エピローグ ~終わりと始まり~
一年間、本当にありがとうございました。
「――これは、約束された聖戦である」
白を基調とする祭服を着た男が、厳かな口調で言った。
「これよりやってくる異国の蛮族共は、この国を荒らし、侵略を企む悪魔の手先である」
場所はどこか玉座の間のような縦長の空間。
そこには、一番高い位置で立派な椅子に座る少女が一人。その一つ下の位置に滔々と言葉を紡ぐ祭服の男女が六人。一番低く、部屋の大部分を占める位置には修道服に身を包んだ多くの男女が平伏していた。
「我らは、この侵略行為を赦してはならない。命を賭してこの侵略に抗い、何としてもこの国を、そしてイリヤウス大司教様をお守りすることが我々の使命であり、救いなのです」
おおおおお、と歓声が上がった。
その光景を、最も高い位置から眺める少女の顔は暗い。歳にして弱十五だろうか。薄い布のような服を一枚着ているだけの少女は白銀の髪に銀色の瞳は、それだけでまるで宝石のような美しさと神々しさを湛えている。
「死を恐れることはありません。死とは救済であり、俗世からの解放なのです。もしこの国を守り、命を落とす者がいたら、その者は必ず、エーテル神の祝福を受けて、極楽浄土の世界へと向かうことでしょう」
再び歓声。今度は玉座の間が揺れるほどに大きかった。
それを見下ろす少女の顔は、やはり沈んでいる。銀色の瞳には、何かを隠しているような光を灯しているように“僕は”感じた。
「――では、イリヤウス大司教様の見初め式を執り行いたいと思います」
「……ッ」
びくりと、少女の肩が震える。
やがてゆっくりと、その矮躯に見合わない巨大な玉座から立ち上がった少女は、服の襟に手を掛けた。
少女の手元が一瞬止まり、目尻に涙が浮かんだ。
そのとき、誰かが突然声を上げた。
「おい、あれはなんだ!?」
指が向けられたその先を、玉座の間にいた全員が見上げる。
その場所、高い天井からは、見たこともない白い光がいつの間にか生まれ、徐々に広がり始めていた。
誰もが呆然とする中、その光から何かが姿を現し、下に落ちる。
偶然その真下にいた人物――銀髪の少女は、咄嗟に両腕で顔を庇い、目を瞑ると、意外にもそれは軽快な音を立てて眼前に着地した。
「何だ貴様はぁ!?」
祭主の男の怒声が響き、少女は恐る恐る目を開いた。
目の前には、見たことのない黒髪の青年が立っていた。
青年は少女を見て、笑いかける。
それだけで、少女は何故だが不思議と、安心したような心持ちになった。
青年は少女に背を向けると、同じように笑顔を向けた。
「初めまして。僕の名前は――」
青年はいつもの、人を安心させる笑顔を浮かべた――
本来はここまでで完結する予定でしたが、皆さまのおかげで続きを書くことが出来ています。ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。




