表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ちびっこ賢者、Lv.1から異世界でがんばります!【Web版】  作者: 彩戸ゆめ
第二章 ちびっこ賢者、がんばります!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/126

第69話 いい宿ですね

 むん、と両手で拳を握っていると、誰かが階段から下りてくる音がした。

 振り返るとそこにいたのは、部屋で休んでいたカリンさんだ。


「まったく、ここはどうなっておる? 未だに宿の者の姿が見えぬとは、どういうことだ。二階でドタバタと騒いでいたかと思えば、客を無視して飛び出すし……。その上、そのまま客を放置するなど、いくら辺境の宿屋だとしてもこんなところに泊まれぬわ。野宿でもしたほうがマシかもしれぬ」


 カリンさんは凄く怒ってるみたいだった。

 確かに怒るのも無理はないけど、でも、これには深い訳があるんですよ。ラブラブな夫婦が誤解で離婚の危機だったんですよ!


「落ち着いてカリン。戻って来るのに時間がかかったのは、村の畑に大きな甲冑虫が出たからなの。それより、明日からこの近くにある『試練の洞窟』っていうダンジョンに行くわよ。必要な物を用意しましょう」


「ほほう。そのような物があるのか? もしやそこに新種のスライムが――」

「いるかもしれないわね」


 アマンダさんはにっこり笑って肯定するけど……いるかなぁ。

 いないような気がするなぁ。


 でも、一緒に行ってくれるなら、カリンさんがどんな戦い方をするのか見れるってことだよね。


 このメンバーの中で戦うのを見たことがないのってカリンさんだけだし、エルフの使う言霊(ことだま)の魔法がどんなものか、見てみた~い。


 楽しみ!


 そこで、カールさんの奥さんのメアリさんがじっとカリンさんを見つめているのに気がついた。

 その視線は顔じゃなくてその少し上の、帽子にそそがれている。


 変わった帽子だもんね。珍しくてじっと見ちゃうよね。


 と思ったけど、違った。


「まあ、なんて可愛らしい帽子」


 えぇ~。可愛いかなぁ?


「む……。お主、この帽子の良さが分かるか?」

「ええ。スライムをモチーフにした帽子でしょう? プルンとした姿がとっても素敵。いいわねぇ。私もスライムが大好きなの。そんな帽子が欲しいわ」


 胸の前で手を組むメアリさんは、本当にカリンさんの帽子を気に入ったようだった。


 ええーっ。カリンさんと同じ趣味の人がいたのぉ!?


「そうであろう、そうであろう。この帽子のたわんでいるところが、いかにもスライムらしいと思わぬか?」

「曲線が見事ですね。さぞかし名のある帽子屋さんの作品なのでしょうね」

「それほどでもあるがなっ。これは私が作った帽子だ」


 帽子を褒められて、途端に機嫌を直したカリンさんは、さらに平たい胸を張ってのけぞった。


 もっと褒めたら、後ろに倒れちゃいそうだなぁ。


「まあ、凄い!」

「ほほう。この帽子の良さが分かるとは。……ふむ。よく見ればこの古びた階段もなかなか(おもむき)があって良いかもしれぬな。掃除も行き届いておるようだし、辺境にしては気の利いた宿ではないか。実に興味深いな」


 カリンさーん。スライムを褒められたからって、さっきと言ってることが正反対ですよー!


「まあ、ありがとうございます。うちはお料理も自慢なんですよ。お客様のお口にも合うと良いのですが」

「それは楽しみだな」

「ではそれまでこちらでお飲み物などいかがですか?」

「いただこう」


 ご機嫌のカリンさんをテーブルに案内するメアリさんの後ろ姿を見送って、私たちは思わずカールさんと顔を見合わせた。


「で、ではお客様たちもこちらへどうぞ。本日の宿泊代はお礼にサービスさせて頂きますので、まずはウェルカムドリンクを飲んでゆっくりなさってください」

「おう。そんじゃ一杯頂くか。あそこに並んでる酒なら何でもいいのかい?」

「ええ、どうぞ。勝利の美酒は、奥に置いてありますので、遠慮なさらず」

「はっはぁ。カリンじゃねぇが、ここはなかなかいい宿だな!」


 フランクさんにバシッと背中を叩かれて、カールさんがむせる。


「ユーリちゃんにはリコのジュースがいいかしらね」


 わーい。桃みたいなリコのジュースは大好物です!


「ノアールにも少し分けてあげるね」

「にゃあ」


 白猫ローブの中に入っていたノアールが、ちょこんと顔を出す。

 プルンは特製ポーチの中に入ったままカリンさんに連れていってもらってるから、後で部屋についたらポーチから出してあげないとね。


 明日はみんなで『試練の洞窟』に行くのかぁ。

 どんなところだろう。


 楽しみだね!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