タワー攻略宣言
「まぁ、いわゆる“タワー内でドロップするスキル”と若干認識は違いますが……確かに私は佐渡ヶ島タワーへ入る前から能力を持っていました。むしろその能力の習熟が今回の入塔の目的とも言えますが……」
俺の話に二人が顔を見合わせる。突然の事に疑問はあるだろうが、今はこっちの話を聞いてもらおう。
「……私の能力やら正体やらのお話は勿論させていただくとして、先にお伺いしたいのですが……ギルドは“タワー”についてどこまで掴んでるんです?」
またしても二人は互いに視線を交わして困惑を伝えあった。まあ、一探検者に過ぎない
俺が“世界で最もタワーを把握している”ギルドの支配人にする質問じゃねぇよな……
「……タワーについての情報は、現在公表されている物以外、その殆どが秘匿情報に属します。従って、ここで詳細を語る事は出来ません。が、データから類推出来るタワーの機能としては“何らかのデータの収集装置”ではないか? と、言うのが今の学会の主流意見です」
とギルドマスターに代わって金子さんが答えた。まぁ、学会の意見なんぞをサラッと返してくるあたりギルドはもっと何かを掴んでるのかも知れないが……金子さんも油断ならない。
「OK.変に駆け引きしても意味はありませんし学会の意見も了解しました。これからするお話は……多分、私の他に知る人間は居ないと思いますが……タワーというのは地球環境を改変する為の装置だそうです」
俺の話を聞いた金子さんと神山さんはポカンとしている。あまりにサラっと告げたのでイマイチ伝わらなかったか? 俺が視線で二人に返答を促すと、二人ともハタと我に返り、難しい表情で考えこんでしまった……
「まぁ、私も最初は全然信じられませんでしたし……証拠も無いので、とても信じられないのは承知してます。ただ、私が聞いた限りでは、このまま行くと地球環境は劇的に改変されてしまうんだそうです……」
「だそうですって……それはいったい誰が?」
ここからが大事だ。
「私が最初に攻略したタワーが残した言葉です」
「「………何ですって??」」
俺は意を決して情報の核心に触れた。秘匿すべき情報と公表すべき情報は、昨日の内にPDと話し合って決めてある。
「そのまま言葉通りです。私は発生したばかりのタワーに遭遇し、偶然攻略してしまったんです」
俺が、政府未発見のタワーを攻略したと宣言すると、二人はそれぞれに表情を曇らせた。まぁそうだよなぁ……普通はこんなヨタ話信じる方がどうかしてる。そういう意味では二人の反応は至極まっとうな部類だ。だが、たとえ向こうの反応がまともだとしても、こちらから前言を翻すとかは有り得ない。俺は沈黙して二人の反応を待つ事にした。そうこうしてる内に、今度は神山さんが口を開く。
「いくつか質問しても?」
「勿論です。お答え出来る事ならば……」
「……滝沢さんが攻略したと仰るタワーはどちらの物でしょうか? 我々は現時点で存在しているタワーに関しては、海外の物も含めて全て把握していると考えていました。が、未だに攻略されたという情報は得ていません」
「場所はN県の山中です。私が発見した当初、タワーは発生した直後で大きさは一戸建ての家屋程しかありませんでした。政府やギルドが未発見だったのも無理はありません」
「そんな大きさのタワーが存在するとは……それ自体初めての情報ですが、偶然攻略したと言うのは?」
「私がタワーを発見した時、大きさからしてタワーであるかどうか判断出来ませんでした。それで……今思えば無鉄砲でしたが、内部に踏み入りました。内部は外見から想像出来る大きさそのままで、これと言って特徴の無い空間だったんですが……フロア中央である種の装置らしい物を見つけたんです」
ここまでは神山さんも金子さんもじっと聞いてくれている。まあ、俺がタワーに入る時にやらかした右往左往は端折って話しているが、そんな事まで説明する必要もないよな……カッコ悪いし……
「見た目は台座に据付られた何らかの鉱石に見えました。私が意を決してそれに触れると途端に鉱石は光を放って消滅してしまいました。そして現時点で地球に存在している“タワー”は全て地球の生物を適度に間引きつつある種のエネルギーを収集・貯蔵し、最終的にはタワーに設定されている環境への惑星環境改造を行う装置だという情報が私の中に流れこんで来たんです」
そこまで話すと俺は、一端言葉を切って二人の反応を伺った。二人は初めての情報に困惑しているが、金子さんが我慢出来なくなったのか更に質問してきた。
「正直……信じ難いお話です。あらゆる疑問が尽きない所ですが……一つだけ先に伺いたい。タワーを設置したのは何者なんですか?」
「……分かりません。順当に考えれば宇宙人……という事になるのでしょうか? ただ残念ながら、私がタワーから得た情報にはその存在についての物はありませんでした」
「……話を中断して申し訳ありません。続きをお願いします」
「その後、私はタワーが元々持っていた未知のエネルギーからある能力を得ました。これはダンジョンコア……お話した鉱石をそう呼ぶらしいです……を直接破壊した者だけに贈られるギフトだそうです」
俺が持っている“エネルギーの直接運用権限”については話を濁す。これはPDとの話し合いで伝えない事に決めている。
「最後に、私が外に出ると、タワーは一瞬光を放った後に、跡形もなく消滅してしまいました。タワーがあった筈の場所には痕跡どころか残骸すらありませんでした。正直、私も夢でも見ていたのではないかと疑いましたが……私の内に宿った能力がそれを否定しました」
実はタワーは潜伏モードにして隠してあるんだが、疑問を持たれない様にちょっと悲壮な感じで喋ってみる。二人はさも沈痛な表情を浮かべているが……海千山千のギルド職員は油断出来ない。
「それで……私が知り得た情報を検証する意味も含めて佐渡ヶ島タワーにやって来ました。私自身、とても信じ難い情報だというのは理解してますし、証明の方法もありません。ただ、全ての塔を破壊しなければ、ある日突然……地球環境は人間の住める物では無くなるかも知れない……」
そっと二人の反応を見る。二人とも真剣に聞いてくれてはいるが……イマイチ反応に乏しくて、内心どう思ってるのか迄は分からんなぁ……
「まあ、当然こんなヨタをただ信じてくれとは言いません。それに……今のタワーが生み出す資源や革新は、ギルドや各国政府にとって、とても無視出来ない物だというのは分かっています。特にタワー関連の利権を持っている関係者には、私が何を言おうと破滅が来るその時まで信じない者達もいるでしょう」
淡々と見通しを語る俺に、ギルド職員の二人は、一瞬苦虫を噛み潰した様な顔を見せた。多分……利権関係者の事が頭をよぎったんだろうなぁ。
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