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死刑囚、魔法学校にて教鞭を振るう  作者: 無道
another episode (本編とは関係ありません)
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バレンタイン的な何か 2

バレンタインは続きます。

「さて、それじゃあそろそろ、この『人生ゲーム~ヘルブラストモード~』を遊んでいくとしましょうか」

「うん、既に後半の部分がおかしいよね」


 少なくとも僕の知っている人生ゲームには、そんなヤバそうなモードは存在しない。

 周りも僕と同じような反応をしている所によると、どうも僕の感性が間違っているというようでもないらしい。


「まあみんな知らないのも無理ないわ。なにを隠そう、このボードゲームは私が昨日作ったんだから!」

「……本当に無駄に多芸だな、お前は」


 この発言にはマティアスですらも溜息を吐いた。


「ていうか、ゲームバランスとか大丈夫なんですか? アリスさんだけが有利になるようなやつならやりませんよ」

「もう、馬鹿ねえカナキ君は。ボードゲームでイカサマなんてしようがないでしょ?」

「いや、普通はそうですけど」


 あなたなら尚更やりかねないんですよ。

 そういう意味を含んだ言葉は露知らず、アリスは「それじゃあ、最初の始め方を教えるわねー」と話を進めてしまった。


「人生ゲーム自体をやったことないっていう人もいるかもしれないから一応説明すると、このゲームはそれぞれがサイコロを降って自分の駒を進めて行って、止まったマスに書かれたイベントをこなしながら、最終的にゴールを目指すゲームよ」

「なるほど。では、一番早くゴールするのが勝利条件なのですか?」


 これはフィーナの質問だ。彼女は長年王宮仕えだし、もしかしたらこの類のゲームは未経験なのかもしれない。


「いいえ、勿論早く着けばそれだけ報酬もあるけど、結果的に総合点が最も高かった人が本当の勝者ってわけ。まずはゴールすることを第一にしてやってみるのが私からのオススメね」

「なるほど……」


 フィーナはそれで納得したようだったが、僕はアリスの言葉に僅かな引っ掛かりを覚えた。

 というのも、人生ゲームとは果たして、ゴール出来ないことなんてあったかな、と。


「ともかく、あとはやりながら説明するから、早速始めましょう! それじゃあみんな、最初に専門コースと一般コースがあるから選んで」

「なんだそれは」

「多分、職業に関係することじゃないかな?」


 マティアスの疑問にエトが答えると、アリスは親指と人差し指で丸を作った。


「その通り! プレイヤーは最初に、自分の進路について考えるの。専門コースは専門職、一般コースは無難な役人としてゲームを始めることになるわ。専門コースは細かい職業はサイコロの目次第だし、場合によっては職に就けない可能性もあるけど、時には役人の数倍以上の好待遇を得られる職業に就くことが出来るかもしれないわ!」


 なるほど。アリスさんが作ったゲームにしては普通の仕様だ。

 これが本当に自分の人生を決めるなら一般コースが多いだろうが、これはあくまでゲーム。ほとんどのプレイヤーはおりスリリングなゲームを楽しめる専門コースに行くだろう。

 そして予想通り、専門コースにはアリス、エト、アルティ、マティアス、サーシャというほとんどのプレイヤーが集まった。


「…………で、カナキ君はやっぱりそっちなの? 専門コースにはきちんと学校の先生だってあったのよ?」

「うん、こっちの方が僕らしいと思ってね」


 そして一般コースには僕とフィーナが残った。

 僕はともかく、フィーナがこちらを選んだのは意外だ、とも思ったが、


「ちなみに、フィーナちゃんはなんでそっちを選んだの?」

「役人とは公僕、すなわち国に奉仕する第一線の人間であり、つまりはカレン様のお役に立てるということ――」

「ああ、もう分かったわ」


 アリスはお腹いっぱいとばかりに首を振った。

 ともかく、そうしてコースが決まったことでゲームが始まったわけだが、このときはまだ、僕達はこのゲームの恐ろしさを真には理解していなかったのだ……。






「あ、私看護師さんになったってー。やったー!」


 アルティが止まったマスには、確かに『看護師になる』という記載がある。

 僕は一瞬看護師になったアルティの姿を想像し、うんと頷いた。


「なかなか似合ってるんじゃないかな。君の溌剌さは病人に元気を与えられそうだ」

「うん、アルティちゃんならぴったりだと思う」

「わぁ、二人ともありがとー!」


 僕だけでなく、親友のエトからも手放しに褒められて尻尾を振るがごとく笑顔を咲かせるアルティ。何故か、今では彼女の笑顔がとても貴重であるかのように感じた。


「さて、これでアルティさんが看護師、エトさんが教員、私と先生は一般コースから役人になったのは良いですが……他の方の職業は一体どうなってるんですか……」

「あら、良いじゃない。私は気に入ってるわよ?」


 そう言ったアリスの職業は『政治家』。正直、アリスが政治家になんてなろうものなら国は破滅を逃れられないと思うのだが、これはあくまでゲームの中であるし、特に影響はないだろう。まだ役職が決まっていないサーシャは置いておき、問題はマティアスだ。




『掃除屋』




 う~ん。いや、なんだろう。特におかしな職業ではないのだが、何故かこの職業だけやけに職種が細かい気がするんだけど気のせいかなぁ。

 しかし、特段周りは気にした様子はないし、本人も至って無反応だ。僕が少し過剰反応しすぎなんだろうか。そんなことを考えていると、最後のサーシャがサイコロを振った。

 出た目は6。普通なら沢山進めてラッキーと思うのだが、気になったのはサーシャの進んだ先が、既に専門コースを越えていることだった。


「あれ? 私特に職業も決まらないで専門コースのマスを越えてしまいましたけど、これってどうなるんですか?」

「ああ、就職できずにコースを抜けた場合は、専門一般関係なく、そのプレイヤーの職業は『奴隷』になるわ」

「「「奴隷!?」」」


 全員の言葉がハモった。

 人生ゲームで奴隷ってなに? せめてもフリーターとかじゃなかった?

