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世界を分かつ戦い 2

2話前にて、一部表記に間違いがありました。

「カレンの死体を操り」とありましたが、正しくは「アリスの死体を操りながら」になります。つまりカレンは生きております。

申し訳ないです…

「お義母様、お気持ちは有難いのですが、あの程度の攻撃でしたら私でも対応できます。一応最低限自分の身は護ることができますので戦闘になったらお気になさらず」

「あら、ごめんなさい。私ったら、息子のお嫁さんが傷ものになったら大変って一心で……気を付けますね」

「あのさ、だからなんで僕本人なしで勝手にそこで話が進んでるんですかね……!」


 言いながら、僕は一気に戦闘態勢に入る。魔力は先ほど熾しているので即座に戦闘に入ることができる。一番警戒すべきはもちろん聖だが、静香もこれまでの戦闘を見る会義理決して無視して良い相手ではないし、本命であるイリスに至っては完全に未知数だ。確か以前イリス自身がもっている精霊装の能力は存在の隠匿と六道の精霊装全ての操作だったはず。とんでもない能力であり、そのせいで『シャロン』の使用すら安易にはできない。本当ならまずは聖から二人を分断したいところだが……。

 そのとき、遠方から微かに漏れた魔力を探知し、直後に静香の胸に斬撃が走った。


「これはっ……!?」「あら……」


 既に施していた防御魔法を突破し喰らった斬撃に驚く静香と、身をかがめ攻撃を躱し、魔法の出所の方を見たイリス。その視線の先には、死体を操り『次元斬』を放ったアリスの姿があった。「アリスさん!」


「ちょっと、大声で名前を呼ばないでよ! 私がこっちにいるってバレるじゃ、きゃっ!?」


 もうバレてます、と言い返す間もなく、『傀儡』を複数体召喚した静香が、すぐさまアリスの方へそれらを差し向ける。エリアスの死体とあちこちに仕込ませていた死体でそれらを迎え撃つアリスを最後まで見届ける間もなく、『上級治療』で傷を治そうとしている静香へ狙いを定める。


「ちょ、本当に容赦ないわね……!」

「生憎こちらも余裕がないんでね……ッ」


 『霧幻泡影』を纏わせた拳を振るおうとした僕だが、後ろから気配を感じて横に跳ぶ。僕のいた場所に神速で剣を振るった聖が、少しだけ悲しい顔を作りながら言った。


「カナキさん、ご覚悟を……!」

「ッ、いつか言ったかもしれませんが、あなたと戦うつもりはありません!」


 即座に『疾風』を発動して脚力を向上させた僕は間合いを詰めると、渾身の前蹴りを放つ。

 それを聖は当然のように剣の腹で受け止めるが、先ほどの言葉の通り、聖と戦うつもりはない。足裏に剣が触れた瞬間、風の魔法を発動させる。


「『疾風炸裂(ウィンダル・バースト)』!」

「!」


 放たれた中級魔法は足から暴風を生み、聖を木の葉の如く吹き飛ばした。ダメージはないが、一時的にでも彼女と距離を稼ぐことに成功する。そのうちに静香を叩かんと改めて向き直るが、その時には彼女は既に最低限の治癒を終え、魔法を発動させようとしたときだった。


「『絶対魔法(アブソリュートマジック・)地獄嵐(ヘルテンペスト)』」

「くっ!?」


 行使されたのは最早何度目にしたかもわからない特級魔法。僕が咄嗟に発動した『魔力障壁』を容易に砕き、大規模の灼熱の嵐が僕を襲った。


「……ッ」


 吹き飛ばされないよう足に魔力を集中させ、なんとかその場に踏みとどまったものの、触れただけで体を燃やす業火の風が絶えず襲い続ける。気を失いそうになる激痛は、再生を繰り返す僕の体質により繰り返し続くが、幾度となく経験した痛みへの耐性により、僕は嵐が吹き止むまで冷静な判断力を失わずにすんだ。


