大鎌の死神 3
短めです、
どういうことだ。僕は夢でもみているのか。
「ッ!」
大鎌を手刀でいなし、返す刀でモネの首を狙う。数え切れないほど行った一連の動きは、よどみなくモネの首を捉える――――はずが、気づけば手首から先が無くなっていた。足下にぼとりと手首が落ちる。
「ふふっ」
動揺している暇もない。再び大鎌が振るわれ、僕はそれを大きく跳躍して躱す。追撃が来る前に『流動』を使い距離を取った。
「ふぅーん。全く、便利なものね、魔法っていうのは」
「あなたの力ほどではありませんよ」
驚いた。まさかマティアス以外に近接戦が不利になる相手がいようとは。
どんなからくりかはわからないが、モネと近距離で戦うのは危険だ。既に四回分のストックを消費してしまっている
「僕はあくまで魔法師じゃなくて魔術師なんですけどね……」
遠距離魔法を発動し、モネを狙うが、空を走るかのようにモネはそれらをことごとく躱し、一気に距離を詰めてくる。
「一度みればその程度の攻撃見切れちゃうよ!」
「ちっ!」
飛び上がり、大上段から大鎌を振りかぶったモネに、僕は再び『終末』を放った。
その波動を、大鎌で切り裂こうとしたモネだったが、やはり消滅魔法を前には敵わず、武器もろとも魔法によって消し去られる。
だが、僕にはこれが先ほどと同じ光景だと分かっていた。これでは彼女は倒せていない。
だから、今度はちがう方法を試してみた。
――索敵
発動したのは、探知魔法。本来は暗闇などで使う魔法だが、更に周囲の風の動きを読むことで、全方位のどこからモネが襲ってきても対応できるようにする。
そして、その策は見事に的中した。
「ッ!」
彼女が現れたのは、僕の真上――何もない空中からだった。
「フ――」
「えっ!?」
頭の頂点を狙った大鎌を蹴り上げて弾き、その勢いを利用して跳躍、逆足でモネの顔面を狙う。二段蹴りの応用だ。
「シャ……」
完全に不意をついたはずの蹴りは、またも見えない鎖によって阻まれる。この鎖はおそらくモネではなくシャロンの意志で動いているものなのだろう。しかも、ガードされた足は、そのまま鎖にからめとられ、壁へとぶん投げられた。
受け身をとって着地すると、同じく着地したモネが苦笑いしていた。
「……まさか初めて会った相手にあれが防御されるとは思わなかったな」
「僕には一度殺されてももう一度挑戦するチャンスがありましたからね。そのおかげであなたの能力、いや、その精霊装の能力にも見当がつきましたよ」
「ふふ、良いよ。答え合わせしてあげる」
追撃するよりも好奇心が勝ったらしい。
そんな彼女に対して僕は、
「その精霊装の能力は――――瞬間移動。つまりあなたは、好きなときに好きな地点に一瞬で移動できるんですよね?」
「……ふふっ、あはは」
モネは酒場にいたときのように快活に笑った。
あれ、もしかして違う?
「ごめんごめん、すごい自信満々に言うからおかしくて。カナキくんってそういうキャラだったんだ、みたいな」
「えーと、違いました?」
「うーん、半分正解ってところかな。良いよ、ここまできたら教えてあげる」
モネの瞳の蒼い炎が煌めいた。
「私の精霊装――シャロンの能力は『空間歪曲』、どんな地点の時空でも歪めちゃうことができるのよ――こんな風に、ね!」
そのとき僕が反応できたのは、ひとえに前の世界で最後に戦った男のおかげだった。
「う」
うそだろ、という言葉が途切れる。
僕がさっきまでいた場所、空間には歪ができ、黒い球体が周りの物質全てを吸収するように蠢いていたからだ。
ブラックホール。その単語が僕の頭をよぎった。
「これも初見で躱すの!?」
モネの素っ頓狂な声を聞くに、こればかりは彼女も相当驚いたらしい。
今のを避けられたのは完全にまぐれだったが、もしかしたら前の世界で似たような能力を持った相手と戦ったことがあるためか。
「チッ!」
しかし、彼女がこんなとんでもない能力を有していると分かったら、最早悠長にチマチマ遠距離攻撃を仕掛けている暇はない。
僕は玉砕覚悟でモネに突貫する。
「流石にそれは無謀じゃないかな!」
「……フッッ!」
モネが再び鎌を振るう刹那、僕は踏み出した右足を独特のタイミングで、尚且つ特殊な力を込めて踏み抜いた。
「え……ッ」
己の体の一瞬の硬直。何が起こったか分からないでいるモネは当然次のアクションも遅れる。
そこに僕は再び消滅魔法。距離が先ほどよりも近いため、今度ははっきり見えた。
魔法が当たる直前、モネの背後の空間が歪み、彼女の体がそこに吸い込まれていくのを。
「そういうことね……」
僕は即座に『魔知眼』を発動。ミラや雫の『天眼』ほどは見えないが、それでも相当の魔力量を消費するらしい。魔力の残滓から、彼女が次に降り立つ地点を予測する。
『焔刃』を放った刹那、そこにモネが顕現するが、空間を移動中も視えていたのだろう、着地と同時に魔法は全て叩き落されてしまった。
何度目かの仕切り直しに、両者は下手に動けず、睨み合いになる。
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