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二大巨頭を打倒せよ 8

更新遅くなり申し訳ありません。

「あのときと違って私の方も万全よ。あの悪魔を産み落とした、いわば諸悪の根源、ここで根本から焼き尽くさせてもらうわ」


 カレンの好戦的な言葉に対し、静香は表情を平静に戻し、懐から得物である鉄扇を取り出した。


「カレン・オルテシア……ふふ、まさかこういう形で再会するとはね」


 そこで静香の魔力が飛躍的に増大した。

 『賢者の石』の力を開放し、それまでと比較にならないほどの魔力をもって傀儡を一気に量産する静香に対し、あらかじめ準備していたカレンが動いた。


「『颶風纏う麒麟(アル・シド)』」


 全身を黄金色が包んだ状態で突進したカレンは、その目にも留まらぬ速さで瞬く間に傀儡達を葬り去りながら静香へと迫る。イェーマすらも圧倒したその魔法を前に、まさに同じ状態になった静香の表情が一気に厳しくなる。


「くっ……!?」


 直進してくるカレンに対し、静香が発動させたのは『時空の壁』。触れれば『時空の壁』の効力に巻き込まれてしまうため、カレンは魔法の前で強引に方向を変え、カレンより遥か上空へと舞い上がる。


「言うだけあって流石に厄介な子ね……!」


 数秒の間に相手の実力を再確認し冷や汗をかく静香に対し、カレンは一息吐く暇もなく、『颶風纏う麒麟』を発動したまま、併用して他の魔法を発動させる。


「『落陽(サンセット)』」


 同時に六つも出現させた太陽の如き大きな火炎玉を前に静香は苦笑いを浮かべる。


「あなたも『賢者の石』を持っているわけ?」

「そんなものを必要とするのは二流までよ。そんなものは私には必要ないし、身の丈に合わないドレスを一流の女は着ないものよ。あ、これ、あなたのこと言ってるって分かってるかしら?」

「本当に威勢の良い子ね……!」


 カレンに負けじと静香も傀儡を三体前方に出し、特級魔法を撃つ構えを見せる。そして、カレンが突然滑降し、単身で静香に迫ったのも同時だった。


「ッ!?」


 未だに『颶風纏う麒麟』を発動させているカレンは当然一瞬で両者に合った間合いをゼロにする。大技の魔法を準備していた傀儡達を置き去りにしたカレンが両手に持った剣を振るう直前で静香がなんとか『金剛障壁』を展開させる。


「無駄」


 だが、堅牢に展開された黄金色の障壁は、カレンが振るったたったの一刀で両断される。カレンの持つ双剣『緋双藍』の能力である魔法無効化が働いただけだったが、静香からすれば咄嗟とはいえ、確かに大量の魔力を注ぎ込んで形成させた障壁だったために、魔法を発動させた当人の静香も目を見開く。「どんな切れ味してるのかしらね……!」


「あなたの魔法が貧弱すぎただけよ?」

「ふっ、本当に……!」


 喋りながら、しかし静香の行動は迅速かつ的確だった。カレンの二太刀目に合わせ、静香は懐から鉄扇を取り出すと、その一撃をしっかりと受け止めた。上級魔法すら容易く斬り裂ける一方で、物理的な攻撃に対しての特効があるわけではない。


「あら、そういえば近接戦も得意だったわね。忘れてたわ」


 だが、カレンは自分の一撃を受け止められたことに多少驚きながらも、すぐにそのまま高速で攻撃を続行する。『颶風纏う麒麟』により、通常の何倍もの速度になっているカレンに静香が対応できるはずもない。


「ッ、ギリギリね……」


 だが、静香もそれは織り込み済みであり、カレンが突っ込んできた時には既に大量の傀儡をカレンへと殺到させていた。かなりの速度で肉薄させた傀儡達だったが、その実カレンと静香の間に割って入ったのは本当にギリギリのタイミングだった。


「ッ、しかもこの始末……」


 そして更に静香を驚愕させたのは、『傀儡旅団』により殺到する夥しい数の傀儡達をカレンは全て両手に握る二振りの双剣で全て斬り捨てていることだった。本体の危機のため、タイムロスを生じさせる大技を控え、特攻の役割に充てたというのに、大量の傀儡は一体一秒も時間を掛けさせることもできず、急所を的確に刺し、貫き、斬られ、原型を留めることもできず灰燼と化していく。


「本当に面倒ね……」


 だが当の本人であるカレンは本体に迫ることができないことにフラストレーションを溜める。殺到する傀儡達を機械的に処理し続けながら静香との距離を詰めんとする。

 だが、流石に無限の魔力を有する静香に対し、いくら魔力量が他の『メル』の怪物たちと比べても桁違いなカレンでも分が悪かった。徐々に殺到する傀儡の数が増え、攻勢から防戦へと緩やかに意向することに対してカレンは忌々しく思いながら次の策を打つ。上空に待機させていた六つの『落陽(サンセット)』を落下させ、自分もろとも傀儡、そして静香を焼き尽くさんとする。


「ふぅん、そう来るの……?」


 静香はカレンに傀儡を殺到させる手を止めず、その中から一体の傀儡を自身の下へと引き寄せる。『傀儡旅団』の発動中静香自身は大技を使えないため、代わりに傀儡に魔力を注ぎ込み、特級魔法を発動させる。