「――そこだ」

「ッ!?」


 魔法の発動源へ一足で間合いを詰めた僕に対し、静香はすぐさま鉄扇を構えたものの、表情には僅かな動揺が見て取れた。特級魔法が直撃した後にすぐさま反撃に転じるとは流石に思っていなかったのだろう。速度を重視した一撃に反応できず、静香は顔面に僕の拳をまともに食らった。普通ならば即死のダメージだが防御魔法に身を包んでいたおかげで衝撃は軽減される。顔をのけ反らせた後、きっと僕を睨んだ。


「ほんと容赦ないわね……普通母の顔を本気で殴れる?」

「そういう風に僕を育てたのはあなたでしょ」

「まあ、ね!」


 扇子による突きを躱すと同時にもう一発脇腹にフックを決めると、静香が苦悶の表情を浮かべ体を九の字にする。近接戦闘の技量は静香もかなり高いレベルになるが、事近接戦においては悪いが負ける気がしない。正直一緒に鍛錬した聖天剋と比べると目の前の静香の技術は雲泥の差があった。この距離で勝機はないと静香も判断したのだろう。『流動(フロウ)』を交えて後退するが、その呼吸を読んだ僕も同じく『流動』でぴたりと付けば静香の表情にも流石に焦りの色が見え始めた。「しつこい……!」

 高速で『傀儡』を召喚し、僕に向かわせつつ後退した静香に代わり、前に出て攻撃しようとしていた『傀儡』は足刀による中断蹴り一発で霧散させる。吹き飛ばすと、一気に決めようと二つ同時に魔晶石を砕く。聖を遠ざけている今、少しでも戦力は削っておきたい。


「『黒淀点(ダークネス)』」


 発動したのは僕の持つ最強魔法。漆黒の影が僕の周囲に広がり、それを待たずして僕は静香に向かって飛び出す。その際に周囲の気配を改めて探るが近くに聖の気配はない。誰かが足止めをしてくれているのか? 


(だが、どちらにせよ好都合なことには変わりはない……!)


「――カナキッ!」

「ッ!?」


 セシリアの叫び声を聞いてはっと周囲に目を向けた時、もうすでにイリスはすでに間合いまで迫っていた。その両手には見覚えのある精霊装――『リッパ―』が握られていた。


「あはっ!」

「~~~~~~~~~~ッッッ!?」


 狂気的な笑みを浮かべるイリスの握る精霊装は大量の眷属を使役できるのと同時に、その鎌により少しでも傷を負えば対象を死に至らしめる僕にとっては天敵となる存在だ。僕は全神経を集中させイリスの攻撃の軌道を予測し、間一髪回避に成功する。イリスの次の攻撃が来る前に後退した僕は代わりに『黒淀点』から黒球を複数飛ばすが、あらかじめ予期していたのか、それらは悉く空を切り、結局はイリスと静香の合流を許してしまう。


「イリス様……助かりました」

「お義母様、油断はしていないとは重々承知ですが、それでもカナキのことは常に予想の先を行く存在だと考えた方が良いです。カナキの能力もそうですが、精神性も異常です。たとえ火あぶりにされても体が再生さえすれば、常人ならショック死するような痛みでも関わらず敵の喉元に食いつくでしょう」

「君、本当に僕のこと人間だと思ってる?」


 ひどすぎる僕に対する分析と、先ほど本気で殺す気だったとしか思えない『リッパ―』による攻撃で、逆にイリスに対する評価を改める。イリスはてっきり僕を生け捕りにするのが目的だと考えていたし、あまり向こうの戦力として数えていなかったが、手にした精霊装、そして先ほどエリアスの『次元斬』の初見で躱したところを見ると、イリス自身もかなりの実力者なのは確かだ。気配遮断の能力も彼女の持つ精霊装はもっているようsなので、常にイリスのいる位置は把握しておく必要がある。


