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死刑囚、魔法学校にて教鞭を振るう  作者: 無道
大司教曰く、「友とは未知であり、未知とは娯楽である」
239/461

最終確認 上

「そうか」

「そうかって……それだけですか?」


 ミッシェルと別れた後、僕はすぐにエンヴィの切れ端を放棄し、新たに得た情報を聖天剋に伝えたが、彼の反応は淡泊なものだった。ミッシェルの時と違い、その短い言葉の中には、言葉通りの意味しか含まれていない、薄い紙切れ程度の軽い言葉だ。


「俺はいつでも準備が出来ている。それが七日後だろうが明日だろうが大した問題にはならん」

「中佐……昨日から気になってるんですけど、この方は何者なんです? 明らかに只者じゃないっていうか、やばい人オーラがすごいんですけど……」


 ティリアが恐る恐るといった調子で聞いてくるので僕は一応聖天剋に視線を向けて確認を取る。彼が何も言わずそっぽを向いたのを了承と取って、ティリアに答えを告げる。


「彼は聖天剋。先代の大司教を暗殺したすごい人だよ」

「ぅええええええええ……って、先代の大司教様って、確か病死したんじゃ……」

「表向きはそうなってるね。けど、それは実は皇国の威信を失墜させないための嘘で、本当はこの人に暗殺されたんだよ」

「ほ、本当にとんでもない人じゃないですか……ていうか、そんな人と中佐はなぜ面識が……」

「なんか倒したら仲間になってた」

「そんな人に中佐は勝ったんですか!? ていうか、喧嘩した後に友情が芽生えるって青春っぽいですね!」

「二十代後半になって青春はしたくないよ……」

「おい、その姦しい女を何とかしないといい加減殺すぞ」

「ひっ、助けてください中佐!」


 そう言って僕に飛びついてくるティリア君。それをぽふっと優しくキャッチするが、ティリアの様子に僕は少し違和感を覚えた。


「ティリア君、今日はなんだかテンションが高いっていうか……なんか軽いね」

「あっ……すみません、今はもう軍属でもなくなったので、結構素の部分が出てるっていうか、実は私、普段は結構エイラの前とかだとこんな感じなんですけど、不快でしたか……?」


 そう聞いてきたティリアの表情は見るからに不安そうで、僕は思わず苦笑しながら「いいや」と言った。


「副官としての君も好きだけど、今日みたいな歳相応な反応をするティリア君も魅力的だよ。でも、もう軍属じゃないっていうなら、僕も中佐っていう堅苦しい呼び名じゃなくて、ちゃんとした名前で呼んでほしいけどね」

「ッ、名前、ですか……」

「あっ」


 微妙な反応をするティリアを見て僕は瞬時に自分の失敗を悟る。いくら親交を深めるために相手の名前を呼ぶのが効果的とはいえ、一周り近く離れた男性から名前で呼ぶことを強要するなんてセクハラも良い所ではないか。日本にいたときは、これに近いことをする中年男性を見て忌避感を覚えたものだったが、どうして自分はこんな当たり前のことに今更気づくのか……。


「ご、ごめんティリア君。今のは別に強要したわけじゃないし、嫌だったら無理して言わなくても……って、こんなこと言ったら尚更言わざるを得ない感じになるよね。だから今の言葉はなしの方向で!」

「嫌じゃないです! か、カナキさん……」


 僕の言葉に半場被せるような勢いは、後半になって急に失速し、空気の抜けた風船のように、最後はごにょごにょと小さくなった。それでも、ティリアがはっきりと僕の名前を呼んでくれたので少し嬉しくなる。


「ありがとう、ティリア君」

「い、いえそんな!」

「……お前達、いい加減にしろ……」


 そこで珍しく殺気を放ち始めた聖天剋に僕たちもハッと我に返る。彼がここまで殺気をまき散らすのも珍しい。もしかして彼も名前で呼ばれたかったのかな?


「すみません。それでは、これからの方針を話したいと思いますが、その前に一つ確認してもいいですか?」


 そんな冗談はおくびにも出さず、僕は二人に目を合わせて言う。それでティリアも居住まいをただし、聖天剋も殺意を引っ込め、いつもの透明な気配へと戻った。


「僕はこの作戦で六道を二人石に変え、元の世界に帰りたいと考えています。それに対してあなた方二人はどうするおつもりですか?」

「ど、どうするつもりって……」

「つまり僕と一緒に来るかどうかということだよ、ティリア君。もしも付いてくるならその理由も含めて、僕が納得するように答えてほしいな」


 元々ティリアは僕の部下であり、聖天剋は敵だった存在だ。前者は部隊が壊滅し、最後の部下として僕に、そして後者は僕の実力を認め、現在の大司教、イリスを殺すことを目的として手を組んだのだ。義理堅いティリアのことだから、僕についてくるとは言うだろうが、義理だけではこの先、いつ寝首をかかれるか分からない。今は僕を信頼しているから付いてくるとしても、それがどの程度で、いかほど裏切られる可能性があるのかは把握しておかなければなるまい。そして、聖天剋のいたつては、そもそも現時点で前提条件が破綻している。僕は今、イリスではなく、六道を殺すことで異世界へと逃亡しようとしているのだ。そんな輩相手に、なぜ聖天剋が今も協力者としてここに身を置いているのか、危険だがここで確かめる必要があった。


謝罪です。

作中の「聖天剋」が序盤では「斉天剋」と表記されていた箇所がありましたので修正しました。

修正し忘れた箇所がありましたら分かる範囲で誤字報告で教えていただければと思います。申し訳ありません。

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