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死刑囚、魔法学校にて教鞭を振るう  作者: 無道
第二部 神曰く、死とは救いであり殺めるとは善行なのである
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シスキマ

前回間違えて先の話を更新していました、すみません。

まあ誰からも指摘されなかったし、みんな見る前だったよね?笑


「……結構広いな」


 町の中をざっとではあるが、一通り見終わった後の感想はこれだ。

 町自体の大きさもそうだが、やはり一番は住民に加えて一時的にこの町に滞在している商人や奴隷たちの数が予想以上に多いということだろう。

 特に目に付いたのは奴隷の多さだ。この国、というかこの世界では当たり前のように奴隷というものは存在するが、この国ではその数はそれほど多くはない。その大半は国が所有している公共奴隷だし、個人奴隷を複数抱えている者など大商人や貴族程度のものだ。しかし、関所に詰める公共奴隷(首輪に皇国の印が刻まれている)を除いても、個人奴隷が多く町を行き交っているのが分かる。それだけこの町に滞在している商人や貴族の数が多いということだろう。

 街並みを見ても、開いている店の大体は外から来た旅人用――宿屋や酒場、公衆浴場など――だし、住民が生活するうえで必要な市場などは裏手の方に点々と存在しているようだった。これは外に飲みに行くときにでも困らないなーと暢気なことを考えつつも、町を歩く奴隷や町の住民と見られる人々が妙に顔に陰を差して歩いていることは少し気にかかることではあった。


「あ」「あ!」「……げ」


 そんなことを考えながらぶらぶら歩いていると、目の前から同じようにぶらぶら歩いてくる二つの人物と目が合った。ティリアとエイラだ。

 僕を見つけた途端、二人は対照的な反応を見せるが、ティリアが喜々として僕に歩み寄ってきたので、エイラも渋々と言った様子でこちらに歩いてきた。


「大尉も町を見て回っていたんですか!」

「うん。これから少なくない時間滞在する町だからね。もう結構歩いてきたのかい?」

「はい、大きい道に限れば八割方は見てきたと思います」

「そうか。二人から見てこの町はどうだい?」

「正直、辺境の町なので、もっと過ごし辛い環境を想定していましたが、思ったよりも人通りは多く、店も多いので不便はあまりしなさそうです」

「まあ、飲み屋には困らなさそうだよな」


 目を閉じたまま淡く微笑むティリアと、ぶっきらぼうに言ったエイラ。

 しかしティリアの方はそれだけではなかったようだ。


「でも……あまり大声で言うのも憚れるんですが、治安はあまりよくないかもしれません」

「というと?」

「さっきここに来る途中で怒鳴り声が聞こえたことがあって。声の方向に行って、見てみたら、貴族の男が子供たちに、その、暴力をふるってて……。多分、その子はその貴族の個人奴隷だったと思うんですけど、見た目がもうボロボロだし、体も痩せ細ってて……でも、周りを歩いてる人達はそれを見ても平然としてて、まるで珍しくもなさそうにしていたんです。だから、この町では“そういうこと”が普通なのかなって思って」

「……なるほどね」


 どうやらティリアも僕と同じことを考えていたらしい。やはりこの町はどこかキナ臭いようだ。


「どうでもいいけどよーティリア。町も大体見たし、そろそろ帰ろうぜ。ガキ共も待ってるだろうしよー」


 本当にどうでもよさそうなエイラ。

 ティリアはそれを見て少し眉根を寄せたが、彼女の意見には従うようで、


「大尉はもう帰られますか?」


 と訊ねてきた。


「いいや、これから街はずれにある教会にも顔を出す予定なんだ」


 僕が今日の本命の用件を素直に言うと、ティリアは少しだけ目を伏せた。


「そうですか……では、明日のミーティングで」

「うん、気を付けて帰りなさい」


 はい、とティリアは敬礼。そのままエイラを引き連れ宿の方向へと歩いて行った。なお、エイラは去り際にこちらを一瞥もしなかった。僕、一応上官なんだけど。


「……まあいっか」


 そんなことよりも僕早めに用件を終わらせて宿に戻りたい。ここまでの移動では車中泊だったので、今日は久しぶりにベッドで早く眠りたい。

 そうして向かった教会は、町から外れて十分くらい歩いた先の林の手前にひっそりと佇んでいた。

 年季が入っている、というよりは寂れて独特の趣があるといった雰囲気だろうか。大きさは前の世界で僕が住んでいたシール市の教会より遥かに小さく、普通の一戸建ての家よりも少し大きいかといった程度だが、管理が行き届いているのか、整備された教会の敷地内はどこか厳粛な空気が漂っていた。

 扉をノックするとティリアより二つか三つ下くらいの歳の少年が出てきたが、生憎神父とシスターは外出中だと言う。

 この教会は神父、シスター、そして目の前の少年の三人しかおらず、僕は少年に神父に会いたいという旨を伝えたが、神父がいつ帰ってくるかは彼にも分からないのだという。


「そうですか。それでは神父様が帰ってきましたら、明日また来ますという旨をお伝えして頂けますか?」

「はい、分かりました。今日はカナキ様にはるばるお越しいただきましたのに申し訳ありません」

「いえいえ、事前に連絡もせず勝手に来た私に落ち度がありますので、どうぞお気に病まないでください」


 律儀に謝罪した少年に笑顔で会釈すると、僕は踵を返した。本命であった用件が先延ばしになってしまったが、こればかりは致し方あるまい。

 予想外に空いてしまったこの時間を、酒場で一杯ひっかけて精々有効活用するとしよう。

 負け惜しみに近い気持ちを抱きながら町の酒場に入ったが、この不運が、思わぬ幸運を僕に呼び寄せることになる。


 まあつまり、初めてナンパされたのだ。


読んでいただきありがとうございます。

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