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死刑囚、魔法学校にて教鞭を振るう  作者: 無道
another episode (本編とは関係ありません)
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バレンタイン的な…… 1

注 タイトル詐欺です

「カナキ君、よく来たわね」

「まったく……折角の休みだったのになんなんですか?」


 マティアス宅に足を運んだ本日。エトに居間まで通され、お茶を飲んで一息吐いていたところに急にこれだ。ほんと、アリスの思考回路はどうなっているんだろう。

 そして当の本人であるアリスは、そんな僕の反応を見てやれやれと大仰に肩を竦めるジェスチャーをした。欧米か。


「カナキくん、今日は何の日か知ってる?」


 言われて僕は考える。日本ならちょうどバレンタインの時期だが、生憎こちらにそんな風習はないので分からない。


「なにかありましたっけ」

「この国の建国記念日よ」

「え」


 うそ、と思いエトの方を見ると、彼女は困った顔で頷いた。


「はい、確かに今日はオルテシア王国の建国記念日ですよ。むしろ、先生は知らなかったことにちょっとびっくりです」

「あ、あはは……そうだったかぁ。最近忙しくて忘れてたよ~」


 まずい、一教員として流石に自国の祝日くらい把握していないと面目が立たないぞ。

 返ってからでも、もう一度祝日について勉強しておこうと心に誓うと、得意げな顔をしているアリスが安い挑発をしてきた。


「なぁにぃ、カナキくん。まさか先生なのにそんなことも知らなかったのぉ~?」

「いや、ですから忘れてただけだって。それより、今日が建国記念日だからどうしたんですか?」


 アリスのことだ。まさか建国を祝福しようとかではないだろう。逆ならあり得るが。


「人生ゲームしましょ」

「いやなんで?」


 あまりに話が飛躍しすぎて全く理解できなかった。ていうか飛躍っていうか整合性なさすぎて最早話題変わってる領域だろこれ。


「? 私何かおかしいこと言ったかしら?」

「あの、アリスさん……私にもなんで急にボードゲームをするのか分からないんですけど……」

「あら、エトちゃんも案外察し悪いのね? マティアスさんなら分かってくれるでしょ?」

「……お前の為すこと全てに理由を考えていては頭が痛くなる」

「まあ、酷い言い草」


 この場にいる最後の一人、マティアスにも突き放されたアリスは、可愛らしく頬を膨らませた。見た目は中学生くらいなんだけど、実年齢考えたらただの痛いバb


「あらカナキくん、ローストポークにされたいのかしら」

「何も言ってないです」


 あと人をサラッと豚扱いするのもやめてください。


「はぁ……仕方ないわねえ。それじゃあ察しの悪いみんなにも分かりやすく説明してあげる。昨日寝るときにね、『あ、明日ボードゲームしてぇ』って思ったから、今日しようと思ってみんなを呼んだの」

