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ちびっこ賢者、Lv.1から異世界でがんばります!【Web版】  作者: 彩戸ゆめ
第二章 ちびっこ賢者、がんばります!

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第58話 クエスト発生

 イゼル砦から王都までの道は、ほぼ真っすぐに伸びている。


 この世界に来てからほとんどイゼル砦にこもりっきりだった私にとって、見るもの全てが珍しい。

 流れていく風景は、イギリスの田園地帯のものに似ている……ような気がする。実際に行った事がないから、想像なんだけども。


「むむむ。一向にスライムを見かけぬではないか! こんな旅はつまらんぞ」


 でもそんなのんびりした旅は、カリンさんには不評みたいだった。さっきからずっと文句を言っている。


「アレス王国の街道は安全なのよ。カリンも知っているでしょう?」


 道中は特に魔物が襲ってくるようなことはなかった。街道にはそんなに強くない魔物なら寄せつけない効果のある魔法陣を組んだ石柱が立っているからだ。


 もちろんスライムも寄ってこないから、カリンさんは隙を見てはわき道に()れようとしていた。

 すぐにアマンダさんに阻止されていたけど。


「あの石柱に魔物除けが付与されているのだったか……。ではいっそ壊せば……」

「この道を通るのは私たちだけじゃないのよ? どこかの村の近くに行ったらスライムがいるから、もう少し我慢なさい」


 呆れたようなアマンダさんに、カリンさんは「それまで待てるか!」と叫んでいる。


「もう……。子供のユーリちゃんが大人しく馬に乗ってるっていうのに、どうしてカリンはそんなにワガママなのよ。大体、エルフなんだからこの中で一番年上でしょう?」


 えっ。

 カリンさんって、フランクさんよりも年上なの!?

 えええっ!


「うむ。私が最も年長者なのだから、皆も私を(うやま)うがよい。そして少し休憩してスライムの探索をだな――」

「こんなとこでチンタラするより、さっと行ってさっさと帰ってこようぜ。そういや、この先の村の酒はうまいんだよな。早いとこ向かって、一杯ひっかけようじゃねぇか」


 フランクさんがニカッと笑うと、「お酒」という単語を聞いたヴィルナさんの耳と尻尾が揺れる。

 ……ヴィルナさん、さては酒好きですね?


「そうだね。もう少し行くとグラハムの村があるから、そこでゆっくりしようか。村の周りにはスライムもいると思うよ。魔の氾濫の後で、スライムにも何か影響が出ているかもしれないね」

「なんだと!? それはすぐに行かねば」


 アルにーさまの言葉に、カリンさんは馬のお腹を蹴って駆け出した。

 おお。カリンさんって意外と馬に乗るの上手なんだね。


「ちょ、ちょっと、カリン。待ちなさい!」


 アマンダさんが慌てて後を追いかける。でもすぐ先でカリンさんが馬を止めた。

 そして追いついたアマンダさんは、すぐに馬から降りて剣を構える。

 な、なにごと!?


「オオネズミよ!」

「おいおい、マジかよ。しかも変異種じゃねぇか」


 アマンダさんの声を聞いて、フランクさんとヴィルナさんが急いで合流する。

 アルにーさまだけが、距離を取るかのようにその場で馬を止めた。


 確かに道の真ん中に大きなネズミの魔物がいる。

 大きさは、私の半分くらいあるから、かなり大きい。しかも二本足で立ち上がってるし。


 オオネズミかぁ。懐かしいなぁ。

 オオネズミは、初期村から少し進んだ場所に出る、初心者が倒すのにはちょっと苦労する魔物だ。

 でもたまにレアドロップで『金の指輪』を落とすから、初期の金策にはもってこいだったんだよね。


 だから、エリュシアオンラインのサービスが始まった当初は狩場が凄く混んでたって、ギルドマスターのセシリアさんから聞いたことがあった。


 大体同じ位置に沸いてて、倒されるとしばらく消えちゃうタイプの魔物だったから、その場所に張りついて湧き待ちをしてる人がいっぱいいたんだとか。


 もっとも、私がゲームを始めた時には初心者はそれほど多くなくて、オオネズミも狩り放題だったけど。


 私が知ってるオオネズミは茶色だったんだけど、道の真ん中にいるオオネズミは変異種だからか、黒い。


「ユーリ、キュアをかけてみる?」


 アルにーさまに聞かれたけど、もう従魔の枠はいっぱいだし、さすがにオオネズミは……か、可愛くないから、いらなーい。


 ブンブンと首を振ると、フランクさんも「いらねぇよ」とそっぽを向く。


「スライム以外に興味はないぞ!」


 あ、うん。カリンさんはいつも通り。

 デスヨネー。


「アマンダ、やれるかい?」


 アマンダさんが剣を構える。


 もしかしてオオネズミを倒したら、レアドロップで『金の指輪』を出してくれたりして!?

 わくわく。


「この程度、私の敵じゃないわね! 魔法剣を使うまでもないわ」


 ヒラリ、とアマンダさんの赤い髪が舞う。

 次の瞬間、オオネズミは真っ二つにされてしまっていた。


 うわぁ。さすがアマンダさん!


「……あら?」


 ふと足元を見たアマンダさんが、地面に屈んで何かを拾った。

 も、もしかして――!


「これは……指輪?」


 おおおおおお。

 レアドロップの金の指輪が出たー!


 凄い凄い凄い!

 ゲームと一緒の金の指輪だ!


 すごおおおおおおい!


「何か名前が書いてあるわ。えぇと……メアリからカールへ……?」

「えっ。誰かの持ち物ですか?」

「そうみたいね」


 えええっ。

 でも金の指輪はレアドロップのはずで、店売りで金策で……。


 あれぇ? どうなってるの!?

 レアドロップじゃなくて、誰かが落としたって事? なんだかクエストみたいな――



 ▽クエストが発生しました。

 ▽このクエストを受注しますか?

    ▽    ▽

    はい   いいえ



 ちょっと待って!

 目の前に半透明のウィンドウが出てきたんだけど、これは――

 ク……クエスト!?


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