年頃の娘には敵わねぇ
その集団から一人離れて俺達に話掛けて来たのは、昼に俺の受付をしてくれたギャルだった。
「あっ、京子ちゃん。今日は受付じゃ無かったの?」
「今日は週末だかんな。あたしら新人まで入塔管理に駆り出されてんの。で……お兄さん、確か今日初めてとか言って無かったっけ? なんでカンちゃんと親しげなんかなー?」
「彼女とはたまたまタワーの中で知り合ったんだよ。その事でちっとギルドに報告してぇ事が出来たんでな」
「そうだよ京子ちゃん! 私と滝沢さんはたまたま知り合っただけだから……それはそうと……京子ちゃんはなんで滝沢さんの事知ってるの?」
「ナンパされたー」
「えっ……? 滝沢さん?」
おいおい、そんな目で見るな。まったく、花盛りのお嬢ども相手だと軽口も言えねぇ。
「……たまたま、ゲートの受付をした時に顔を合わせただけだよ。あー京子さんだったか? あんまりからかわんでくれよ」
「えー? あーしの事カワイイとか言ったくせにー?」
まったく……年頃の娘には敵わねぇ。
「なんだ……本気で口説いて欲しいのか? 暫く相手はいねぇけど別に避けてる訳じゃねぇぜ?」
「へッ? えっと……その……なんだ、何か話があるって? えっと……」
くくっ、派手な格好してる癖に……照れた姿はカワイイもんだ。まったく、大人をからかうから……
「ああ、実は今日この本間さんが……本間さん?」
本間さんを振り返ると、なんと本間さんも耳まで真っ赤になってやがる……
「ああ……京子さん。すまねぇけど出来ればどっか落ち着いた所で話せねぇかな?」
――――――――――
彼女の名前は中川京子さん。本間さんとは同級生で実家も近いらしい。俺達が簡単に事情を説明すると、ギルドの奥にあった部屋の一つに通された。
「じゃぁ、ちょっとここで待ってて。あーしの上司呼んでくっから。そのパーティとかボコボコにしてやんし!!」
彼女、喋り方は軽いが事情を聞いて憤慨していた。どうも友情に厚いタチらしい。
「良い娘だな、今時友達の事であんなに熱くなるなんて珍しいぜ」
「昔から姉御肌でしたから。滝沢さんは京子ちゃんみたいなタイプが好みですか?」
「まだその話を引きずんのか? 悪いが今時のコンプライアンスは役場勤めに厳しいんだ。彼女が好みかはさて置き、二十歳以下は対象にならねぇよ」
「ふーん……そっか……」
本間さんは、何故か落ち着かなそうにソファでモゾモゾしている。そうこうするうちに、部屋の外から二人分の足音が近づいて来るのが分かった。足音は部屋の前に止まると、控えめながらしっかりとしたノックが部屋に響く。
「お待たせしました。私は中川の上司で金子と申します」
入室一番に実直な挨拶をしてきたのは、年齢が俺より少し上くらいの髪をきっちり横分けにし、シャツとネクタイの上から係員の作業ジャンパーを着込んだ男性だった。
「中川からおおよその事情は伺いました。少し詳しいお話を聞かせ下さい」
実直そうな外観に落ち着いた声音……OK、これ俺もお仕事モードで行った方が良さそうだ。
――――――――――
「それで……取るものも取り敢えずタワーを出てギルドに駆け込んだという訳です」
まず彼女がタワーに入った経緯と行動の時系列を説明し、俺と会ってからの事はその後を引き取る形で俺の方から詳しく説明した。
「そうですか……若干信じ難い話も含まれていますが、確かに心象的には彼女が囮目的でパーティに誘われたと言われても不思議ではありませんね……」
うん、こういう物言いをする人間は役場にも多い。
「まぁ、薄々分かってはいましたが……やはり決定的な証拠は無いと?」
「こう言うのは心苦しいですが……彼女がスキル持ち、かつ索敵が得意だという事は、ギルドで任意公開されている情報に載っています。つまり“スキル目当てで誘ったと”言われればそれまでなんですよ。その後、獲物を前にはぐれた事も、滞在期間の認識に齟齬があった事も全部状況証拠にしかなり得ません」
「だが、臨時とはいえパーティメンバーが一人行方不明です。もし、彼等が壊滅しているのならまだしも、中にはかなりの高位エクスプローラーもいたとか。タワーの中での自己責任論を振りかざす前に、彼女が行方不明になった事を通報したり情報共有したりするのが、大人の責任と言う物じゃないでしょうか?」
ギルドの言い分はおおよそ考えていた通りだった。だが、こちらはこちらで言っておかなければならない事は言っておく。必要な発言をしなければ、それは無言で相手の主張を認めたのと同じなのだ。
「ギルド側の判断は分かりました。ただし、本間さんと私が“今日届けた情報”に関しては真偽に関わらず記録していただけるのでしょうね?」
要はこっちの言い分が認められるかは関係なく“こっちは主張したからな”という記録が欲しいのだ。
「それは保証します。それに、当然この情報は私の権限の範囲で周知して、かのパーティのタワーアタック時に不審な事故等が無いかの調査も行います」
「OK、本間さん。残念だけどここらが落とし所だと思う」
「分かりました。確かに私にしても迂闊な部分があったと思いますし」
とりあえず、最低限の言質は取ったしここらが引き際だろう。相手も意地悪で言ってるのではなく、現実的に出来る対処はしてくれる様だしな。
「じゃあ頼みます。俺は本間さんを家に送って行きますから」
到底スッキリした終わりとは言えないがこればかりはどうしようもない。
「これは……まったく余計なお世話かも知れませんが、アーマーバッファローの角は買取には持ち込まれないのですか?」
「おっと……そうだった。ギルドの買い取り査定は是非お願いしたいですね」
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金子さんの後ろでは、終始中川さんが顔を赤くして怒っていたが、今のところはどうしようも無いだろう。俺達は対応してくれた金子さんと中川さんに礼を言って査定カウンターへ向かった。
「やっぱりこっちの話だけで捕まえてくれる……なんて、虫のいい話にはなりませんでしたね」
「ああ、だが結果は想定の範囲内って奴だ。一応これからの為に布石は打っておくが……正直、賭けとしては分が悪い」
だが、今後の事を考えればどんな小さな布石も打っておくに越した事は無いだろう。
「さぁ、せいぜいコイツを高値で売りつけてやろう」
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