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死刑囚、魔法学校にて教鞭を振るう  作者: 無道
another episode (本編とは関係ありません)
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バレンタイン的な何か 3

バレンタイン編終了です

 それからアリス特製の人生ゲームは荒れに荒れた。


「あ、エトちゃんのマスはここだね。えーと、『レートSSの犯罪者に襲われる。プレイヤーは死ぬ』だって。あー、エトちゃんゲームオーバーだー」

「そんないきなりですか!?」

「一、二、三、四、五……あ、アリスさんのいるマスですね、これ」

「お、カナキ君は私のいるマスまで来たようね。それじゃあ決闘(デュエル)イベントが始まるわよ。それじゃあ、表出て。リアルファイトよ。大丈夫、負けても奴隷を身代わりにすればゲームを続けられるわ」

「マティアスさんがジョブアップしたわ! これで『掃除屋』から『消し屋』にランクアップよ!」

「…………」


 と言った具合に次々と脱落者が続出した。

 まず決闘イベントとかいうボードゲームでは絶対にしてはならない禁忌を犯し、結局僕の奴隷になっていたサーシャが早々に脱落。次にエトがゲームバランスを疑うような理不尽マスに止まって死亡、僕も折り返し地点までは粘ったが、『悪徳政治家』へとジョブチェンジを果たしていたアリスにより役人の給料を95%カットされ、借金まみれになって破産した。

 同じく役人であったフィーナも粘っているが、このままだとあと数ターンで僕と同じ末路を辿るだろう。とすると、残るはマティアス、アリス、アルティのみつどもえとなるわけだが……。


「アリス。私の給料日だ。一千万払ってもらうぞ」

「はいはい、お安い御用よ。なんせ、私の懐には全役人からカットした給料がたんまりと入ってくるんだから、その程度の額じゃあ出費のうちにも入らないわぁ!」

「で、次はだれを消す?」

「まあフィーナちゃんは放っておいても勝手に破産するし、残りはアルティちゃんかしらね。さあ、マティアスさんは『消し屋』の効果で好きにサイコロの目を決められるんだから、さっさとアルティちゃんのマスに入って、決闘イベントでギタンギタンにしてしまいなさい!」

「なんだこの腐りきった人生ゲーム……」


 最早協力とか生ぬるい言葉では言い表せない、まさに社会の縮図のような光景がそこにあった。

 ていうか、このゲームのバランスの悪さは異常すぎる。ゲーム開始時に役人の月給18万だってそこそこの額だったのに、今となってはマティアスは数億、アリスに至っては最早数えるのも馬鹿らしいほどの額にまで達している。真面目に一般コースを選んだ僕やフィーナはバカみたいだ。今となっては役人の月給は9000円だ。お小遣いをちょっと多めに貰っている高校生くらいの額だよこれは。

 看護師であるアルティは、なんとかアリスの猛攻を躱してはいるが、ここにきてアリスの飼い犬と化したマティアスにまで狙われてしまえば流石に勝ち目はない。

 ここまでは黙っていた僕も、流石に大人げない二人に反論した。


「二人とも、流石にこれは大人げないですよ」

「ふふ、馬鹿ねカナキ君。私は永遠の十四歳よ!」

「ゲームであろうと全力を尽くす。手を抜くのは逆に失礼というものだ」

「あんたら……!」


 特にアリスに至っては昭和生まえのおばさんみたいなことを言うから始末に負えない。実は彼女の実年齢もそれくらいなのだろうか。


「さあ、そういうわけでマティアスさん! さっさとアルティちゃんを仕留めなさい!」

「…………」


 アリスの勝利を確信した声と共に、マティアスは自分の駒を動かす。

 しかし、その駒が止まった先を見て、アリスは硬直した。


「…………は? ちょ、ちょっとマティアスさん。そのマスにいるのはアルティちゃんじゃなくて私なんだけど……」

「ここまでお前から金を貰うことで差をかなり縮めることが出来た。この決闘イベントで私が勝てば所持金は逆転、私が一位になることが出来る」

「ちょっ、もしかしてマティアスさん、あなた最初から……」


 そう言うと、マティアスは着ていたシャツのボタンの上を一つ外し、静かに立ち上がった。


「表に出ろ、アリス。もう一度言っておくが、私はゲームであろうと手は抜かんぞ」

「…………ふふっ、やられたわぁ。けど、面白いじゃない。あなたとは一度、サシでやってみたかったのよね……!」


 そうして二人が夜闇に消えると、やがて遠くからおおよそ人間の出せるものではないような音や光が断続的に聞こえてきた。


「なにやってんだあの人たちは……」

「あ、私ゴールだぁ!」

「あ、ほんとだね。はい、おめでとう」


 そうしている間に、アルティが一着でゴールし、エトがお祝いとばかりに煎餅を渡す。この決闘システムは時間がかかるため、該当する二人を除いて、勝手にゲームを進めていいことになってるのだ。