 これには当の本人であるサーシャも困り顔だ。


「奴隷、ですか……?」

「そうよ。成人してからもまともな職に就かず、ただ親の脛をかじって生きている虫けらは奴隷に落とされるの。そうなると、まずあなたが今持っている全財産は没収。次にこのゲームを行っている間はプレイヤー自身にも制約が加えられるわ」

「制約、ですか? それは一体……」

「まず一つ目に、許可が出るまで人の言葉を発してはならない」

「えぇ!?」


 サーシャだけでなく、これには皆も驚きだ。あ、いや、マティアスだけはルールブック(アリスの手描き)に熱心に目を通している。


「そ、そんな、いくら奴隷だからって、ゲーム外でもそんな縛りは……」

「ふぅ……サーシャちゃん。初回だから今のは特別に許すけど、これからは人の言葉を喋ってはだめよ。飼い主の許可が下りるまでは、全て豚の鳴き声で喋りなさい」

「えぇ!?」


 再び驚きの声を上げたサーシャだが、じろりとアリスから冷たい視線を受けて、怯えたように身を竦ませて、




「…………ぶ、ぶひぃ…………」




 とか細い鳴き声を上げた。


 ――これはこれで案外……。


「先生……何か邪なことを考えていませんか?」

「ははっ、そんなわけないだろう?」


 右手に座るフィーナから鋭い視線が向けられた瞬間、僕は彼女に笑みを浮かべた。僕の唯一得意な、人を安心させる笑みだ――


「あ、アリスさん……流石にこれはやりすぎなんじゃ……」


 そして、この中で唯一の良心と言ってもいいエトが、サーシャを憐れんでそんな指摘をした。

 それに何故かアリスは勝ち誇った顔で返した。


「ふふん、大丈夫よエトちゃん。そこで奴隷の二つ目のルールよ。これからサーシャちゃん以外のプレイヤーの中で、競りが行われるわ。もちろん、競りの商品はサーシャちゃん。競りの中で最も高額を出した人が、サーシャちゃんの飼い主になることが出来て、そうすればさっきの制約もなくすことが出来るわ!」

「あなた、よくこんなゲスいゲームを現役女子高生たちにやらせようと思いましたね……」


 教育に悪いこと間違いなしである。


「社会に出る前の良い勉強になると言ってちょうだい。それじゃあ、競りを始めるわ! まずはじめに、サーシャちゃんを飼いたい人は挙手して!」


 今絶対「かいたい人」の漢字の当て方悪意があったろ……。


「アリス、ちなみに奴隷を飼うと何かメリットはあるのか?」


 そこで黙っていたマティアスが久しぶりに口を開いた。マティアスさんは意外にこのゲームに乗り気なのかな。


「メリット、というか出来ることが沢山増えるわね。ここでサーシャちゃんを飼えば、これからのゲームで、サーシャちゃんの分の家賃とかも出さなきゃならなくなるけど、その代わりに原則として奴隷は主人に絶対服従だから、たとえゲームとは関係ない内容の命令でも、ゲーム中は出来ることなら絶対にやらなくちゃいけないの!」


 なにその王様ゲームみたいなノリ。


「そうか……ならば、私は競りに参加しよう」


 そして今の話にツッコむことなく、更には競りに参加を表明するマティアス。レートSを越える手配者たちには常識というものは……ないよな。そりゃそうだ。


「ちなみに、このゲームにもう参加した以上、ルールについての批判はゲーム進行の妨害とみなして制裁を加えることにしますので、以後お気をつけてー」

「ぐっ……」


 更には常識人である僕達に対して釘を刺してきた。怖いのは批判したら失格とかじゃなくて制裁を加えられるということだ。絶対リアルファイトになるやつじゃん、それ。

 結局、フィーナやエト、アルティなどの学生組は競りを拒否し、参加するのは手配書に載る犯罪者共だけになった。


「ぶひぃ……」


 心なしか、サーシャから無言のエールを送られている気がする。まあ確かに、マティアスはともかく、アリスの奴隷になった暁にはその時点でリアル人生ゲームが終了になってしまう可能性も否定できない。


「それじゃあ、競りを始めるわよー!」


 ゲーム開始から三十分。

 まだ僕達はサイコロを一度しか振っておらず、僕達の止まる先には無限にも思えるようなゴールまでの道が続いていた……。


カナキ→役人 月給18万

フィーナ→役人 月給18万

エト→教員 月給23万

アルティ→看護師 月給19万

アリス→政治家 月給30万

マティアス→掃除屋 日当

サーシャ→奴隷 衣食住込み0円

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