「中心地にいるのは意図してだと思うけれど、それじゃあこの状況はどうするのかしら」


 静香が『絶対魔法・地獄嵐』を発動させたことで、上下から挟撃される形になるカレン。傀儡に対応を割かれていたカレンは、数多の傀儡もろとも巨大な爆炎に巻き込まれる。

 視界が炎一色で埋め尽くされる中、静香は油断せずカレンの魔力を辿ろうと周囲を警戒する。


(あの黄金色の魔法で逃げたのは見えなかった……魔力反応も消失したけれど、こんな簡単に倒せる相手なはずは……)


「――――考え事?」


 思考を遮るようにかけられた声と背後から僅かに感じた気配を察知した時には静香は反射的に鉄扇を構え防御の姿勢に入っていた。


「ッ……がっ!?」


 重い衝撃を鉄扇に受けた直後、腹部に受けた鈍い痛みに、カレンの狙いがはじめから二発目にあったのだと静香は悟った。


「地に這いなさい」


 施していた障壁魔法を貫通し届いた痛烈な蹴りにより、静香は遥か真下にあった地上へと吹き飛んだ。






Side カナキ


「ふぅ……!」


 『魔力執刀』を突き入れた敵を地面に投げ捨て、僕は汗で張り付いた額の髪を拭った。


「さあ、次は誰かな?」


 遠巻きに僕を眺める皇国の兵士達に僕は努めて冷静な口調で問いかける。ここまで大量の手練れを用意し、波状攻撃を仕掛けているにも関わらず、“ストック”は着実に消費しているものの、僕が一向に倒れないどころか、逆にゆっくりと数を減らす自軍に対し、いくら強者揃いの相手といえど少なからず動揺はあるはずだ。相手の士気を削ぐために、僕はなるべく相手が不気味がるような調子で振る舞うことを心掛けていた。


「? これは……」


 そのとき、シール市街方向上空で突如現れた巨大な魔力同士のぶつかり合いに僕だけでなくその場にいた全員の視線が上に向いた。


「あれは……カレン、君か?」


 視覚強化したそちらを見れば、カレンが静香を蹴り飛ばし地に叩き落とすところだった。


「うわぁ、相変わらず派手にやってるなあ……」


 ナトラが使用していた魔法と同じものと思われる黄金色の光に身を包んだカレンを見て僕は苦笑するが、それと同時にアルティがカレンを見事説得したことに感服していた。話し合いの際にアリスが言っていた通り、カレンをこちら側に引き込む(厳密には皇国側に敵対させる)にはアルティが交渉するしか手はないと思っていたが、まさかこうも理想の展開に持ち込んでくれるとは思っていなかった。強かなカレンのことだから、いくつかの交渉事(まあほとんどが僕についてのことだろう)を呑むことにはなったと思うが、それでもカレンに静香の相手をさせるというのにはお釣りが返ってくるだろう。メルクース戦の様子では、静香一人ではカレンの相手をするには相当荷が重いだろうし、報告通りエトがこのまま閻魔を足止めすることができていれば勝機は生まれるはずだ。


『カナキさんっ!』


 その時、『思念』により届いたティリアの声に僕は我に返る。戦闘中に考え事に耽るのは論外だったが、逆に言えばそんなことを考えられるくらいには事態は好転しているのだろうと前向きに捉えた。


『ティリア君。アルティ君は無事カレン君を皇国側と敵対させることに成功したようだね』

『はい、私も間近で見ていましたが、アルティさんでなければ決して成功しない交渉でした……』


 ティリアの声音は喜びを確かに含んでいるものの、その中に見えた僅かな困惑の色をカナキは感じ取った。それについて気になったカナキだったが、しかしティリアが連絡をくれた用件について聞くことの方が先決だろうと考え、ティリアに『それで、どうしたのかな』と先を促した。


『はい、単刀直入に言いますが、カナキさんはそこを一旦離れて別の事案に取り掛かってほしいと考えています』

『別の事案? けど、ここはどうするんだい? 少し勢いは減ったとはいえ、まだ半分以上敵は残っているけれど』


 再び攻撃を再開した皇国軍を『黒淀点』で受け止めながらティリアに質問する。


『そこには今テオさんとマサトさんに向かってもらっています。マサトさんの守護者も回復しているので、お二人の戦力で今の相手ならば時間稼ぎはできると思います。テオさんとマサトさんにお願いしていた市街の敵についても既にセシリアさんにお願いしてあります。カナキさんにはそちらよりも今優先して排除してほしいターゲットがいます』

『ティリア君がそこまで危惧する相手なのかな?』

『はい。下手をすると、今優勢のカレンさんが負けるかもしれません』


 そこまでの相手なのか、と驚くのと同時に皇国にまだそこまで盤面をひっくり返すことのできる人材がいたのだろうかという疑念が頭をもたげたが、信頼しているティリアが言うのだから事実としているのだろう。『分かった……それで対象はどんな人かな』


『本当はカナキさん以外の人が向かった方が良かったのですが……覚悟を決めてください』

『覚悟? そんなのなんて今更……』

『排除してほしいのはカナキさんの妹です』


 ティリアはキッパリとした口調で言った。


『金木楓――それがカナキさんに始末してほしい相手です』


なるべく早く更新できるようにします…!

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうどざいます。 因みに二大巨頭って、母上と閻魔ですよね… それとも母上と妹ちゃん…? 何にしろ、この辺で3人ぶちのめして愛しの教祖様の元へ!! あ、それと妹ちゃんを例の趣味でソウルイーター…
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