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マグナムブレイカー  作者: サカキマンZET
第2章 魔導使い襲来。
76/170

第76話 それは絶望と理不尽。

更新です。(裏)編も進めたいし、もう一度練り直しておきます。

「その前に…。」


 閻魔は刀を構えないまま、一歩前へ足を出した。その瞬間、全員の背後にいた筈なのに目前へ立っていた。


「背後に…立っていた…はずなのに…。」


 吹雪は驚愕し、閻魔は幻覚なのか確かめようと手を伸ばした。そして違和感を感じた。

 血液が付着していた手は綺麗サッパリと消滅し、傷もすっかり無くなっていた。それは修二を除いた全員が、同じく治癒されていた。


「お前、人間の癖に無茶な事をしたな。白龍で治してやる事もできるが…そんな無茶な事する奴には俺の腕をくれてやる。」


 閻魔は右腕をピンと伸ばし、左手刀で腕を切り離したのだ。忍以外の全員は驚愕に包まれた。が、そんな事は気にせず右腕を持ち修二へ近づいた。


「おい、忍手伝え。」


「しょうがねぇな。」


 忍は気ダルげで閻魔に了承し、修二の身体を持ち上げる。


「俺の右腕持ってろ。」


「はいよ。」


 忍は閻魔の右腕を持ち、修二へ雑にくっ付けたのだ。

 そして閻魔は白龍を修二の胸へ深く突き刺した。すると右腕から肩へ自ら向かい、物の数秒には綺麗に結合していたのだ。


「お、おい。大丈夫なのか? 俺、嫌だぜ。親友を殺す事になるイベントなんか…。」


 流石に気持ち悪い光景で疑った吹雪が、閻魔へ尋ねた。

 吹雪が想像したのは、よくゲームで鬱展開する場面を思い出しから心配になり聞いたのだ。


「安心しろ。脆い人間の腕より、頑丈で強い悪魔の右腕だ。ちゃんとすればヤバイ事にはならない。親友なら見守ってやれ。」


 そう閻魔は吹雪に言い残し、立ち上がった。


「…さてと、治療も終わった事だ。こっちはこっちで話しようじゃねぇか、ウロボロス。」


 ウロボロスへ振り向き、その合間にも右腕は完全再生を遂げていた。


「…閻魔光様。」


「お前に様づけされて呼ばれる事なんかあったか? まあ、先代魔王っていうだけだ。今の俺は『魔界連合鮫島組四代目会長』だ。もう、お前の知ってる奴は過去だ。」


「違う、貴方はそんな(・・・)役職に就く人ではない! 貴方は神か魔王に君臨する特別な…!?」


 ウロボロスの言葉は途中で強制的に遮られた。それは閻魔が漆黒の刀を頬ギリギリまで投げたからだ。

 そしてウロボロスは閻魔の顔を見て、驚愕に包まれ怯んでいた。


そんな(・・・)だと? テメェ、なんて言った? そんな(・・・)って言ったのか? 俺の生きた道にケチつけようとしてるのか? 言ってみろよ、何がそんな(・・・)だ?」


 閻魔は無表情ながらも声には怒気が籠っていた。それには空気が一変し、氷点下まで冷えきっていた。

 理不尽にも相手のペースには乗せず、イチャもんをつけて話を進めさせなかった。輩がやる常套手段だった。


「そ、それは…だけど! 人間の醜い立場にいるべきじゃないと…。」


「そんなの関係ねぇよ。俺が“ヤクザやりたいと思ったからヤクザになった”んだよ。それは誰にも止める権利なんてねぇよ。ましてや、テメェとゼウスなんかに言われる事じゃねぇだろ?」


「ゼ、ゼウス様にそんな事言ったのですか!?」


 あまりにもビッグネームに今まで、影を潜めていたアルカディアが驚愕し慌ていた。


「あぁ、言ってやった。『うるせぇ、このクソ神』ってな。」


「あぁ…私は聞いていません。そんな汚い暴言は私は聞いておりません。」


 アルカディアは閻魔がゼウスに向けて放たれた言葉を必死に忘れようとして、耳を塞いで誤魔化していた。


「なんか有名な神の名前が出てきたな。」


「“全知全能の神”、ギリシャ神話における神様だね。そんな人に喧嘩を売るなんて、閻魔さんも怖い物知らずなのか…。」


 吹雪の呟きにより、隣でより詳しく輝が解説していた。


「所詮、俺にとっては神々は名ばかりだ。俺の邪魔さえしなければ、手も出ない。それよりアイツ等がやる事なんて放っておいてやるよ。」


(凄い、自由奔放すぎる人だ。)


