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死刑囚、魔法学校にて教鞭を振るう  作者: 無道
第二部 神曰く、死とは救いであり殺めるとは善行なのである
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トレーニング 2

 中心にいるのは話にあった敵将のカターナ、その巨体と同じく重厚な大剣、『バオウ』を振るい、その度に奴隷兵を吹き飛ばす。あの精霊装の能力は確か斬撃を飛ばす、だったか。シンプルな能力だが、剣の苦手とする中遠距離をカバーできる能力だ。


「くそっ」


 優秀な奴隷兵が雑兵と同じように倒れる中、唯一エイラだけは奮戦していた。カターナの攻撃した直後の僅かな隙を突きカドゥケウスを連射するが、カターナはそれを回避、あるいは剣の腹で受け止め、逆に反撃を仕掛けてくる。ただ、それは間違っても一方的な展開ではなく、エイラの勝つ確率も十分にあるが、やはり劣勢な感じはぬぐえないし、何よりこれ以上部隊の無駄な損失を被るわけにもいかない。僕が出た方が早いだろう。


「エイラ、退がりたまえ」


 それは通信越しにもエイラに聞こえたようだ。

 彼女は不服そうな顔を隠しもせずに向けてきたが、指示に従い、怪我を負った奴隷兵たちの回収に入った。命令に忠実。もちろん、例外の場合もあるのだが。


「……これで終わり、というわけではないようだな」


 次の相手を僕と見定め、カターナがこちらに向き直る。闘志は上々。僕の体も自然と臨戦態勢に入っており、なるほど、彼は想像通り僕のリハビリに不自由しない相手のようだ。


「君は将としても厄介な存在なようだからね。悪いけど、ここで逃がすわけにはいかないかな」

「俺が殿を務めることを決めた時点で覚悟していたことだ、気にするな」


 なんだこいつ、けっこう良いやつみたいなこと言い始めたぞ。ていうか、前の世界で殺し合いの前にこんな“いかにも”な会話をしたことがないからなんというか、ああ、ちょっと恥ずかしいな。

 とっとと始めてしまおう。


「!」


 仕掛けたのは僕。焔刃を陽動に、自らも同時に突進する。魔法の撃ち合いで勝てた試しはなかったが、幸いこの世界に魔法はなく、こうして先手は取りやすい。

 カターナは迫りくる魔法を飛ぶ斬撃で撃ち落としつつ、本命である僕から目は離さない。あくまで迎え撃つつもりか。このまま遠距離戦でも負けはないという自信の表れなのだろうが……。


「…………」


 忍ばせている魔晶石に指で触れる。おそらく、ここでこれを使って消滅魔法を使えばそれで決まる。だが、今の僕の最優先目標は彼を殺すことではなく錆びを落とすことだ。僕はそのまま速度を上げ、一気にカターナの懐へと潜り込んだ。


「ヌンッ」


 破壊の暴風が耳を掠める。だが、大振りであるためその後の隙は大きい。あからさまな餌。予想通り、そこに返す刀の一撃が来るので、距離は離さず、しかし余裕をもって回避する。

 カターナの眼が僅かに開かれる。こちらも餌につられる“餌”を撒いたためだ。そうすれば手番は変わって僕の攻撃になる。


「フ――」

「ぐっ!」


 屈んだ姿勢からのアッパーは躱されるが、同時に放った回し蹴りは綺麗に頭を捉える。普通ならそれでぽっくりだが、向こうも精霊装で身体を強化しているらしく、致命打にはならない。だが、それを皮切りに僕の攻撃はことごとくヒットしていく。それは頭ではなく守りづらい胴や足を狙っているせいもあるが、ダメージは着実に重なっていく。それでもここまで倒れないタフネスさは驚嘆に値するが。


「ヌゥオオオオ!」

「うわ」


 そこで初めてカターナが吠えた。

 危険を感じた僕は、勝負を決めるべく目突きを放つが、カターナはその指にあろうことか頭突きを叩きこんだので僕の方がたじろいでしまった。

 カターナが大上段にバオウを構える。バックステップはかろうじて間に合うタイミング――しかし、バオウの特性を思い出してそのプランはキャンセル。あとは真っ向から受け止めるしかないが……


「オオオオオッ!」

「ッ!」


 次の瞬間、人間一人を粉砕するには過剰すぎる一撃が振り下ろされ――――直後に消失した。

 カターナの眼が今度こそ限界まで見開かれる。彼の精霊装、バオウは根元から先の刀身が消失していた。そして、突き出された僕の右手からは、黒い粒子が霧散するところだった。

 ……本当に、自分が嫌になるな。


「さようなら」


 後ろにいたエイラたちからは見られていないと思うが、カターナにはしっかりと見られただろう。見られたからには消すしかない。僕のハイキックは今度こそ精霊装の恩恵を失ったカターナの頭を粉砕し、地面を汚物で汚す。

 爪先にも、僅かにだが汚物が付いていた。動揺して体術にも影響が出たか。本当に、そろそろ真剣に対策しなければいけないかもね。

 見ていた兵士たちの喝采が、妙に虚しく聞こえた。


読んでいただきありがとうございます。

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