「勘違いしないでね、カナキ」


 そこで僕の思考を読んだようなタイミングでイリスが僕に向けて言った。

「別にあなたを殺したいと思っているわけではないわ。私とお義母様二人を相手にする……“この程度”の状況であなたが死ぬなんて思っていない、いわば信用の表れよ。誇りに思っていいわ」

「そんな僕にデメリットしか信用、全然嬉しくないんだけど、ね!」


 再び飛び出した僕に対し、今度は静香がそれを読んでいたかのように前に出て、あらかじめ構築していた魔法を発動させる。「『特級魔法――』」


「させませんよ」


 特級魔法を連続してまともに喰らえばストックなどあっという間に無くなってしまう。

体より先に『沼影(マッドスワンプ)』を静香へと伸ばし、彼女を呑み込もうと仕掛ける。当然それを静香は横に跳んで回避するが、それにより魔法発動のタイミングが遅れ、先に僕の間合いに静香が入る。


「特級魔法をそんなポンポン撃たれても困りますからね!」

「もう、本当に厄介な子ね!」


 特級魔法発動前に潰す、それは結果的に僕の予想しない形で実現した。


「ッ!?」

「ぅお……!?」


 どこかに潜むセシリアの『電撃』が静香を襲い、僕は僕で突然横合いから現れたイリスの一太刀をすんでのところで躱すのが精いっぱいだった。


「ッ、こうも気配がないと厄介このうえないわね!」

「それはお互い様ですけどね……!」


 『絶対魔法・透化』で姿を完全に眩ませているセシリア、そして自分の気配を遮断させる能力に長けた精霊装を有するイリス。お互いの陣営の見えざる刺客に対し、僕と静香どちらも意識を割かねばならないことに舌打ちする。

 先にイリスを倒せば話は早いが、眷属を大量召喚できる『リッパ―』を相手にそれは現実的ではないし、そもそも聖がいつ戻ってきてもおかしくない。大体、誰かは分からないが、あの聖を相手に既に一分以上足止めしてくれているのだ。状況は変わらず厳しいが、今誰か一人でも落としてもおかないと手遅れになる。やはり多少無茶でもここで静香を突破するしかない。


『セシリアさん、アリスさん、少しの間イリスの相手をお願いすることはできますか? その間に僕が母さん、静香を殺します』

『ッ……お前のことだ、今更実の母を殺すことに躊躇いはないのかとか、そのようなことは聞かないが、具体的にどれくらい時間を稼げばいいのだ?』


 『思念』を使った僕の問いかけに対し、話の早いセシリアがすぐさま順応し、必要なことを問うてくる。一瞬だけ考えたあと、僕は『十……いや、八分』と答えた。本当はもっと短い時間を答えたかったが、想いだけで作戦を組んで破綻したのでは元も子もない。


『ふむ、中々難しい時間だな。私の魔法も完璧ではない。時間が経てば経つほど位置も特定される確率は高まる。それはアリスも同じであろう。さて、どうしたものか……と考えたいところだが、事は一刻も争うのも事実だろう――アリス、覚悟を決めるぞ』

『ちょっと! 勝手に決めないでよね!』

『ここで徒に時間を浪費すれば僅かな勝機さえも逃すことになり、我々の敗北は確定する。ならば多少無茶でもやるしかあるまい。ここを逃せば必敗となると考えるのはカナキだけでなく私も同じだ。時間を浪費するわけにはいかない』


 僕の意志を汲み取り、短い言葉だけでアリスを説得するセシリアの存在はこういう時にとても貴重だ。セシリアの切迫した声音が伝わったのか。おかげでアリスも数秒後すぐに同意を示してくれた。


読んで頂きありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
教祖様が活躍してる…! 尊すぎる… お母様はきけ好かない存在ですが、教祖様の純朴な下僕としては優秀ですので、この点だけは高評価です。
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