 気絶している修二と忍以外の人物は、イメージしていた人物像と違い、驚愕していた。


「…それでは魔界に戻って、魔王として君臨してくれないと?」


「あぁ、魔界に遊びに行ってはやるが、魔王として君臨したりはしない。」


 閻魔はウロボロスへハッキリと冷たく断言した。


「…それならば私も実力を示し、貴方を力で屈服させましょう。貴方が得意な暴力での支配を。」


「その方が分かりやすく簡単だ。さあ、立て。俺を納得させてみろよ。」


 ウロボロスが闘志を見せたことにより、無表情だが閻魔は歓喜を表し、挑発する。

 ウロボロスはゆっくりと立ち上がり、そして互いは一定まで距離を離し、立ち尽くしていた。


「お、おい。なんかヤバイ事になんじゃねぇのか?」


「安心しろ、ここで手も出さず、黙って見ていたら俺等は無事(・・)に帰れる。」


 心配となった吹雪が忍へ尋ねた。

 だが、忍は何も気にする必要はないと語り、地べたへ座り込んだ。


「…おい、あの閻魔光という奴は誰なんだ?」


 そこで遠くから黙って見ていた南雲が、忍へ尋ねたのだ。


「後ろにいる鬼塚の兄貴分、極道の会長、先代魔王、次の神様候補ぐらいで納得したか?」


 忍は南雲の質問を気ダルゲに返答していた。

 そして次いでにという雑な感じで、鬼塚も紹介されていた。


「そんなのは見れば分かる。おかしいと思わないのか? ヤクザで筋を通している奴が何故、人間を助けて、元部下であるウロボロスと戦おうとしているのか。」


「…俺等を助けたのは俺との約束、二つ目は自分の商売を邪魔されるのを阻止する為だ。」


 南雲に真っ当な返答しない限り引き下がらないと分かり、忍はマトモに返答した。


「商売の邪魔? ウロボロスと商売が何と関係がある?」


「アイツの摩訶不思議とも思える金の出所は、全国の極道、マフィア、ギャングから一割の上納金を支払わせているからだ。」


「全国だと! それを一割で!」


「あの親父が珍しく頭を抱えていた。閻魔光が起こした事件の後始末が大変だったって嘆いていた。」


「…この話は、これ以上聞かない方がいいな。そこに踏み込む器量はない。」


 忍のバツの悪い表情で南雲は察し、これ以上踏み込まないようにした。


「あぁ、そうしてくれ…始まるぞ。」


 忍の声で全員は、閻魔とウロボロスへ注目していた。

 互いに一歩も動かず、ジッと見て様子を伺っていた。それが数分も続いていた。


「…あのさ、まさか睨めっこ対決じゃないよな? もしかして俺達に見えないオーラとかで戦ってるとか?」


 一向に動かない二人に痺れを切らした様子の吹雪は、何か知ってそうな忍へ尋ねた。


「…お前等、鬼塚と何日間過ごした?」


「二ヶ月ぐらいだ。」


「…二ヶ月は話にならないが、よく閻魔とウロボロスを見ていろ。」


 そう言われ吹雪は二人へ目を向けた。


「あれ? 俺の目、おかしくなったのか?」


「どうした?」


 南雲は目を擦り、何度も確認する吹雪が心配となって、尋ねた。


「二人が霞んで見えるんだよ。そこ(・・)にいるんだけどそこ(・・)にいない意味不明な現象みたいな…。」


 吹雪は南雲へ何を伝えたいのか分からなかった。が、何を言いたいのかは薄々感じていた。

 二人の姿がボヤけ、立っている筈なのに立ってないという、錯覚が吹雪と南雲を襲っていたのだ。


(この二人には根本的な物が見えていない状態だ。俺にも目だけでは追えなくなっている。後ろに輝も見えていない…やはり、俺と閻魔の差は縮まる所か離されている。)


 忍の視界では霞んで見える訳ではないが、殆ど残像でしか見えていなかった。


「ーーそろそろ終わります。皆さん、帰宅する準備をしてください。」


 戦いの終幕を感じた鬼塚は、全員に帰投する準備をさせていた。

 全員がキョトンと呆然している間、耳をつんざくような轟音が響いた。忍以外の全員がそっちへ振り向くと、壁に巨大な血痕が残っていた。

 そこの下でピンピンと平然としている閻魔が残っていた。


「終わったのか?」


 機嫌を悪くしながら忍は、閻魔へ状況を尋ねた。


「あぁ、多分一万年ぐらいウロボロスは復活する事はない。これで人間界は安泰で、俺も一万年間は魔王復活しろなんて言われなくなるな…よし、帰るか。」


 閻魔は暫くは大丈夫と述べて、出口に向かって歩いた。

 忍は閻魔の背中を見て、シミの一部となったウロボロスへ振り向いた。


(まだ神々に復讐するには、まだまだ力不足だな。もう一度、鍛え直す必要があるな。)


 忍は閻魔との差を染々と感じ、再び鍛え直すと誓ったのだ。

いかがでしたか?

もし良ければ、誤字や脱字や意見や質問等があれば教えてください。

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