「くっ……私も、あの二人が潰し合っているうちに……はぁ!」


 フィーナは気合と共にサイコロを降る。彼女は今、大量の借金を返済するために闇カジノに挑戦中なのだ。この子は案外のめり込むと周りが見えなくなってしまうのかもしれない。頭は良いのに……。


「先生、私一着だよ。褒めてー」

「あー、えらいえらい」


 ちなみに僕は、アルティの奴隷としてゲームには一応参加中なのだが、このゲームって奴隷になった後勝つ方法ないよね? サーシャなんて、最初にサイコロを降った以降は、ぶひぶひ言っているか僕の身代わりになっているかだけだったし。


「えへへ、ありがとうー。こうして私に甘々な先生になってくれるなら、先生を奴隷にした甲斐があったなぁ」

「そんな笑顔で言わないでくれるかい?」

「そういえば、一着ってなに貰えるんだろう……一億かー。こんな額じゃあ、結局今外にいる二人には勝てないかなぁ」


 一億貰って溜息を吐く女子高生って……。


「まあいいや、楽しかったし。それじゃあ先生、はいコレ」

「ん?」

「「ああっ!?」」


 アルティから突然渡されたのは、手作りっぽいラッピングのされたチョコレートだった。


「これは?」

「建国記念日は日ごろお世話になっている人に贈り物をするのが最近流行ってるんだって。だからこれを先生に」

「気持ちは嬉しいけど、僕は君の先生だからね。特定の生徒からこういうものはもらえないよ」

「もう、先生は相変わらず真面目だなぁ。じゃあそれは、ご主人様から奴隷へのプレゼントってことでいいよ。一応まだ続いてるでしょ? 人生ゲーム」

「…………まあ、そういうことなら」


 僕だって好きで断っていたわけではないし、そういうことなら有難く貰っておくとしよう。おそらく、横から視線を送ってくる二人からも、これはプレゼントがもらえそうだしね。

 チョコを受け取ると、アルティは少し照れたように笑った。


「あはは、ゲームには負けちゃったけど、一位の賞品を私貰っちゃったな」

「「「え?」」」


 室内にいた三人が一斉にアルティを見る。なお、フィーナだけは熱心にカジノコーナーに挑み続けているままだ。


「だって、最初に言ってた先生の初めてって、最初に建国記念日のプレゼントをあげる人ってことでしょ?」

「「…………あー」」


 エトとサーシャが、同時に生暖かい視線をアルティに送った。

 流石にこれにはアルティも気づいたようで、「な、なに……?」と引き気味の声を上げた。


「いいえ、最近の魔法学校の生徒は初心なんだなぁと思っただけです」

「大丈夫だよアルティちゃん、私はどんなアルティちゃんでもずっと友達だからね」

「な、なんなのさ二人とも!」


 憐憫と同情の籠もった言葉と視線を受けて、アルティはちょっと涙目だ。


「だ、だってアリスさんが言ってた先生がどーてーってそういう意味でしょ!?」

「「うんうん、そうだよそうだよ」」

「は、ハモらせないで! だ、だだだだだって、そうじゃなきゃ変だよ!」

「「うんうん、変だ変だ」」

「聞いてよぉ! エトちゃんにだって黙ってたけど、実は私の初めての相手だってか――」

「『沈黙(サイレンス)』」

「―――――――!?」


 その瞬間、アルティの口からは何も発せられなくなった。

 フィーナがサイコロを降る手さえ止め、痛いくらいの沈黙が訪れた中、術者である僕はゆっくりと立ち上がった。


「それじゃあ、今日はそろそろ遅いし、僕はこのあたりで失礼するよ。あ、アルティくんもチョコありがとね。明日学校で感想を言う時にその魔法も解いてあげるから」


 そう言うや否や、僕の姿は掻き消えるように消失し、一秒後には靴をひっかけて玄関を開けるとことだった。


「ま、待ちなさい! 今の話、どういうことですか!」

「タイガ様! やはり年下が良いのでしたら、私のことを使って頂いても――」

「――――――!」

「先生、せめてアルティちゃんに掛けた魔法くらいは解いていってくださーい!」


 マティアス宅周辺の林の先は、まだ街の明るい光に包まれていた。この国の建国記念のため、皆も今日は夜遅くまでお祝いするということなのだろうか。

 思えば、この世界に来てから、建国記念日を実感する日などなかったかもしれない。日付を確認するくらいの余裕が、僕にもようやく出来てきたということだろうか。

 いや、もしくは――

 後ろから追ってくる気配を感じながら、僕は少し口の端を歪めた。

 ――もしかしたら、こうして一緒に騒ぐことの出来る人間が、僕の周りに出来てきたからかもしれない……。


世界観が壊れていないか心配ですが、ともあれ読んでいただきありがとうございます。

感想等頂けると大変励みになりますので宜しくお願い致します。

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[良い点] 先生、、嘘だろ、、
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