出し、手に持った簡素な剣をアルティに突き立てようとする。
「――フッ!」
アルティの前に回った僕は、その剣を魔力執刀で両断し、逆手の拳で骸骨の頭蓋骨を粉砕する。
「――そんなに力んでいたらすぐに魔力を使い切ってしまうよ。それに、刃はもう少し薄くしないと、逆に切れ味が悪くなってしまうよ。“今度”僕がちゃんと教えてあげるよ」
刹那、後ろでアルティが息を呑むのが伝わってきた。
「……はい、よろしくお願いします!」
その語尾は、明らかに濡れていたが、それでも、彼女が必死に前へ進もうという気持ちが伝わってくる返事だった。
『……ふふふ、泣かせるわねぇ、カナキ君。でも、そのアルティちゃんの前であなたを殺したら、彼女はどんな顔をするのかしら。今から愉しみだわぁ!』
「――――今回お前の遊びに付き合う気はない。そう言ったはずだが」
居間の壁が盛大に吹き飛んだ。派手な破砕音と共に、今のでアリスの結界ももろとも吹き飛んだことが、特徴的なガラスの割れるような音で分かった。
『ッ!?』
「カナキ、遅くなったな」
「ッ……あなたは……」
廊下の奥から現れた人物――マティアスは静かに、だが妙に響く声でそう言った。
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