「いや、分かるわけないでしょ」


 何一つ僕達が察せる要素がなかった。むしろこれで全員がアリスさんの意図を理解できてたらそれこそ魔法だわ。


「というわけで、早速やりましょう。あ、それと人数はもうちょっと多い方が楽しそうだからもう少し知り合いに声かけてみたから。もうすぐ来るんじゃないかしら」

「あの、ここマティアスさんの家ですからね?」

「大丈夫大丈夫、皆の共通の知り合いしか呼んでないから」

「いえ、そういうことではなく……」

「ごめんくださーい」


 ごめんくださいってきょうび聞かないよね。

 丁度そのときアリスの残りの被害者たちがやってきたらしい。

 そして居間に集まった面子を見て、僕は最早半笑いになった。


「姫様が王都で凱旋パレードをしている中、大事なことがあると呼ばれてきてみれば……」

「タイガ様、今日はお招きいただきありがとうございます!」

「やっほーエトちゃん、カナキ先生! あ、エトパパもおひさー」

「なにこの不安しかない面子」


 フィーナ、サーシャ、アルティという本当に僕達の知人ということ以外共通点の見つからない三人を呼んできやがった。

 もうこれはボードゲームとか以前に殺し合いが始まってもおかしくない面子だ。僕は無駄とは知りつつも幹事であるアリスに異議を申し立てた。


「あなたは一体何を考えてるんですか? 人生ゲーム始める前に何人かの人生終了しちゃう可能性まで出てくるメンバーなんですけど」

「え、それ自分で面白いと思って言ってる?」

「ぶち殺しますよ」


 今日のアリスはなんだか無性に殴りたくなる……いや、それはいつもか。


「まあまあカナキ君、君の言いたいことは分かるよ? いくら年下が好みの君でも、もう少し年上の美人さんもいて欲しかったんだよね。本当はフェルトちゃんとか師匠とか熟女層にも声かけたんだけど、二人とも都合が合わなくってさー」

「僕の嗜好についてはこの際流すとしても、その発言あとで二人に殺されますよ?」


 百歩譲ってミラはともかく、フェルトは精々僕と同じか少し上くらいだからね。


「カナキ先生! いい加減、これがどういうことか説明してください!」


 そのとき、堪忍袋の緒が切れたのか、遂にフィーナが物凄い剣幕で怒りだした。

 それはそうだ。今日が建国記念日なら、今頃王都では皇女のカレンを筆頭に、王宮は大忙しだろう。本来なら、そこでフィーナも働かねばならないところを、どう言いくるめられたのか、今こうしてアリスのくだらない催しに参加させられようとしているのだから無理もない。


「先生、早く答えてください!」

「え、もしかして矛先は僕なの?」

「何を言っているんですか! あなたから大事な話があるというから…………いえ、そうですか。屍術姫、さてはあなたの奸計ですね、これは?」

「察しが良い娘がいると助かるわぁ」

「帰ります」


 そう言って席を立ちかけたフィーナに、アリスはその場が凍り付く一言を放つ。


「今からやるゲーム、勝った人にはカナキ君の初めてをあげるわ」

『!?』

「ちょっと待て」


 この人マジで何言ってんの?

 そしてマティアスさんいるの忘れてない?


「なによカナキ君、女同士の争いが始まろうってときに無粋ね」

「おい、アリス。私は男なんだが……」

「正直言いたいことがありすぎるんですけど、とりあえず僕の初めてとは?」

「なに、本当に無粋ね、女にそんなことを言わせたがるなんて。あなたの初体験ってことよ」

「意味が分からない」

「だって、どうせ童貞でしょ? あなた」

「流石に失礼過ぎません?」


 女性にそんなことを真正面から言われたの初めてだよ。


「分かるわよぉ、普段は物凄いアブノーマルな性癖を暴露してあたかも自分は経験済みって感じ出してるけど、実は中身はスッカスカなんでしょ?」

「うわぁ殴りてぇ」


 なにこの男を見下した女特有のこの顔、腹立つわぁ。

 しかし、こんなふざけた提案を、意外にも周りが粛々と受け入れていた。


「屍術姫、お前の頭は淫蕩に耽ることしか考えていないのですか? くだらない」

「その割には席に座り直してるようだけど?」

「こ、これはあくまでお前の毒牙から先生を護るためです!」

「ま、護る……そうだよね、そういう名目なら……」

「お、エトちゃんやる気だねぇ。それなら、私もやろっかな!」

「タイガ様」


 突然手を握られ、見るとサーシャがいつになく真剣な瞳で僕を見上げていた。


「タイガ様の貞操は……必ず私が護りますから……あっ!」

「ちょっ、先生!?」


 アルティが素っ頓狂な声を上げる。いけない、思わず手が出てしまった。


「すまない、大丈夫かい?」

「はい……タイガ様からの激励、しかと胸に届きました!」

「うわぁ、君も人の話を聞かないクチかい?」

「盛り上がってきたわねえ! それじゃあ、早速始めましょうか!」

「アリス……だから私は……」


 最後のマティアスの言葉はかき消され、こうして訳も分からず何かが始まろうとしていた。


今回は試作的にギャク10割で書いてみます。

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