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マグナムブレイカー  作者: サカキマンZET
第4章 覇気使い四天王。
130/170

第130話 摩訶不思議な偶然。

品川が落ちた所からスタートです。ここからは新章へと突入します。

 品川は寒い空の中、まっ逆さまに身体が落ちていた。

 高いビルから落とされ何秒経ったのか分からず、ずっと落ちている感覚だった。


(なんとかしねぇと、マジで死んでしまう)


 品川は横目で下を見た。このままアスファルトと衝突すれば、肉塊になってしまうので、近くにある車を発見する。

 品川の考えはアスファルトより、衝撃を吸収してくれる車と衝突して、助かろうという計画だった。

 太陽の覇気で四肢を燃やし、ソレでジェット気流を操りながら、なんとか軌道を車へ向けようとした。

 そしてギリギリの寸前で車へ激突し、天井は大きく窪み、廃車となった。


(な、なんとか……助かった……)


 品川は治療する為、別の場所へ移動しようとする。が、車と衝突したダメージは軽い物ではなかった。

 身体は重くなり、身体は所々が痛みを感じていた。


(ヤベェ、もし竹島と内藤が降りて来たら勝ち目ねぇよ。早くここから離れねぇと……)


 這いずりながらも品川は車から降りようとしていた。


「キャー! 人が落ちてきたわ!」


「おい早く、誰か救急車を!」


 品川が落下し、周囲は騒ぎ始めた。

 なおのこと急ぎ、ここから離れないとならなくなり、品川の心は焦る。


(動かねぇ……警察に事情聴取されると、また雅がうるせぇからな……)


「はい、退いてください! 警察です。皆さん、車から少し離れてください!」


 そこへ警察手帳を片手に大きく見せ、女警察官らしき人物が事件現場へ接近する。


(あ、またか。しょうがねぇ、逃亡罪と工務執行妨害が追加されるが、隙を見て逃げるか)


