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死刑囚、魔法学校にて教鞭を振るう  作者: 無道
第二部 神曰く、死とは救いであり殺めるとは善行なのである
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ザギール激震 6

Side カナキ


 どんどん小さくなっていくアッシュの背中を見る。目的地へ向かって勇み立って向かうその背中はあまりに無防備で、だからこそ少しは僕のことを信頼してくれたのかな、と少し嬉しい気持ちになる。


「あなたはあなたで優しいですしね」

「…………」


「いいんですか? 早くしないと今度こそ彼女、ザギールの頭を潰しちゃいますよ?」

 なんせ僕の自慢の部下ですから。

 僕の言葉に聖天剋はポツリと言った。


「お前はアレだな、人誑しだ」

「へ?」


 いきなり出てきた予想外の言葉に僕は目を丸くする。


「知っているぞ。あれとて元はザギールの精霊騎士、この町に来て最初の頃はお前との信頼関係など全く構築されていなかった。それがどうだ。僅か三ヶ月足らずであの有様だ。俺という脅威を上手く利用して窮地に立たせ、それを自分で救いだして信頼を勝ち取るのも計算の内だとするならば、相当の狸だな」

「ははは、それは流石に買い被りすぎですよ」


 こうなればいいな、と思った程度で、あとは状況の流れ次第だった。それほど余裕のある相手でもなかったわけだしね。


「それで……どうです? 見ての通り僕はかなりしつこいですよ。もう諦めて僕と手を組みませんか?」

「弱者の仲間など必要ない」

「ええ、確かに僕はあなたより弱い。僕にもそれは分かっている。だからこそ――あなたより弱いからこそ、分かることがあり、出来ることがある。あなたはさっき、僕に二発もらってる。それはあなたにとってこの上ない屈辱だろうし、しかもそれが自分よりも弱い僕という弱者にやられたという事実が、更に怒りを、不快感を生み出す。例え仮面を着けようと、正体を隠そうと、あなたの声音、筋肉の動き、咄嗟にする仕草、一挙一動その全てが僕にあなたの心を教えてくれます――――ほら」


 僕の話している最中に接近、即死のハイキックを放ってきた聖天剋。その攻撃を軽々と躱して後退した僕は、今度は謝罪の意を込めた、困った笑顔を顔に貼り付ける。


「すみません、別に怒らせたいわけじゃないんです。でも、こうでもしないと、まずあなたは僕の話を聞いてくれないと思って……」

「…………」


 聖天剋が微かに、本当に微かに小さく息を吐く。そうだ、さっき僕が軽々と躱した一撃には、聖天剋が初めて見せた殺気があった。それは本当に僅かに、塵一つ分でしかなかったが、いつ攻撃が来てもいいように構えていた僕には十分すぎるほどのヒントだった。

 それが聖天剋も分かっているからこそ、奴は今息を整えたのだ。僕の言葉を聞かず、そのまま攻めに転じればまた殺気が漏れ、万が一にも僕に足元を掬われる可能性があったからだ。そこまでは僕の想定内。あとは彼がどれくらい僕の言葉に耳を傾けてくれるかだね。


「改めて尋ねます。僕と手を組みませんか? あなたは確かに“この世界で”一番優秀な暗殺者かもしれない。しかし、孤高を貫くというにはあなたのしてきたこと、これからすることはおおすぎる」

「なら、お前を後ろ盾にすれば変わるとでも? お前ならば、皇国の怪物たちの手から俺を護ることができると? とてもそうは見えないが」

「しかし共に戦うことはできます。いかにあなたといえど、皇国を一人で相手取るのは相当な労力を使うはず。あなたが強者であるからこそ分からない――弱者だからこそ導き出せる発想があります。だからこそ……」

「何度も言わせるな。弱者と手を組むつもりはない。お前がどんなに知略に優れ、人を誑かすことが得意だとしても、俺が手を組む理由にはならん」


 僕は溜息を吐いた。結局話は平行線で、辿り着く解答は一つだ。

 要は、仲間にしたくば彼に力を見せつける必要があるということ。


「あなたも頑固ですね」

「人とは生来頑固な生物だ。生まれ落ちた後に差が出るのは自分の意志を貫く力があるかどうかという点だけだ」

「なるほど」


 面白い考えだった。これまで僕が出会って来た人間の中でも、これほどまで純粋に“力”を求めた人間はいなかったのではないだろうか。


「面白い考え方ではありますがね……ッ!」

 言葉を紡ぐように息を吸った瞬間、僕は聖天剋に奇襲を仕掛ける。

 これまでの二度の戦闘で彼に純粋な戦闘力で勝ることはほぼ不可能だと確信している。今の交渉も、奇襲を仕掛けるタイミングを図っていたにすぎない。


「……?」


 そして、その奇襲にもこれまで見せなかった手札を一枚切った。僕がしたのは、ただその場で得物であるシャロンを一振りしたのみ。傍から見れば素振りかと勘違いするものだろう。

 しかし、シャロンというS級の精霊装を用いたとき、その行為は大きな脅威と化す。


 歪曲切断。


「なにっ!」


 突如空間が裂け、漆黒の穴が周囲を呑み込まんと大口を開ける。

 巻き込まれれば即座に千切れ、押しつぶされる必殺の攻撃は更に予兆がない。強いて言えば、唯一神聖力の流れなどから予測する方法もあるが、並の精霊騎士なら感知すらできないほどの微細な変化だ。

 それでも聖天剋が脅威の反射速度で後退したとき、僅かに右足が逃げ遅れ、かまいたちが幾重もの裂傷を生み出す。命中した。


区切りが悪い……。

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[一言] 久々の更新うれちい。 楽しみにしてます。
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