自慢の武器
ざわざわざわ・・・
『こちらは、自慢の武器を見せ付ける、特別ステージでございます!』
『自慢の武器を持った猛者のみなさんこんにちは!』
こーんーにーちーはー!!!
『本日は740,559の武器が、会場入りしております!』
『さあさあどなた様も、磨き上げた自慢の武器をご自慢下さい!』
『さあさあどなた様も、研ぎ澄まされた自慢の武器をご自慢下さい!』
『さあさあどなた様も、あなたが作り上げた自慢の武器をご自慢下さい!』
『ご自慢の武器の威力を見せ付けるために、モンスターをご用意いたしました!』
がおーん!!
『こいつを倒したら、即あなたはスターです!!』
『さあさあ遠慮なく、戦って下さい!!』
ステージの上でモンスターが待ち構えています。
司会者は挑戦者を待っていますが、なかなか現れません。
何だみんな遠慮がちだな。
司会者はそう思って、ステージ下の参加者たちの声を聞きに行きました。
「見てくださいよ、この剣の輝き!」
「いやあこれは素晴らしい!」
「この輝きがわからない人は価値の分からない人ですな!!」
「見てみて、私の武器!すごい弓でしょう?」
「いやあこれはなかなかの逸品ですね。」
「この切っ先の精巧なつくりと言ったらもう!」
「おい見ろや!俺のこの斧!!すげえだろ!」
「いやあこの重厚感!」
「この威力はハンパないはずですよ!!」
わいのーわいの。
わいのーわいの。
なんじゃこりゃ。
自慢の武器を持ってきた参加者たちは、お互いの武器をほめあうばかりでステージに上がろうともしません。
あきれた司会者がステージに戻ろうとしたとき、一人の男がダサいナイフを持ってステージに上がりました。
『おや、あなたモンスターにチャレンジするんですか?』
「ええ、試してみたくて。…努力して、積み重ねてきたんです。」
男はダサいナイフを掲げて、ステージに上がりました。
すると、ステージ下から、さまざまな声が聞こえてきました。
「見てくれが悪いですね。」
「刻まれた銘がダサいですね。」
「ナニあのよわっちい見た目、無理でしょ、あんなの。」
男はそんな声を気にすることなく、モンスターに堂々と立ち向かいました。
さっきゅ―――ん!!
ダサいナイフは、魔物を一閃した!
魔物は倒された!!
男はすがすがしい顔をして、スターの席に座りました。
「ありえねえ…」
「あんなダサいのが魔物を仕留めるだと…?」
「ありえねえ…」
「あんなのまぐれだ!!」
「俺のほうがすごいはずだ!!」
『おっと?!乱入者がステージに上がってきたぞ?!』
「見ろ!俺のこんなにはっちゃけた剣だからって威力がないと思ったら大間違いなんだからね剣!!」
ぽきん!
なにやら仰々しい剣は、魔物の腹に突き刺さることなくぽっきり折れてしまいました。
参加者は折れた剣を持ってすごすごと家に帰っていきました。
司会者は、次の挑戦者はいないのかと思って、ステージ下に行って参加者たちの声を聞いています。
「ありえねえ…あんな剣で戦いに挑むなんて…」
「無謀にもほどがある…」
「僕のこの剣なら仕留める事できると思うんですけどね。」
「じゃあ行けよ!!」
「剣が汚れるじゃないですか!!でも僕こそがあのスターの席にふさわしいと思うんですよね…。」
「僕のこの槍なら仕留める事できると思うんだけど。」
「じゃあ行けよ!!」
「わざわざ戦う必要はないんですよ、僕がこの槍の良さを知ってるから。でも僕こそがあのスターの席にふさわしいと思うんですよね…。」
「僕のこの刀なら仕留める事できるはずなんだよ。」
「じゃあ行けよ!!」
「僕の刀のほうが出来がいいから使うのもったいないじゃないですか。でも僕こそがあのスターの席にふさわしいと思うんですよね…。」
「僕のこのこん棒なら仕留める事できるにちがいないよ。」
「じゃあ行けよ!!」
「これは使わないと決めているんです、とっておきだから。でも僕こそがあのスターの席にふさわしいと思うんですよね…。」
なんじゃこりゃ。
自慢の武器を持ってきた参加者たちは、自分の武器をほめるばかりでステージに上がろうともしません。
ごちゃごちゃ言ってる参加者を尻目に、モンスターにチャレンジし、スターになっていくものたちが何人かいました。
ごちゃごちゃ言ってる参加者を尻目に、モンスターにチャレンジし、家に帰っていくものたちが何人かいました。
ごちゃごちゃ言ってる参加者を尻目に、モンスターにチャレンジし、文句を言っているものたちが何人かいました。
やがて、スターの枠がすべて埋まりました。
『本日のスターの皆さんはこちらの方々です!』
スターになった人たちは皆誇らしげです。
スターになった人たちを見上げるステージ下の参加者たちの目は特徴的でした。
羨望のまなざしを向けるもの。
嫉妬の炎を燃やすもの。
恨みがましい目を向けるもの。
ただ普通に見ているもの。
拍手喝采を浴びるスターの皆さん。
拍手に紛れて声が聞こえてきました。
「たいした威力もないくせに。」
「おかしな見た目のくせに。」
「あんなの自慢げに見せ付けられても。」
「俺のほうがいいのに。」
「俺があの場所に立つべきなんだ。」
「俺に場所を譲れよ。」
「おれに…
「ぼくが…
『はい、それでは皆さん、またのチャレンジお待ちしておりマース!!!』
司会者は耳を塞ぎたくなったので、会場を閉めてしまいました。
次のチャレンジがいつ開かれるのかは分かりません。
次のチャレンジが開催されるまで、自慢の武器をきっちり仕上げてお待ち下さい。
武器は使ってなんぼ。使われてなんぼ。
使える武器をお持ち下さいね。