 また犯罪に手を染めてでも警察の世話にはなりたくない品川。

 それこそ自分の首を締める行為なのだが、ここは何も考えず、逃亡を図ろうとする。


「……酷い。大丈夫ですか? 意識はありますか……えっ、品川くん?」


 女性警察官が接近し現場検証を始めようとした瞬間、何故か品川の名前を知っていた。


「えっ!?」


 何処かで聞いた事のある声だったので、品川は首だけ動かし確認する。

 それは暫くの間だけ、一緒に捜査していた桜草一華だったからだ。


「えっと……何してるの?」


「ご覧の通りに戦ってビルから落ちた。それだけだ」


 涼しい顔で品川は返答する。


「そんな簡単に言われても!」


 流石の淡々とした返答に困り、一華の感情が高ぶり突っ込む。


「丁度良かった。刑事さん、俺とアンタの仲だ。ここは事故として処理してくれねぇか?」


「それは無理。だって目撃者がこんなにいるし、それに車も……無茶苦茶に……破損……してる……」


 一華は品川の下敷きになっている車へ注目する。

 何故か言葉は所々詰まり、表情は固まり、膝から崩れ落ち、自然と涙を流していた。


「えっ? どうした刑事さん。どっかやられたのか!?」


 一華が泣いた事に、品川は自分が負傷していることは構いなく、心配して尋ねる。


「……私のローン……車検もまだなのに……」


 ローンや車検のことを呟いていたので、品川は下敷きの車に注目する。

 見たことのある車だった。


「あっ……あ、あのさコレは……事故だ。俺も咄嗟の判断でよ。このまま落ちてたら、俺の内臓がアスファルトにぶちまかれて……すみません」


 なんとか言い訳を考えて言ってみるが、人の大事な物を事故とは言え、破壊してしまった事の罪悪感が勝り、折れて謝罪する。


「ま、まあいいわ。貴方に弁償代を請求すれば解決する話だし……」


「そ、そうだ。その意気だ! ここは互いにポジティブシンキングで行こう! ……()ってぇぇぇぇぇッ!」


 身体を起こそうとした瞬間、今まで味わった事のない激痛が、全身に駆け巡り、大きな声で反応してしまった。


「大丈夫? そうだった、品川くんは怪我してるんだよね。早く救急車を……」


 一華がスマホを取り出し、救急車を呼ぼうとした。

 だが、急に身体が軽く浮き上がっていた。


「えっ!?」


 一華は咄嗟な事で理解と反応ができなかった。何故、自分は品川に片手で持ち上げられているのか。

 品川は廃車したドアを力ずくで破壊し、無事である運転席に一華を乗せた。


「出せ!」


「えっ? でも、車は壊れてるし……貴方を病院に……」


 言い終わる前に銃撃音が響いた。

 銃撃音が聞こえた同時にボロボロのフロントガラスは粉々となった。


「追っ手だ! 早く出せ!」


「追っ手? なんで、そんな事になるの!?」


 銃撃に焦りながらも一華はキーを差し込み、回す。取り敢えず、エンジンは無事で今すぐにでも発進できる状況。

 一方、品川は飛び交う銃弾を太陽の覇気で、炎のバリアを貼り防ぐ。


「何処でもいい、逃げろ!」


「あぁもう!」


 一華は思い切りアクセルを踏み発進させ、前から来る車も見事華麗に避けながら、適当な場所へ逃走する。

 いきなりの発進で車から落ちそうになった品川だったが、全身を脱力させ、推進力に逆わらず、位置エネルギーで保っていた。




「あ~あ、逃げられたか」


 ビルから内藤は出て来て、ボロボロの車を眺めていた。


「……」


 一緒に出てきた竹島も黙って腕組みし、逃走した車を眺めていた。


「さて、社長に任務は失敗って報告しとかんと……権田くんはどうする?」


「そうだな……腹が減ったから、何処かに寄って行かないか?」


「せやな。それやったら、近くに吉野家があるから行かへん?」


「すまないが、ここは報告を先にしてもらわないと困るな?」


 そこへ二人へ接近する男がいた。

 竹島は振り向いて無表情の反応だった。が、内藤だけは振り向かず、嫌悪感を示していた。


「……なんや、副社長やないか。何時までも帰ってけぇへんから、俺等を心配しにきてくれたんか?」


 ここは大人の対応として、ニコニコと本人も気色悪いと思う笑顔で返答する。


「あぁ、そうだよ。君達は特別(・・)なんだ。もし何かあったら社長にも顔向けできないし、何より……人間(・・)ごときに負けたって考えると、ムカつくじゃないか?」


「そう言えば副社長は人間嫌いでしたね。せやけど大丈夫です、相手は知り合いの覇気使いなんで、人間じゃないですよ」


「勧誘はできたのかい?」


「……いや、その前に水城の奴が失敗してるし、あの性格やと仲間になる気はないと思うで?」


「……全く。仲間にするのが君達の仕事でもあるのに……まあいいでしょう。この騒ぎは警視長が何とかしてくれます。我々は会社に戻り……」


「おいおい、人の島でドンパチやらかしてるって聞いて来てみれば、いけ好かない『アトラス財団』の副社長がいるじゃねぇか?」


 そこへ手下を連れながら事件現場へやってきた伊波だった。


「伊波……君には出勤命令を出していませんが?」


「俺の仕事したい時が出勤時間だ。それに『アトラス財団』には協力するとは言ったが、それは社長と契約したんだ。テメェみたいな人を馬鹿にする奴とは仕事しねぇんだよ」


 好戦的に伊波は副社長へジリジリと接近する。が、副社長は右手を翳した。

 それを察し伊波は立ち止まって様子を見る。


「……止めておきましょう。覇気使い同士で殺し合うのが間違っています。ここは穏便にすませましょう……内藤さん、竹島さん、また後日出勤して報告してください」


 そう副社長は二人へ言い残し、人ごみの中に消えた。


「……マジ、助かったわ。『アトラス財団』に入社してからアイツのこと嫌いやねん。ありがとうな、イナちゃん」


「お前の為にやってねぇよ。俺もアイツと出会ってから、ずっと気に食わない奴だと思ってる。けど、社長との契約だ。ヤクザが約束違えたら、会長に怒られる」


「すまない、伊波さん。神崎忍を取り逃がした」


「また捕まえたらいい話だ。それより飯食いに行くんだろ? 泡銭で良かったら使え」


 伊波は懐から十万取り出し、二人へ手渡す。


「それは悪くね?」


「顔立てろ。そして警察には伊波一翔とは一切関係ありませんってシラ切っとけ……じゃあ、お疲れさん。また明日」


 伊波は煙草をマッチで着火し、二人の前から手下を連れて立ち去った。


「……やっぱ、イナちゃんと社長だけは仕事しやすいし、話しやすいな」


「そうだな」


 二人は伊波から貰った金を持って、夜の町へと消えたのだ。

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